転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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名もなき洞窟

名もなき洞窟攻略前に

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・名もなき洞窟攻略前に
「タンポポさえ良ければ、タンポポの仕事を手伝いたいと思う……俺もここから出たいとは思っていたし、帰る時は案内をしてくれると助かる」
「えっ……い、いいんですか? それはとってもありがたいんですが、対価として支払えるものが……」
 別に必要ないのだが、それを伝えてもタンポポは死霊術士の基本をおろそかにするわけにはいかないと頑なに突っぱねる。なんでもしっかりと線引きをしておかないと『辛い』らしい。霊はいつまでもそのままの状態で現世に留まれないらしい。悪霊になるか、浄化されるのか天国にいくのかはわからないが霊とは短い付き合いになるのが常だそうだ。踏み込み過ぎると別れがつらくなるとのことだ。タンポポ的には出口までの案内と出口までの護衛でイーブン。仕事の手伝いはタンポポ的にも願ってもないことのようだが、支払える対価が思いつかないらしい。
「あ、それならこの世界のことについて教えてほしい。信じられないかもしれないけど、俺異世界から来たからこっちの世界の事さっぱり知らないんだよ」
「はい??????」
 タンポポがぴたりと止まる。元々歩いていたわけでもないから止まっていたと言えば止まっていたのだが、完全に静止してしまう。あれだけ元気に動いていた尻尾ですら止まってしまっているのだからタンポポにとって衝撃的な一言だったようである。今のタンポポの状況を一言で表すなら宇宙タヌキ状態だ。可愛くて面白いので俺としてはいつまでも眺めていられる。
「異世界というのは……えぇっと国が違うとかそういう意味ではなくですか?」
「ゼンという神にひっぱられてこっちの世界に来た。俺の世界に魔法はないし、さっきいた白い小人も生息してないし、もっと言えばタンポポみたいな子もいないな」
「ぜ、ぜ、ゼン様!? お、お会いになった!?」
 タンポポがようやく質問をしてきたかと思ったら、俺の答えを聞いて口をあんぐりと開けて再び固まってしまった。牙がばっちり見える。意外と鋭く見えるがしゃべりにくくないのだろうか……いや、そもそもこの交流が魔法? によるものだからその辺りの常識は通用しないのかもしれない。
 しかし、様をつけられていることからゼンはこの世界でしっかり神をしているようだ……そんな神がこの世界に俺が必要だと思ったのだから何かしら、神にとっては良くない状況が起こっている可能性があるということになる。
「あ、あの、ということはえっと、ヤクモさんは神の使い……ってことですか?」
「…………………」
 やってしまったかもしれない。ゼンがこの世界の絶対神だか唯一神であれば、唯一神から処分されたなんて言われたら俺の立場は最悪なものになる。かといってここでヘタに嘘をついてボロが出ても同じ…………えぇい、なるようになれ!
「それは断じてない! 俺はあいつのせいで死んだし、この世界に勝手に転移させられたんだ」
「……そ、そうでしたか。し、心臓が止まるかと思いました。ボクたち獣人たちは一応ゼン神教信者ですが……形だけで本当は信仰なんてしたくないと思っている人がほとんどなんです。それがバレてヤクモさんのような規格外な天使をゼンが召喚したのかと」
 タンポポと俺はお互いに胸をなでおろす。お互いに生きた心地がしない瞬間だっただろう。それにしてもこんな突拍子もない話を信じてくれるとは……タンポポ色々大丈夫なのだろうか? タンポポの年齢は解らないが働きに出ているということはそれなりの年齢なのだろうが……かつての俺のようにずる賢く小賢しい大人に騙されないだろうか心配になる。
「受けた仕事って探し物だったよね。それ、俺手伝える?」
「はいっ。もちろんです。むしろボクは霊に手伝ってもらわないと何もできないぐらいなんです」
 タンポポはそういいながら、尻尾の体毛を束になるように毟ると何事か聞き取れない言葉を発し始める。タンポポがつまんでいる髪がほんのりと光ってだんだんと収まっていく。どうやら何か作業が終わったらしい。
「おぉ……魔法だ」
「ま、魔法じゃないですよ。これは魔術なんです。ボクが魔法なんて恐れ多い」
