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師匠と弟子
人気の無いところでお願いします
私は澄ました顔のリュー君をジロリと睨み上げた。
「町内って商店街の周りってことじゃない?こんなに沢山の人がいる所でランニ…走るなんて、汗だらけでフラフラしている姿を皆様に見られちゃうじゃない!もっと人気の無い所じゃなきゃイヤよ!」
「人気って…じゃあどこで走り込みするんだよ?ミランジェの場合はまず、基礎体力つけないと。知ってる?魔力使うのにも体力が必要なんだ。疲れてたら発動しないんだよ?」
「ええっ!?そうなの?」
それはいけない。だったら基礎体力をつけないと!まずは走り込みをする場所はもっとランニングコース的な場所をチョイスして…あ、待てよ?この近くに高原がなかったっけ?
私は城の図書室から拝借してきた地図を広げて、場所を確認した。
「リュー君、このマンジェン高原って…広くて開けてる?ここなら人の目を気にせずに走り込める?」
リュー君は、目を真ん丸にした。
「本気で言ってるの?マンジェン高原ってムジウカダの群生地だよ?走り込みどころかずっと全力疾走だよ?」
何?その、ウジイカダ?何だかニョロニョロしてそうな名前だね?私、蛇系は大丈夫なのよ?
「もしかして細長いうねりながら動く生き物?私、結構平気なのよ?」
「確かに細長い体躯だけど…ムジウカダの体長、5ナンザーだよ?」
な、何だと?ナンザーは約1㍍くらいだったはず…体長5㍍だってええ!?
「しかも雑食だから、ミランジェなんてペロリと丸飲みだよ」
ペロリと丸飲み…〇〇コンダを思い出した。アオダショーくらいなら可愛いな!と思っていた気持ちが萎えていく。
「そ…そっか…ゆっくりと落ち着いたところで走りたいから、高原はやめておこうかな」
「そうしとけ、そうだ。だったら、ちょうどいいしカッシーラ伯領の討伐に一緒に来る?辺境伯領なら…ここより平原も多いし散歩とかしてゆっくり体力付けられると思うよ?」
それ、乗った!
「ああ、そうだ。ギルドにカッシーラ伯の討伐依頼が出てるからまずは、ギルドに行って~その足で婚姻届出しに行かない?」
婚姻…やっぱりリュー君は本気なの?そう言えば…
「私と婚姻したい詳しい事情をまだ聞いてないけど…」
「ああっそうだった…え~と、実は俺、兄上と弟に……」
リュー君が急に険しい顔になって外を見ている。何かしら?誰かいるの?私も外に意識を向けた。こんな商店街から外れた路地裏に数十人の気配がする。こんな狭い路地で固まって何をしているのかな?
「ミランジェ…この家の周りに防御障壁を今すぐかけて、最大級に丈夫なやつ」
「は、はいぃ!」
怖い…きっと敵?みたいな人達なんだわ…よく分からないけど。急いで4重掛け障壁を家の周りに張った。
私が障壁を張った途端、複数の魔力を外に感じる。そして私の張った障壁に衝撃が当たる。痛くはないけど、かなりの攻撃魔法を当てているのが分かる。
やはりこの家の中に入ろうとしているのか…目を瞑り身を固くしていると、リュー君がふわりと抱き締めてくれた。落ち着いたリュー君の魔力が私の体を包む。
そうだ、一人じゃない。今はリュー君が一緒だ。
「すごいな、ミランジェの障壁…かなりの攻撃魔法をぶつけられているけど、このぼろい家がビクともしないな。」
「ちょっと、リュー君!何気に失礼よっ」
ホワッとした良い気分が台無しだ!
