青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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幸か不幸か予定通り

ちょっと綺麗なお地蔵様

「ミランジェ?」

思わず名前を呼ばれて振り向いてしまった。

振り向いた先には物凄い、ものすご~いカッコイイ男の人が立っていた。

ごめんね、私の記憶の中で私の名前をご存じの方に、あなたみたいな美形は存在しないわ。多分知らない方ね?

ハニーブラウン色の髪にエメラルドグリーン色の瞳、背も高いわね~体もスラッとしていて綺麗ね?でも知らない方よね?

「ミランジェ?ミランジェだよね?久しぶり…!」

本当に、誰?あなたみたいな美形に心当たりは無いんだけど?

私が怪訝な顔をしているので、その美形さんも気が付いたみたい。

「あ…そうか~俺、変わったもんなぁ~えっとリュージエンス=ヴェシュ=サザウンテロスだ。もう分かるだろ?」

なん、何ですって?サザウンテロスって…あのうちの実家…トキワステラーテ王国のお隣のサザウンテロス帝国のこと?え?あれ?リュージエンス…ってもしかして昔よく一緒に遊んでいた第二王子殿下のぉぉ?

「ええ?!リュー君なのぉ?!あのぽっちゃりしてて小っちゃくてお地蔵さんみたいなあの、リュー君なのぉ?!」

「ちょい待てよッ!オジゾーが何かは分かんねーけど、ぽっちゃり言うな!チビとか言うな!いい大人に向かってリュー君とか言うなっ!」

まじまじとその美形さんこと、リュー君を見詰めると確かに髪の色は昔はもう少し明るめだったが瞳の色と目の形は変わっていない。

「あのリュー君がこんなお兄様になるなんてね~」

「リュー君て言うなっ!それはそうと、ミランジェこんな市井の通りで何やってんだ?供もいないのか?」

「それはこっちの台詞よ?リュー君こそ第二王子殿下がお供もつけずに他国でどうされたの?」

リュー君は不思議そうな顔で私を見ている。あなた本当に綺麗な顔に成長したのね~!

「ミランジェってこんなに話す方だったっけ?明るくなったな…」

ギクッとしたけど、すぐに微笑みを作りリュー君に余裕の笑みを見せておいた。

「まあ、私も色々あったしね」

「その色々が今、ここに一人でいることに繋がっているのか?」

何だかリュー君がお地蔵さんから、例えるなら不動明王とか阿修羅像みたいな怖い感じになっているような気がするんだけど?あの素朴なお地蔵さんはどこにいったの?

リュー君から威圧的な…オラついた魔力が放たれている。しまった…振り向いたりしなければよかった。

「色々と確認していきたいから、どこかでお茶でも飲むか?」

「はい…」

万事休す!なんとかしなければ…逃げて…は私の体力じゃ、このスラッとした運動神経のよさそうなリュー君からはとても逃げ果せないと見た。

「逃げても無駄だよ?」

「…はい」

分かっておりますとも。私とリュー君は冒険者ギルドの斜め前にあるお洒落なカフェに入った。

店内すごいわね。中庭がお店の中にあってね、そこにもテーブルがあって中庭で花を愛でながらお茶が頂けるのね!私、あの中庭テーブルがいいわ!

「あっちに座れ」

リュー君に指示されたテーブルは店の奥の角の端だった。完璧に逃亡防止の席だ。ぐぬぬ、リュー君めっ!

ウェイトレスさんがメニューを持って来てくれたので、受け取って見てみた。よく考えたら異世界で初めて見るカフェメニューだ。何だか良く分からない果物?の名前のケーキとパイなのか…なんなのか。こうなったら端から順番に頼んでみてもいいわね。

「何々?ふむふむ…すみません!私この木苺盛り合わせケーキとマシュージュース下さいな。リュー君は?」

リュー君はポカンとしていた。そしてハッとして

「黒茶を…」

と呟いていた。リュー君は咳払いをすると探るような目で私を見てきた。

「お前…本当にミランジェ?」

「そう言うリュー君こそ、痩せたよね?あんなにぽっちゃりしてたのに」

「ぽっちゃりとか言うな!確かにすこーしふくよかではあったけど、軍に入って体を絞ったらこうなったの!はぁ…ミランジェ本当に元気というか、市井に馴染んでいるよな?昨日今日の生活でこうはならないだろう?まさかお忍びどころか、こうやって度々家出しているんじゃないのか?」

「家出!?」

びっくりして大声をあげてしまって店内にいた他のお客から注目を浴びてしまった。それでなくてもね、さっきから女子の視線が痛いのよ。向けられる魔質がね…。

ちょっとあの女なにぃ~?あんなカッコイイ人とさ~ムカつくぅ。

なんだか野暮ったい服を着た女ねぇ~殿方は素敵なのにさぁ…その場所代われ!

…とか、そういう心の声が聞こえてきそうな魔力をバシバシ私に当てて来る。

これ、魔力量の低い方なら、女の嫉妬という呪詛?みたいなので体調を崩しかねないわよ?

「家出以外の何物でもないだろう?その、ベイフィート陛下…はご存じなのか?」

あ……リュー君も私がこの国に嫁いできたのを知っていたのね。そりゃ知っているか…ぽっちゃりしてても第二王子殿下だものね。

ちょっと待て…!今、気が付いてしまったよ?もしここで私が下手な嘘をついて放逐について誤魔化しても、リュー君が国のお父様や姉上にチクったりしないなんて保障はないんじゃない?

まずは、ここで私に会ったことを言わないで欲しいとリュー君に口止めしておかなきゃヤバくない?

