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謀叛
しおりを挟む父が、兄である王に反旗をひるがえした。
私は王の弟を父に持つ公爵令嬢ナタリー。
私の16歳の誕生日のパーティーで、父が謀叛を起こした。
私は何も知らなかった。
私の誕生日パーティーは王城で開催され、大勢の貴族が集まった。
私の、白を基調としたふんわりとしたドレスは、胸元を鎖骨が出る形に丸く縫い合わされ、襟元に沿って薄いピンクの花々が飾られていた。
コルセットで締められた腰にも同じ花が取り付けられていて、その腰の部分から沢山のレースがスカートの縦に沿って流れていた。
私をエスコートしたのは、王の息子ジェラルドで私より早く誕生日を迎え、18歳になっていた。
ドレスの薄いピンクの花は、ジェラルドが私に似合う花だと言ってくれたものだった。
私はジェラルドが好きだった。
ジェラルドにとって私は妹のような存在で、家族に向ける優しい目で私を見ているのは知っていた。
私は王にカーテシーをして、自分のために開催されたパーティーのお礼を言った。
「ナタリーは綺麗になったな。お前の母親にそっくりだ」
王家は金髪に緑の瞳が多い。
王もジェラルドも私も、金髪に緑の瞳を持っていた。
「お褒めいただき嬉しく存じます」
「あんなにお転婆だったのにね。すっかり淑女になったわね」
「王妃さまったら、この場で言われると恥ずかしいです」
「ごめんなさいね。あなたは私の娘も同然として見てきたから、綺麗になってとても嬉しいのよ」
王妃が口元を扇で隠しながら笑う。
私の横に立っていたジェラルドも、クスッと笑った。
子供の頃から一緒に育ってきたジェラルドは、お転婆に走り回る私を思い出しているのだろう。
私は笑っているジェラルドの袖を非難するように引っ張った。
乾杯のための赤いワインの入ったグラスが配られると、王は立ち上がりグラスを持つ腕を上に伸ばした。
「今日はナタリーの16歳の成人の誕生日だ。こんなに美しく育ったことは、誠にめでたく、嬉しく思う。皆も、一緒に祝おうではないか」
参加している貴族たちもグラスを高く持ち上げた。
「ナタリー・デュ・フィールディングスの成人を祝って!」
「ナタリー令嬢と王国の繁栄を祝って!」
王の音頭に他の貴族たちも応え、ワインをあおる。
皆の大きな声が響いたことで、私は少し驚いてよろめいてしまった。
ジェラルドが私を支えようとして、ワインをこぼしてしまう。
そのワインは私のドレスの胸元にかかり、赤い液体が滲んで白いドレスに広がった。
大きなざわめきが広がった。
ワインをこぼした程度で、とシミになったドレスから視線を上げると、壇上にいた王の周りに人が集まっていた。
王が倒れかけているのを、側の者が支えているのだけは見えた。
何が起こったのかは分からなかった。
私もなぜか、めまいがしてきた。
「ナタリー!」
ジェラルドの慌てた声が遠のいていった。
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