暫く攻撃は続いた。その間にも家の周りを何人もが歩き回り、あちこちから攻撃を加えられる。
「こんなボロ屋がなんで壊れないんだ?」
「本当にこんな空き家みたいな家にいるのか?」
「早くしろ、こんな街中で攻撃魔法を使っていたら、警邏に見つかる」
外の話し声が駄々洩れです…ええ、ええ、皆さまがおっしゃるボロ屋でございますからね…
ピーッと笛の音が聞こえた。警邏だ…そりゃそうか、商店街の外れとはいえ、こんな街中で炎の攻撃魔法を使ってたらね~。そりゃ警邏もすっ飛んで来るわ。
「マズい、今は退け!」
一瞬で外の魔質…侵入者は消えた。転移魔法か…。やがて、警邏の人達だろうか…こっちだ…とか、逃げたか?とかの声が聞こえてきた。リュー君は玄関口に音も無く移動すると、扉を開けた。
リュー君は外に出ると警邏の方と何か話をしている。私も恐る恐る扉に近づき、外を覗いて見た。
私が覗くと警邏のお兄様達は驚いたような顔をした。こんなボロ屋から突然現れてすみません…
「この通り妻もいるし、俺を狙って来ていると思うんだけどな…」
つ、妻!?あ、私の事か…
警邏のお兄様達は皆、神妙な顔つきで頷かれている。
「スカウザーの方ならさぞや危険なご依頼もあったでしょうね…」
「実は今から依頼があってカッシーラ辺境伯領に行こうと思っていたのですが、また賊が襲って来ては妻も危険だし、このまま彼女も連れて行こうと思っています」
「そうですね、その方が宜しいですね!この付近の見回りはしておきますので、ご安心を」
警邏のお兄様達とリュー君は何か話が纏まったらしく、警邏のお兄様達は笑顔で帰って行った。
さて…
「リュー君…」
「はい…」
お地蔵は石のように直立不動で立っていた。
「狙われてるの?」
「はい…」
「いつから?」
「ん…始まったのは7年…8年前かな?」
「そんなに前から!?原因は?」
リュー君の魔質が萎れた…ああ、これは地雷だったのか。でも聞かなきゃ始まらない。
リュー君の腕を取って店舗の奥の台所兼作業室に連れて行く。
リュー君の手は冷たくなっている。よほど心に堪えることがあるに違いない。椅子に座らせると、ミルクにバニラっぽい香りのする香辛料を入れて、温めてからカップに入れてリュー君に渡した。
「いい香りがするね」
「香辛料屋のおじさんにミルクに入れると美味しいよって教えてもらったの」
「そうか…」
リュー君は一口二口飲んでから、ゆっくりと話を聞かせてくれた。
「俺が成人して軍隊に入って暫くしてからかな…兄上、クリヒリトエンス王太子殿下が何者かに襲われたんだ。その後に弟…第三王子殿下のマリエンスが…また何者かに襲われた」
まあ…。そんな連続して襲われるなんて…
「そうしたら兄上も…マリエンスも2人してこう言ったんだ『リュージエンス王子殿下に襲われた』って…」
「えぇ?何それ?」
私がそう言うとリュー君は苦笑している。
「俺はあいつらが何を言っているのか分からないし、勿論俺は何もしていないし…未だにどうしてそう思い込んだのかが謎なんだけど、とにかく…2人共が俺に襲われたの一点張りだ。初めは反論して勿論、否定もしていたんだけど…。また2人が襲われた」
な…何事なの?どういうことなの?
「それで、また2人共が俺に襲われたと騒いで…軍の大元帥と閣下方が調査してくれたんだ…」
「で、どうだったの?」
リュー君はミルクをゴクゴク…と飲むと深く溜め息をついた。
「兄上はマリエンスの手の者に襲われていた。逆にマリエンスは兄上の手の者に襲われていた」
「リュー君を除いて2人でやり合いしていたってことなの?」
「そういうこと。俺さ…兄上ともマリエンスともそこそこ仲良くしているつもりだったんだ。兄上が行く行くは国王陛下になられて、俺は軍部で大元帥になって…影になって支えて~とか考えてたのに…俺って真っ先に2人に疑われちゃったんだ…って。正直…心が折れた」
ブアッと涙が浮かんできた。リュー君は泣いてないのに、私が泣いてどうするんだ!と、思ったけど自分の事のように悔しかった。こんなお地蔵様のような澄んだ清い魔質の持ち主のリュー君が、なんで人殺しの片棒を担がなきゃならんのよっ!いい加減にしろっ!クリマリめっ!
「それから何度も兄上もマリエンスも襲われ続けた。その度に俺に反撃と称した刺客を差し向けてきて…あいつらから放たれてくる刺客のせいで軍部の仕事にも影響が出てくるし…大元帥に休職の申請をしたんだ。大元帥とか閣下方に逃げるな、頑張れ…とか言われたけど、このままいったら軍部対王太子殿下との対立と騒ぎたてられて事が更に大事になるかもしれないから…と。半ば強引に軍から逃げ出して…今に至るっていう訳」
私はボロボロと泣いていた。リュー君が私を引き寄せると優しく抱き締めてくれた。
「ミランジェが泣いてどうするんだよ~」
「だって悔しいじゃない…何もしていないのに犯人扱いされて、疑われて狙われて…じゃあ、さっきの賊ってクリかマリ、どっちかの刺客なの?」
「クリマリ?あ…ああ、兄上とマリエンスか~うん、そうだと思うよ。ただ俺を襲ったとも限らないないんだよなぁ…」
「どうしてよ?」
リュー君は何か言い淀んでいる。
「実は…少し前にトキワステラーテ王国にスカウザーの依頼として呼び出されて行ったんだけど、そこでミランジェの護衛の依頼も受けて…それからミランジェの旦那にもなってくれって頼まれたんだ。そうすればトキワステラーテ王国が俺の後ろ盾になって、クリヒリトエンス王太子殿下もマリエンス王子殿下も手出しできないようになるよ…って。俺はそれに乗っかった。もしかしたらトキワステラーテ国王陛下は俺を手駒にして色々画策しているかもしれないけど、それでもいいや…と思った。もう疲れたんだ」
まだリュー君21才くらいよね?人生に疲れるなんて早い早いっ…これは私が助けてあげなくては!