「それ、何が違うんだ?」
 タンポポはわかりやすく照れるような声を出しながら髪を差し出してくる。反射的にそれを受け取るとなんとなくタンポポの存在感が増したように感じる。
「魔法は持ち前の魔力だけで完結する現象を指します。魔術は持ち前の魔力と何らかの補助道具を使って現象を引き起こしているんです」
 なるほど、なんとなくわかったようなわからないような……今回はこの髪が補助道具ということなのだろう。
「これでヤクモさんは何処にいてもボクがどこにいるか感じられるようになりました。ここに更に……」
 タンポポが再び尻尾の体毛を毟っていく……そんなに毟って大丈夫なんだろうかと少し心配になったが俺の心配をよそにタンポポは再び呪文を唱えていく。なんとなくさっきの呪文と違うことはわかる。呪文が終わると再び体毛に一瞬光が宿る。それをタンポポから受け取るも今度は感じられるような大きな変化はない。
「これでボクたち獣人と同じぐらい速く動けるようになりましたよ。ボクの体毛なのでそこまでの効果はないと思いますけど人が走るのと同じぐらいの速度が出るようになったと思います」
「なるほど……?」
 そういえば、必要に駆られなかったから走るということを意識したことはなかったかもしれない。移動するときは歩く感覚で動いていた。タンポポの口ぶりからすると霊というのはバフをもらわないと人間の走る速度を出せないように聞こえる。そこからは同じことの繰り返し、タンポポが思いつく限りのバフを俺に体毛を用いてかけていく。獣人の嗅覚を得る(なんかこの場合は霊としての領域を増やすとかなんとか小難しいことを言っていた)とか必要あるかわからないが、物を掴みやすくするバフなんていうのも盛られていく。他にもいろいろ盛られたが……霊を使うというのは通常かなりの介助が必要になるのだと感じる。俺の他に霊を見たことがないが……それってかなり弱いのではないのだろうか? 俺の片手がタンポポの体毛で埋め尽くした辺りで、タンポポが小石を拾い上げて己の指を噛んで血をつけて呪文を唱える。
「こ、これで最後です……これは即席の魔素をある程度防いでくれるお守りみたいなものです」
「お、お疲れ……でも、正直こんなにやる必要がある俺って役に立つのか?」
 俺の言葉にタンポポが難しそうな顔をする。タンポポが悩んでいる間にとりあえずタンポポからもらったものをジャージのポケットへと入れていく。少しこんもりしているが何とか全部片方のポケットに収まってくれた。これは傍から見たら小石や体毛が浮いているように見えるのだろうか……?
「正直に言うと……必要ないです。ただ、今回のバフは周りの魔素を吸い上げて効果が出る、魔素の多い……主にダンジョン専用のバフなんです」
「ふむふむ……ここはダンジョンだから問題ないんだよな」
「はいっ! たださすがにその量のバフを使うと周りの魔素を完全枯渇させるのでどれも効果が出ない最悪の結果になっちゃうんです」
「ダメじゃん!」
 さっきまでの時間はいったい何だったんだとツッコミたくなるが、それをわかっているタンポポがそんなミスをするはずがない。
「ヤクモさんから漏れ出る魔素は先ほどまでは正直にいうと近寄りたくないレベルでしたが、今なら耐えられるレベルの魔素になっています!」
「お、俺そんなレベルにやばかったの? そ、それはありがとう」
 そういう事情があったらしい。さらに言えば、全てが正常に動いても尚、耐えられるレベルの魔素は漏れているのでまだバフは盛れるらしく本当は盛りたいがタンポポの知る限り全てのバフを盛ったのでこれ以上は現段階では無理とのことだ。
「これで準備は整いました! あとはバフの乗ったヤクモさんにこのダンジョンをくまなく練り歩いてもらえれば」
 なるほど、俺は安全に壁の中を通れたりするし、さっきよりも遠くの物を『感じ』れるようになったのを考えると安全そうだ。俺一人ではさすがに時間がかかるとは思うが、俺に語り掛けたみたいに霊を見つければ人海戦術も使えるようになるのだろう。
「……でも、タンポポ自衛とかできるのか?」
「………………………できません。い、いっしょにいきましょう」
 完全に丸腰の死霊術士を置いていくとは……本当に腹が立つ。
 こうして、事前の準備を全て終えた俺とタンポポは探し物をするために動き始めるのだった。
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