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VS聖騎士
聖騎士の立場
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・聖騎士の立場
サラはキャラダイスの領主の館の客室にいた。
「剣と鎧を壊したリッチーはわたくしの攻撃が元で消滅……それを使役していたと思われる術者、タンポポは死霊術士ギルドから追放されておりこれ以上の追求は難しいです。追放となったのはわたくしが貴族であり……公衆の面前で鎧が壊されたことで生じた結果が関係していると思われます」
1人で水晶に向かって話しかけている。
『なるほど……消滅を見届けたわけではないと、そういうことですね?』
「は、はい、その通りです」
神聖魔法の中には世界中の人々、余すところなくゼン神が声を届け、問答をするために使ったものがある。これはそれを再現した神聖魔術である。世界中全員としゃべることはできないが、同じ水晶を持っている人となら話すことが可能となる。余談だが、この水晶の更に劣化品、文字を送ることができる魔術を冒険者ギルドには貸し出しており、聖騎士は冒険者ギルドにも強い影響力を持っている。
サラが話しているのは自分の上司に当たる人間である。剣と鎧が壊れるという異常事態をすぐにでも知らせる必要があったサラだったが、衆人たちに全裸を見られてしまったというダメージから復活するのにそれだけ時間を要してしまった。普段ならとっておきの回復役エリザベスとおしゃべりするだけでも癒されるのだが、昨日、リッチーが消滅し、タンポポが死霊術士ギルドから追放されたことを聞いて口をきいてくれなくなってしまった。
『おそらくですが、そのリッチーは消滅していないでしょう』
「やはり、そう思われますか」
『通常のリッチーでさえ、我々が数人がかかりで確実に倒すもの。それを1人でよく立ち向かいました。しかし……だからこそ消滅は嘘だと思った方がいいと思います。術士を取り逃がしてしまったのは失態でしたね』
「申し訳ありません……やつを倒すときはわたくしの同行をゆるしていただけませんか」
『えぇ、そのつもりです。まだキャラダイスに滞在しているのでしたね。そこに聖水と剣と鎧を届けさせましょう。まだ近くにいるでしょうから探しなさい。たしか、聖騎士の素質がある子は氷魔法が使えると聞きました。リッチーに対しても大きな武器になると思いますので、少し早いですが聖騎士見習いとして同行させるのも許可しましょう』
上司の言葉にサラの表情は明るくなったがすぐに曇る。何と説明するべきか……聖騎士になるのを断られるなんて前代未聞。説得をしようにもエリザベスは昨日からまったく口をきいてくれなくなってしまった。リッチーが消滅していなかったとして……それをまた消滅させるために同行をお願いしても絶対に来てくれないだろう。
「そ、そちらにつきましても報告があります……断られました」
『ふむ……なるほど、確かにまだ10歳でしたか。男子ならともかく、女子がいきなり戦闘になるかもしれない状況に放り込まれるのは不安になりますね。親御さんの許可もでないでしょう』
「いえ……聖騎士になるのを断られました。書類にサインをもらえていません」
『……なんですって?』
驚愕と怒り半々の声が漏れ聞こえてくる。サラはなんとかなだめるように言葉を慎重に選びながら口を開く。
「……もともと、わたくしがリッチーを1人で討伐しようとしたのもそこに理由があります。エリザベスは聖騎士ではなく死霊術士になることを選びました」
『よりにもよって、死霊術士っ! 氷魔法使いになるでもなく、死霊術士っ……なるほど、言いたいことはわかります。リッチーが何らかの方法でエリザベスを誑かしたと』
「はい、エリザベスは今もなお、死霊術士になる夢を捨てておらず……リッチーを倒したわたくしを敵だと言って口もきいてくれなくなりました」
事実を口にしただけでサラは泣きそうになるがぐっと堪える。
聖騎士としてここに訪れたのだからエリザベスに良い恰好ができると……かっこいい所を魅せられると思っていたのに嫌われてしまっている。それもこれも全てヤクモというリッチーが悪いのだ。怒りを燃やしてなんとかサラは涙をこらえる。
『無害を装って、人心を掌握する……これは大変やっかいな存在です。リッチーと戦った際はどんな魔法や魔術をつかってきましたか? しっかりと対策をして挑む必要があります』
「……それが、まったく。何も使ってきませんでした……わたくしも何をされたのかわからないぐらいで……聖水でも日光でも剣でも傷を与えたという手ごたえというものがまったくありませんでした」
『……ありえないことですが、何らかの方法でレジストしたと考えるしかないでしょう……残りは肉体の直接浄化……少しでも何か特徴がわかりませんか?』
「そ、それが……そのリッチーは脚がないだけでその他は人間と全く変わりありませんでした。黒髪で不思議なズボンと上着を着ていて……黒目で歳は20代後半ほどかと」
『信じられません……もし、それが本当だとしたら我々が相手をしてきたどんなリッチーよりも強力な存在でしょう。良く生きて戻りました……我々、聖騎士は暫くそのリッチーを消滅させるために全力を注ぎます。あなたには副隊長を任せることになるでしょう』
「っ! はっ。務めて見せます!」
大躍進、大出世であるが……サラは喜べない。喜ぶのはあのリッチーを倒してからだ。あのリッチーを倒して……その後にもう一度、エリザベスを聖騎士になるように誘う。そうすれば、2人仲良く聖騎士になれるはずだ。サラは新しい使命に燃えていた。