「リュー君の身の安全は私が保障するわよ!どんと任せて!なんていっても私には復活の御手の力があるしね。あいつらが絶対入ってこれない障壁を張ってリュー君の快適な睡眠をお約束致しますよ!」
リュー君はヘニャと笑った。
「うん…本当にごめんね。ミランジェのこと…恐らく兄上とマリエンスにはバレてるだろうし…」
「私の事…?」
「うん、だからさっきの賊はミランジェを浚おうとしてたのかも~って。だってミランジェを手籠めにしちゃったら、トキワステラーテ王国が自動的に味方になってくれる…ってクリマリ?の2人は考えてるんじゃないかな~て、そうしたら案の定、この家に居る時に狙ってきたし。いや~怖いね。本当にミランジェを巻き込んじゃったなぁ」
いやあちょっと、おいおい?
襲われそうなリュー君を守ることは気合が入るからいいとしても、私が浚われて…今サラリと手籠めとか言ってなかった?それってクリマリに無理やり…てこと?
それでクリマリに、この画像をばら撒かれたくなかったら言う事を聞け!とか脅されて言い成りになるアレのこと?
じょおおおだんじゃないよぉぉ!私を誰だと思ってんだよっ!精神年齢38才+18才をなめんなよ!
「だぁれが大人しく、はいはいっ何て言う事を聞くと思ってるのよ!そんな刺客、落とし穴でも掘って落としといてやるわ!」
「はいはい…手籠めは言い過ぎだね!ごめんね、落ち着いて。あくまで俺がアイツらの立場ならミランジェを味方につけたいだろうな~と思うだけで、実際はミランジェのことは眼中に入ってないかもしれないし。ほら取り敢えず、ギルド行って公所に行こうよ」
リュー君はまた私を引き寄せて頭をポンポンと撫でてくれた。
結局手籠めじゃないにしても、リュー君と夫婦になることはもう決定みたいだし…
まあ偽装結婚?のようなものだろうし、同居人だと思えばいいか!
「よーし、じゃあ行きましょうか!」
私はとリュー君は元気よく外に出た。
「町内って商店街の周りってことじゃない?こんなに沢山の人がいる所でランニ…走るなんて、汗だらけでフラフラしている姿を皆様に見られちゃうじゃない!もっと人気の無い所じゃなきゃイヤよ!」
「人気って…じゃあどこで走り込みするんだよ?ミランジェの場合はまず、基礎体力つけないと。知ってる?魔力使うのにも体力が必要なんだ。疲れてたら発動しないんだよ?」
「ええっ!?そうなの?」
それはいけない。だったら基礎体力をつけないと!まずは走り込みをする場所はもっとランニングコース的な場所をチョイスして…あ、待てよ?この近くに高原がなかったっけ?
私は城の図書室から拝借してきた地図を広げて、場所を確認した。
「リュー君、このマンジェン高原って…広くて開けてる?ここなら人の目を気にせずに走り込める?」
リュー君は、目を真ん丸にした。
「本気で言ってるの?マンジェン高原ってムジウカダの群生地だよ?走り込みどころかずっと全力疾走だよ?」
何?その、ウジイカダ?何だかニョロニョロしてそうな名前だね?私、蛇系は大丈夫なのよ?
「もしかして細長いうねりながら動く生き物?私、結構平気なのよ?」
「確かに細長い体躯だけど…ムジウカダの体長、5ナンザーだよ?」
な、何だと?ナンザーは約1㍍くらいだったはず…体長5㍍だってええ!?
「しかも雑食だから、ミランジェなんてペロリと丸飲みだよ」
ペロリと丸飲み…〇〇コンダを思い出した。アオダショーくらいなら可愛いな!と思っていた気持ちが萎えていく。
「そ…そっか…ゆっくりと落ち着いたところで走りたいから、高原はやめておこうかな」
「そうしとけ、そうだ。だったら、ちょうどいいしカッシーラ伯領の討伐に一緒に来る?辺境伯領なら…ここより平原も多いし散歩とかしてゆっくり体力付けられると思うよ?」
それ、乗った!
