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一学期
とある日の買い物
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アパレル店員(30代)は悩んでいた。
会社の方針としては手が空いていれば、積極的にお客様に声をかけて困りごとがないか、どんなものを探しているのかを聞いてご案内をしたり、相談に乗ったりするのが決まりである。
「この間のボーリングで服の大切さはよくわかった。だからこそ、こうして服を買いに来て勉強もしようと思っている……しかし、1つの店で30分や40分も悩むものなのか?」
「1時間ぐらい悩むやつもいるぞ? 服の値段見てみろ」
「……高くないか?」
「こんなもんだ。悪いことは言わないから自分の小遣いと親から服代として預かった分を出すのを勧める……というかな」
「なんだ」
「……何故、上下ブランドのスウェットってそれはあれか……お出かけ用ってことか?」
「な、なんだ、ダメか」
「……今自分で着てる服を順に着せてみ」
「……絶対に近寄りたくないな。うん、買ったらすぐ着替えよう」
男子ふたりがかなり近い距離で買い物をしている。これは声をかけるべきなのだろうか? 距離感としてはもう恋人の距離である。自分も確かに同性と出かけて、お店の中を見る時はそれぐらいの距離感になることもあるが……狭いお店で同じものを見る時ぐらいである。お店の中で少しでも移動するときはお互い適切な距離を取る。
会話の内容から上下スウェットの彼がおそらく上下セットで何かを求めていることがわかる。なんとなく真面目そうに見えるから落ち着いたもの……もしくはギャップを狙って薄い上着の下になにか派手なものを着せてみても映えるかもしれない。もしくはかわいい系の服……年を考えるとかわいい系を選びにくいかもしれないが、そちらも似合うだろう。
店員が頭の中で似合いそうなものをあらかじめいくつかピックアップするために観察していると……付き添っている方は距離感を詰めようとしておらず、服を買おうとしている方がガンガン距離を詰めていることに気が付く。カップルになりかけの子たちがよくする動きに似ている。
「あー、もうわからん。何かこれ系が好きとかないのか?」
「ない、強いて言うならボーリングの時に着せられたのは嫌だ」
「だろうな……あれは俺も嫌だ」
「あのー失礼ですが、何かお探しでしょうか?」
一通り店の中を回り終えたのを見計らって店員が声をかける。最初に声をかけるタイミングを見失ってからなかなか声をかけることができなかったが、1人がお手上げ状態になると店を変えられてしまうかもしれない。声をかけるなら今しかなかった。
「この可哀想な原石に似合いそうな服を探してるんっすよ」
「僕か? 僕のことだな?」
「あー……な、なるほど」
「納得? 今店員さん納得したのか?」
「い、いえ、そういうわけではないんですが……」
「この間、図書館に行った時は普通だったろ。あれだったら削りがいのある原石だったんだよ。今はただの可哀想な原石だよ! このさわやかイケメン」
「あれは母さんチョイスで……というか僕はイケメンなのか……そ、そうか。まぁ、うん。とりあえずいい」
店員の目の前で小気味よいやり取りが始まってしまう。少し噴出してしまいそうになりながら、あらかじめオススメすると決めていた服をいくつか持って来てあてがっていく。普段は今着ているボトムやトップと合わせられるようなものを選ぶのだが、今回は完全に無視である。
「これは確かに遥にも勧められたものか……くっ。やはり預かったお金を使うしか」
「おしゃれ舐めるなって……店員さん、これぐらいの予算で下と上をそろえたいんだけど」
「そうですねぇ……となるとこちらではなく、色味が似ているこちらの無地のシャツに変えるのがいいと思います。お客様はこちらの色が良くお似合いなので」
「ほら、店員さんもこう言ってる。元々の予算だとシャツ1枚ぐらいしか買えないぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……重大なことに気が付いた。今、僕は遥と並んでいるのは……遥ひょっとして恥ずかしかったり?」
「今頃か……」
「すぐ買います! 店員さん、着ていくのでオススメのやつください」
あっという間に話がまとまり、店員のおススメした上下セットの服を購入し試着室で着替えていくこととなった。
「は、早めに言ってくれ。なるほど、服を買いに行く服がないとはそういう事か」
「今更だろ……まぁ、俺はあんまり見てくれは気にしないからなぁ……外見より中身が大事だろ」
「……ま、まぁ、そういってくれるなら」
この会話をすぐそばで聞いていた店員は何か色々察して、昨日、散々色々自慢してきた友達に自慢し返すのであった。
