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本編
31.竜人の国ラフィリア
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視点:咲夜
パチン、とスズランが指を鳴らしたと同時、視界が光に包まれ思わず目を閉じる。強い光が去ったのを感じて目を開ければ、目の前に巨大な門がそびえ立っていた。
フィルがスズランに頼んだのは城門前だったはずだけど、何故か城下町の門前にいる私達。どうしてフィルが城門前にしたのか一瞬不思議に思ったが、その疑問はすぐに解ける。
「わぁ……っ!」
「ファンタジーだっ!!すごいすごいっ!!」
「剣と魔法の異世界、か……カッコよすぎるだろ!」
「わ、あれ何?フィル、ちょっとあれ買って!」
「お金可愛い!日本円と違ってちゃんと価値あるやつだ!」
「冒険者ギルド!ゆあ、咲夜、あとで絶対行くぞ!」
「「うんっ!」」
テンションがうなぎ登りで天井を知らない状態の私たち。目につくもの全てが珍しく、新鮮で良い。さすがにこのテンションに着いてこれていないフィルも、どこか誇らしげに笑っている。
「とりあえず店に寄る前にこっち来い?」
「えー」
城への道をはずれ、さらなる探検に出ようとしたゆあの首根っこを捕まえずるずる引き戻すフィル。不満そうなゆあだが、一に話しかけられて先程よりも楽しそうに笑う。
その手がちゃっかり繋がれているのは、ゆあの作戦かな?
「とりあえず幹部の者にサクヤ達の名前と顔、覚えてもらわねぇとな。あぁ、ついでに昼食も用意させる。自由行動はそれからだ」
「ほうほう!昼食ってどんなの!?」
「ん?あー、洋食に近い味付けだな。パーティとかだとフランス?料理みたいな見た目だな」
「洋食……フィル、和食は?」
「卵はある、豆腐は……ない。醤油とかもないな。海産物は今後取り入れる予定だ。あと米なら東の小国にあるらしいぞ」
ひとまず安心ってとこかな。さすがに何年も米なしっていうのは日本人としてちょっと寂しいから。
味付けに関しては、あっちにいた時フィルがファストフード食べておいしいって言ってたし多分大丈夫だと思う。
「というかリュカ、俺達はごく普通の一般人だからマナーとかよく分からんぞ?最低限はもちろんあると思うが」
「その辺は全く問題ねぇよ。まず、王の俺がこんな性格でこんな言葉使いってところで分かるだろ?」
「うんうん、リュカってイケメンなのに言葉使い悪いもんね」
「そこまではっきり言われると傷つくんだが」
そういいつつ表面だけの悲しげな表情になり、しかしそれはすぐに笑みに変わる。白亜の大理石で作られた階段をのぼり、閉じられた城門の前で不意に振り返ったフィル。
片手を胸にあて、微笑を称えて私達に敬礼。その背後で見上げるほどの大きさの門が、重さを全く感じさせない滑らかな動きでゆっくりと開く。
「ようこそ、我が城へ」
その姿は私達がいつも見ていた竜人族のフィルではなく、美しさの中に威厳を持った竜王。フィリアスという人物は国を一つ背負う王なのだと、私達が初めて実感した瞬間だった。
パチン、とスズランが指を鳴らしたと同時、視界が光に包まれ思わず目を閉じる。強い光が去ったのを感じて目を開ければ、目の前に巨大な門がそびえ立っていた。
フィルがスズランに頼んだのは城門前だったはずだけど、何故か城下町の門前にいる私達。どうしてフィルが城門前にしたのか一瞬不思議に思ったが、その疑問はすぐに解ける。
「わぁ……っ!」
「ファンタジーだっ!!すごいすごいっ!!」
「剣と魔法の異世界、か……カッコよすぎるだろ!」
「わ、あれ何?フィル、ちょっとあれ買って!」
「お金可愛い!日本円と違ってちゃんと価値あるやつだ!」
「冒険者ギルド!ゆあ、咲夜、あとで絶対行くぞ!」
「「うんっ!」」
テンションがうなぎ登りで天井を知らない状態の私たち。目につくもの全てが珍しく、新鮮で良い。さすがにこのテンションに着いてこれていないフィルも、どこか誇らしげに笑っている。
「とりあえず店に寄る前にこっち来い?」
「えー」
城への道をはずれ、さらなる探検に出ようとしたゆあの首根っこを捕まえずるずる引き戻すフィル。不満そうなゆあだが、一に話しかけられて先程よりも楽しそうに笑う。
その手がちゃっかり繋がれているのは、ゆあの作戦かな?
「とりあえず幹部の者にサクヤ達の名前と顔、覚えてもらわねぇとな。あぁ、ついでに昼食も用意させる。自由行動はそれからだ」
「ほうほう!昼食ってどんなの!?」
「ん?あー、洋食に近い味付けだな。パーティとかだとフランス?料理みたいな見た目だな」
「洋食……フィル、和食は?」
「卵はある、豆腐は……ない。醤油とかもないな。海産物は今後取り入れる予定だ。あと米なら東の小国にあるらしいぞ」
ひとまず安心ってとこかな。さすがに何年も米なしっていうのは日本人としてちょっと寂しいから。
味付けに関しては、あっちにいた時フィルがファストフード食べておいしいって言ってたし多分大丈夫だと思う。
「というかリュカ、俺達はごく普通の一般人だからマナーとかよく分からんぞ?最低限はもちろんあると思うが」
「その辺は全く問題ねぇよ。まず、王の俺がこんな性格でこんな言葉使いってところで分かるだろ?」
「うんうん、リュカってイケメンなのに言葉使い悪いもんね」
「そこまではっきり言われると傷つくんだが」
そういいつつ表面だけの悲しげな表情になり、しかしそれはすぐに笑みに変わる。白亜の大理石で作られた階段をのぼり、閉じられた城門の前で不意に振り返ったフィル。
片手を胸にあて、微笑を称えて私達に敬礼。その背後で見上げるほどの大きさの門が、重さを全く感じさせない滑らかな動きでゆっくりと開く。
「ようこそ、我が城へ」
その姿は私達がいつも見ていた竜人族のフィルではなく、美しさの中に威厳を持った竜王。フィリアスという人物は国を一つ背負う王なのだと、私達が初めて実感した瞬間だった。
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