転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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VS聖騎士

魔法と魔術

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・魔法と魔術
 俺の知る限り、エリザベスという女の子はここの領主の愛娘であり、氷魔法の使い手で聖騎士の素質があるかなりお転婆な女の子である。
 この聖騎士とは何ぞやというのを詳しくマドラーにたずねた所、先天的、後天的に死霊魔法、死霊魔術を用いなくても霊の存在を感知することができる人が生まれてくるそうで、その人たちはゼン神に霊をゼン神の所へ送るように役割をもって生れて来た子という立ち位置になるらしい。俺の元いた世界でもいたらしい『霊能力者』に相当する存在のようだ。聖騎士を養成する学校のようなモノを国とゼン神教が協力して作っているようで、そこでは霊を効率よく神の所へ送るための儀式や戦闘訓練を行うらしい。死霊滅するべしという死霊特化の戦闘スタイルを持つようになり、更に死霊魔法使いや死霊魔術士も軽んじるようになることから死霊魔法、死霊魔術士たちとはかなり相性も悪ければ仲も悪い。
魂の交流ソウルコンタクト下での約束は契約になります、なので霊と約束するときは自分が不利になりすぎないよう、相手にも得だと思わせるような工夫が必要になるんです。エリザベス様は魂の交流ソウルコンタクトを覚えたばかりなのでその辺りはしっかりと注意が必要です。わかりましたか?」
「はい、わかりましたわ」
 ここは死霊術士ギルドのフロアに置いてある席の1つ。タンポポが四苦八苦しながら、エリザベス相手に死霊魔術を教えている。これはエリザベス本人が自分のお小遣いの許す範囲で死霊術士ギルドに出した依頼の結果だ。依頼内容は『死霊魔術を教えてほしい』というもの。
「なぁ、マドラー……聖騎士とは仲が悪いんだよな」
「エリザベス様は素養があるだけでまだ聖騎士ではありませんから」
 俺とマドラーはタンポポとエリザベスを全く同じ場所から眺めている。重なっていると彼女の全てが手に取るようにわかってしまうのでやめてほしいのだが、マドラーはそれを全てわかっているのに加えて、マドラーにとってはとっては猫吸いならぬ死霊吸いで癒しの効果があるらしい。俺は何か匂うのだろうか。
「それにエリザベスは氷魔法を使えてたと思うんだが」
「魔術は魔法に対する憧れから生まれたんです。自分もあの魔法を使いたいという思いを研究と努力に費やした賜物なので、魔術は努力する人に必ず報いてくれるものなんですよ。私はそういう人は応援したいですから」
 魔法は選ばれた存在しか使えないが、魔術は誰もが努力さえすれば使える。それは立場や才能に左右されることすらないものらしい。つまり、魔術の道を進む人たちは『好きだから』が根底にあるということになる。俺がここに初めて来た時も全員が目を輝かせて話してくれたのも頷ける。
「タンポポ先生、魂の交流ソウルコンタクトは死霊魔法にもあると聞きましたわ。魔法と魔術でのはなんなのかしら?」
「なるほど、そうですね。魔法は魔力だけで引き起こせるものですが、魔術は何らかの触媒が必要です。そこは大丈夫ですか?」
「えぇ、もちろんですわ。基本中の基本ですもの」
「では、魂の交流ソウルコンタクトの魔術には何を触媒にしているでしょうか?」
「………………あれ?」
 意気揚々と質問したエリザベスがぴたりと止まる。そういえば、俺もタンポポが何かを口に入れているような仕草をしているのは見たことがない。だから歯や舌そのものに何か仕込んでいるかと思っていたが、そうなると俺がエリザベスの言葉がわかる説明がつかない。
「触媒は自分の身体から出たものであるのが望ましいとされているんです。血や体液もそうですが、魂の交流ソウルコンタクトの触媒は『声』そのものです。声の届く範囲の声を聴いた霊と交流が可能になる魔術ということですね」
「ということは、死霊魔法は声を出さずとも霊と交流ができるということですのね!」
「魔力の届く範囲ということになるので……魂の交流ソウルコンタクトだけについては一長一短があるということで死霊魔法使いの方も覚える人がいるほどなんですよ」
 なるほど、そんな違いがあったのか……しかし、何かが引っかかる。そういえば、初めてこの町を訪れた時、冒険者ギルドで頭に声が響いていた気がする。その時は考えることが色々と多すぎたので無視したが、あれは死霊魔法使いが使った魂の交流だったということなのだろうか?
「なぁ、マドラー、この町に死霊魔法使いはいるのか?」
「え? そうですね。いないはずです。魔法使いは重宝されるので、基本隠すことはないんですが、場合によってはあえて言わない人もいます」
「それはどうして?」
「死霊魔法使いの場合はイメージの問題ですね。死霊魔法は世間的に見れば少しいやーなイメージがありますから。それとこれはどんな魔法使いにも言えることなんですが」
「今日の分は終わりましたわー!!! ヤクモさん! エリザベスと一緒にお空を飛んでくださいませ!!!!」
「ごふっ」
 マドラーの言葉を遮るようにエリザベスが俺に向かって突撃してくる。俺は物理的に通り抜けるので、重ねっているマドラーに思いっきり体当たりする形になる。
「ふ、ふぅ……エリザベス様、お伺いしてもよろしいでしょうか? 氷魔法使いと死霊魔術士、エリザベス様はどちらですか?」
「何ですの? そうですわね。今は死霊魔術がとっても楽しいので死霊魔術士がいいですわ」
「こういうことです」
「なるほど」
 タンポポとエリザベスが頭の上にクエスチョンマークを浮かべているが、俺は納得した。才能があっても好きなモノとは限らない。名乗るなら好きな方を名乗る。納得だ。
 しかし、死霊魔術ギルドも知らない死霊魔法使いがこの町にいるという事実が俺の中になんとなく残った。
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