サラはキャラダイスの領主の館の客室にいた。
「剣と鎧を壊したリッチーはわたくしの攻撃が元で消滅……それを使役していたと思われる術者、タンポポは死霊術士ギルドから追放されておりこれ以上の追求は難しいです。追放となったのはわたくしが貴族であり……公衆の面前で鎧が壊されたことで生じた結果が関係していると思われます」
1人で水晶に向かって話しかけている。
『なるほど……消滅を見届けたわけではないと、そういうことですね?』
「は、はい、その通りです」
神聖魔法の中には世界中の人々、余すところなくゼン神が声を届け、問答をするために使ったものがある。これはそれを再現した神聖魔術である。世界中全員としゃべることはできないが、同じ水晶を持っている人となら話すことが可能となる。余談だが、この水晶の更に劣化品、文字を送ることができる魔術を冒険者ギルドには貸し出しており、聖騎士は冒険者ギルドにも強い影響力を持っている。
サラが話しているのは自分の上司に当たる人間である。剣と鎧が壊れるという異常事態をすぐにでも知らせる必要があったサラだったが、衆人たちに全裸を見られてしまったというダメージから復活するのにそれだけ時間を要してしまった。普段ならとっておきの回復役エリザベスとおしゃべりするだけでも癒されるのだが、昨日、リッチーが消滅し、タンポポが死霊術士ギルドから追放されたことを聞いて口をきいてくれなくなってしまった。
『おそらくですが、そのリッチーは消滅していないでしょう』
「やはり、そう思われますか」
『通常のリッチーでさえ、我々が数人がかかりで確実に倒すもの。それを1人でよく立ち向かいました。しかし……だからこそ消滅は嘘だと思った方がいいと思います。術士を取り逃がしてしまったのは失態でしたね』
「申し訳ありません……やつを倒すときはわたくしの同行をゆるしていただけませんか」
『えぇ、そのつもりです。まだキャラダイスに滞在しているのでしたね。そこに聖水と剣と鎧を届けさせましょう。まだ近くにいるでしょうから探しなさい。たしか、聖騎士の素質がある子は氷魔法が使えると聞きました。リッチーに対しても大きな武器になると思いますので、少し早いですが聖騎士見習いとして同行させるのも許可しましょう』
上司の言葉にサラの表情は明るくなったがすぐに曇る。何と説明するべきか……聖騎士になるのを断られるなんて前代未聞。説得をしようにもエリザベスは昨日からまったく口をきいてくれなくなってしまった。リッチーが消滅していなかったとして……それをまた消滅させるために同行をお願いしても絶対に来てくれないだろう。
「そ、そちらにつきましても報告があります……断られました」
『ふむ……なるほど、確かにまだ10歳でしたか。男子ならともかく、女子がいきなり戦闘になるかもしれない状況に放り込まれるのは不安になりますね。親御さんの許可もでないでしょう』
「いえ……聖騎士になるのを断られました。書類にサインをもらえていません」
『……なんですって?』
驚愕と怒り半々の声が漏れ聞こえてくる。サラはなんとかなだめるように言葉を慎重に選びながら口を開く。
「……もともと、わたくしがリッチーを1人で討伐しようとしたのもそこに理由があります。エリザベスは聖騎士ではなく死霊術士になることを選びました」
『よりにもよって、死霊術士っ! 氷魔法使いになるでもなく、死霊術士っ……なるほど、言いたいことはわかります。リッチーが何らかの方法でエリザベスを誑かしたと』
「はい、エリザベスは今もなお、死霊術士になる夢を捨てておらず……リッチーを倒したわたくしを敵だと言って口もきいてくれなくなりました」
事実を口にしただけでサラは泣きそうになるがぐっと堪える。
聖騎士としてここに訪れたのだからエリザベスに良い恰好ができると……かっこいい所を魅せられると思っていたのに嫌われてしまっている。それもこれも全てヤクモというリッチーが悪いのだ。怒りを燃やしてなんとかサラは涙をこらえる。
『無害を装って、人心を掌握する……これは大変やっかいな存在です。リッチーと戦った際はどんな魔法や魔術をつかってきましたか? しっかりと対策をして挑む必要があります』
「……それが、まったく。何も使ってきませんでした……わたくしも何をされたのかわからないぐらいで……聖水でも日光でも剣でも傷を与えたという手ごたえというものがまったくありませんでした」
『……ありえないことですが、何らかの方法でレジストしたと考えるしかないでしょう……残りは肉体の直接浄化……少しでも何か特徴がわかりませんか?』
「そ、それが……そのリッチーは脚がないだけでその他は人間と全く変わりありませんでした。黒髪で不思議なズボンと上着を着ていて……黒目で歳は20代後半ほどかと」
『信じられません……もし、それが本当だとしたら我々が相手をしてきたどんなリッチーよりも強力な存在でしょう。良く生きて戻りました……我々、聖騎士は暫くそのリッチーを消滅させるために全力を注ぎます。あなたには副隊長を任せることになるでしょう』
「っ! はっ。務めて見せます!」
大躍進、大出世であるが……サラは喜べない。喜ぶのはあのリッチーを倒してからだ。あのリッチーを倒して……その後にもう一度、エリザベスを聖騎士になるように誘う。そうすれば、2人仲良く聖騎士になれるはずだ。サラは新しい使命に燃えていた。
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