会社の方針としては手が空いていれば、積極的にお客様に声をかけて困りごとがないか、どんなものを探しているのかを聞いてご案内をしたり、相談に乗ったりするのが決まりである。
「この間のボーリングで服の大切さはよくわかった。だからこそ、こうして服を買いに来て勉強もしようと思っている……しかし、1つの店で30分や40分も悩むものなのか?」
「1時間ぐらい悩むやつもいるぞ? 服の値段見てみろ」
「……高くないか?」
「こんなもんだ。悪いことは言わないから自分の小遣いと親から服代として預かった分を出すのを勧める……というかな」
「なんだ」
「……何故、上下ブランドのスウェットってそれはあれか……お出かけ用ってことか?」
「な、なんだ、ダメか」
「……今自分で着てる服を順に着せてみ」
「……絶対に近寄りたくないな。うん、買ったらすぐ着替えよう」
男子ふたりがかなり近い距離で買い物をしている。これは声をかけるべきなのだろうか? 距離感としてはもう恋人の距離である。自分も確かに同性と出かけて、お店の中を見る時はそれぐらいの距離感になることもあるが……狭いお店で同じものを見る時ぐらいである。お店の中で少しでも移動するときはお互い適切な距離を取る。
会話の内容から上下スウェットの彼がおそらく上下セットで何かを求めていることがわかる。なんとなく真面目そうに見えるから落ち着いたもの……もしくはギャップを狙って薄い上着の下になにか派手なものを着せてみても映えるかもしれない。もしくはかわいい系の服……年を考えるとかわいい系を選びにくいかもしれないが、そちらも似合うだろう。
店員が頭の中で似合いそうなものをあらかじめいくつかピックアップするために観察していると……付き添っている方は距離感を詰めようとしておらず、服を買おうとしている方がガンガン距離を詰めていることに気が付く。カップルになりかけの子たちがよくする動きに似ている。
「あー、もうわからん。何かこれ系が好きとかないのか?」
「ない、強いて言うならボーリングの時に着せられたのは嫌だ」
「だろうな……あれは俺も嫌だ」
「あのー失礼ですが、何かお探しでしょうか?」
一通り店の中を回り終えたのを見計らって店員が声をかける。最初に声をかけるタイミングを見失ってからなかなか声をかけることができなかったが、1人がお手上げ状態になると店を変えられてしまうかもしれない。声をかけるなら今しかなかった。
「この可哀想な原石に似合いそうな服を探してるんっすよ」
「僕か? 僕のことだな?」
「あー……な、なるほど」
「納得? 今店員さん納得したのか?」
「い、いえ、そういうわけではないんですが……」
「この間、図書館に行った時は普通だったろ。あれだったら削りがいのある原石だったんだよ。今はただの可哀想な原石だよ! このさわやかイケメン」
「あれは母さんチョイスで……というか僕はイケメンなのか……そ、そうか。まぁ、うん。とりあえずいい」
店員の目の前で小気味よいやり取りが始まってしまう。少し噴出してしまいそうになりながら、あらかじめオススメすると決めていた服をいくつか持って来てあてがっていく。普段は今着ているボトムやトップと合わせられるようなものを選ぶのだが、今回は完全に無視である。
「これは確かに遥にも勧められたものか……くっ。やはり預かったお金を使うしか」
「おしゃれ舐めるなって……店員さん、これぐらいの予算で下と上をそろえたいんだけど」
「そうですねぇ……となるとこちらではなく、色味が似ているこちらの無地のシャツに変えるのがいいと思います。お客様はこちらの色が良くお似合いなので」
「ほら、店員さんもこう言ってる。元々の予算だとシャツ1枚ぐらいしか買えないぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……重大なことに気が付いた。今、僕は遥と並んでいるのは……遥ひょっとして恥ずかしかったり?」
「今頃か……」
「すぐ買います! 店員さん、着ていくのでオススメのやつください」
あっという間に話がまとまり、店員のおススメした上下セットの服を購入し試着室で着替えていくこととなった。
「は、早めに言ってくれ。なるほど、服を買いに行く服がないとはそういう事か」
「今更だろ……まぁ、俺はあんまり見てくれは気にしないからなぁ……外見より中身が大事だろ」
「……ま、まぁ、そういってくれるなら」
この会話をすぐそばで聞いていた店員は何か色々察して、昨日、散々色々自慢してきた友達に自慢し返すのであった。
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―――
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※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
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