「リュー君、まずは約束して欲しい」

「約束?それは内容次第だな」

ぐぬぬ…ちょっと綺麗なお地蔵のくせにぃぃ…

「ここで私に会ったことを、お父様…トキワステラーテ国王陛下に内緒にしておいて欲しいの。」

「どうしてだ?家出を咎められるからか?」

家出から離れてよ、地蔵めっ!

「家出じゃないし…」

「じゃあ何だよ」

言い逃れたいけど、適切な単語が思い当たらない。その時、表の大通りから城にいた護衛のお兄様達、3人の魔力が感じられた。思わずハッとして表通りの方を見たら、さすが…目の前のお地蔵様は心眼をお持ちなのか

「どうした?」

と、すぐに阿修羅像みたいな(想像)オラつき魔力を発してきた。しまった…いやあの…どうしよう。さっきから私、迂闊すぎる。リュー君はカフェの入口辺りを顧みてから、そうか…と呟いた。

「そうだったな、ミランジェも一応トキワステラーテ国の血筋だったな。魔質、視えるんだよな?もしかして家出の捜索されてるのか?」

「もう家出じゃないってば…ほ……ほう…」

「ほ?」

「放牧…」

「動物じゃあるまいし、放し飼いされてるって…そんなわけあるかー!」

すごい…異世界に来てノリツッコミをしている人を初めて見たわ。リュー君も性格が明るくなったね…あんなに大人しくていつも薄く微笑んで黙ってばかりの子だったのに…。しかもこんなに恰好良くなって…。

「ミランジェ、今、失礼なこと考えてないか?」

「まさか~?」

おっと危ない、お地蔵様は心眼をお持ちだった。そしてウエイトレスさんが私達の注文したお茶とケーキとジュースを持って来てくれた。

ほほ~これがマシューか~。赤いね~ザクロ?かな。早速飲んでみた。おおっ!甘酸っぱいっ。美味しい!そして木苺盛り合わせケーキを頂く。美味しい!これも甘酸っぱい~土台のスポンジのしっとり感堪らないね。

「ミランジェ、もしかして城に居づらいのか?ベイフィート国王陛下と…その、上手くいってないのか?」

体がビクッと反応してしまった。それを見逃すお地蔵様ではない。

「そうか…。じゃあ家出しても、放牧されているんだな」

今度は放牧も引っ張ってきますか…。リュー君が完全に追及する体勢に入ってきたので私は諦めた。お父様に怒られてお姉様にも怒られて…多分だけど国に戻されるんじゃないかな…。くすん。バイバイ…自由な時間よ。

「リュー君、今時間大丈夫なの?」

「あ、ああ?ちょっと依頼の確認に来ただけだから…」

「依頼?」

「今日は休暇取って、こっちのギルドの依頼を手伝ってくれって言われてて…」

ギルドの依頼…え?もしかしてリュー君、冒険者ギルドで冒険者しているの?

「リュー君、冒険者なの?」

リュー君はちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。いやだ…照れ顔も美形ね。

「ううん、本業はサザウンテロス帝国の軍属なんだけど、今は休職中で、冒険者ギルドの依頼を受けて仕事してるんだ。」

ふわ~っ憧れの冒険者様よ。戦闘もリュー君の魔質から察するに、魔法剣士というところね。

「リュー君、氷と水魔法が得意そうね」

「!」

リュー君は息を飲んで私を見詰めた後、ダラッと椅子の背もたれに体を預けた。

「はあ~そうか、トキワステラーテの復活の御手の一族ってそんなことも分かるのか~すごいな」

私はゆっくりと微笑むと一言一言、噛み締めるように言葉に出した。

「いいえ、普通のトキワステラーテの王族ではここまで分からないと思うわよ、私が特殊なの」

リュー君は、だらけていた顔を引き締めた。ついでにリュー君の魔力もギュンと上がっている。リュー君の魔質は綺麗だ。まるで静かな湖面を思わせる澄んだ青…の魔力。

「ここは人の目がある。ゆっくりと話せるところがいいな」

「うち、来る?」

「ベイフィート城か?」

「ううん、商店街の外れの私の家」

リュー君、絶句している。美形の百面相って面白いね。私達はケーキを食べ終えて、表通りに出た。

「家、こっちなのよ」

私がリュー君を先導するように前を歩き始めた。リュー君は溜め息をついた。

「ミランジェ、すごいな…顔は目立っているけど、どこからどう見ても町娘だ」

「顔が目立っている?え…お化粧はほぼしていないけど?」

「ああ、いや…え~と、その…そういう意味の目立ってるじゃなくて…」

と、話ながら移動している私達の前に、城の近衛が立ち塞がった。何の用なの?

「ミランジェ妃、一緒にご同行願えますか?」

「どなたかとお間違えではないでしょうか?」

私がそう答えると近衛のお兄様方は、たじろいだ。しかしすぐに立て直すと

「あなたはあの部屋の解錠をご存じなはずだ。早く開けてくれ」

と不敬にもぞんざいな口を聞いてきた。すると、私の後ろにいたリュー君がスッ…近衛と私の間に入ってくれた。

「ベイフィート国の近衛と見たが、自国の国王妃に向かって不敬ではあるまいか?」

うわ!お地蔵様…じゃなかった、リュー君はさっきと全然違う声のトーンで近衛のお兄様方の前に立った。さすが、元ぽっちゃりでも帝国の第二王子殿下なだけはあるわ~。押し出しが良いね。

「お前何者だ…国王妃の愛人か?」

近衛のお兄様の発言に血の気が引いた。リュー君になんてことを…っ!

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