「ああ、そうだ。ギルドにカッシーラ伯の討伐依頼が出てるからまずは、ギルドに行って~その足で婚姻届出しに行かない?」
婚姻…やっぱりリュー君は本気なの?そう言えば…
「私と婚姻したい詳しい事情をまだ聞いてないけど…」
「ああっそうだった…え~と、実は俺、兄上と弟に……」
リュー君が急に険しい顔になって外を見ている。何かしら?誰かいるの?私も外に意識を向けた。こんな商店街から外れた路地裏に数十人の気配がする。こんな狭い路地で固まって何をしているのかな?
「ミランジェ…この家の周りに防御障壁を今すぐかけて、最大級に丈夫なやつ」
「は、はいぃ!」
怖い…きっと敵?みたいな人達なんだわ…よく分からないけど。急いで4重掛け障壁を家の周りに張った。
私が障壁を張った途端、複数の魔力を外に感じる。そして私の張った障壁に衝撃が当たる。痛くはないけど、かなりの攻撃魔法を当てているのが分かる。
やはりこの家の中に入ろうとしているのか…目を瞑り身を固くしていると、リュー君がふわりと抱き締めてくれた。落ち着いたリュー君の魔力が私の体を包む。
そうだ、一人じゃない。今はリュー君が一緒だ。
「すごいな、ミランジェの障壁…かなりの攻撃魔法をぶつけられているけど、このぼろい家がビクともしないな。」
「ちょっと、リュー君!何気に失礼よっ」
ホワッとした良い気分が台無しだ!
暫く攻撃は続いた。その間にも家の周りを何人もが歩き回り、あちこちから攻撃を加えられる。
「こんなボロ屋がなんで壊れないんだ?」
「本当にこんな空き家みたいな家にいるのか?」
「早くしろ、こんな街中で攻撃魔法を使っていたら、警邏に見つかる」
外の話し声が駄々洩れです…ええ、ええ、皆さまがおっしゃるボロ屋でございますからね…
ピーッと笛の音が聞こえた。警邏だ…そりゃそうか、商店街の外れとはいえ、こんな街中で炎の攻撃魔法を使ってたらね~。そりゃ警邏もすっ飛んで来るわ。
「マズい、今は退け!」
一瞬で外の魔質…侵入者は消えた。転移魔法か…。やがて、警邏の人達だろうか…こっちだ…とか、逃げたか?とかの声が聞こえてきた。リュー君は玄関口に音も無く移動すると、扉を開けた。
リュー君は外に出ると警邏の方と何か話をしている。私も恐る恐る扉に近づき、外を覗いて見た。
私が覗くと警邏のお兄様達は驚いたような顔をした。こんなボロ屋から突然現れてすみません…
「この通り妻もいるし、俺を狙って来ていると思うんだけどな…」
つ、妻!?あ、私の事か…
警邏のお兄様達は皆、神妙な顔つきで頷かれている。
「スカウザーの方ならさぞや危険なご依頼もあったでしょうね…」
「実は今から依頼があってカッシーラ辺境伯領に行こうと思っていたのですが、また賊が襲って来ては妻も危険だし、このまま彼女も連れて行こうと思っています」
「そうですね、その方が宜しいですね!この付近の見回りはしておきますので、ご安心を」
警邏のお兄様達とリュー君は何か話が纏まったらしく、警邏のお兄様達は笑顔で帰って行った。
さて…
「リュー君…」
「はい…」
お地蔵は石のように直立不動で立っていた。
「狙われてるの?」
「はい…」
「いつから?」
「ん…始まったのは7年…8年前かな?」
「そんなに前から!?原因は?」
リュー君の魔質が萎れた…ああ、これは地雷だったのか。でも聞かなきゃ始まらない。
リュー君の腕を取って店舗の奥の台所兼作業室に連れて行く。
リュー君の手は冷たくなっている。よほど心に堪えることがあるに違いない。椅子に座らせると、ミルクにバニラっぽい香りのする香辛料を入れて、温めてからカップに入れてリュー君に渡した。
「いい香りがするね」
「香辛料屋のおじさんにミルクに入れると美味しいよって教えてもらったの」
「そうか…」
リュー君は一口二口飲んでから、ゆっくりと話を聞かせてくれた。
「俺が成人して軍隊に入って暫くしてからかな…兄上、クリヒリトエンス王太子殿下が何者かに襲われたんだ。その後に弟…第三王子殿下のマリエンスが…また何者かに襲われた」
まあ…。そんな連続して襲われるなんて…
「そうしたら兄上も…マリエンスも2人してこう言ったんだ『リュージエンス王子殿下に襲われた』って…」
「えぇ?何それ?」
私がそう言うとリュー君は苦笑している。
「俺はあいつらが何を言っているのか分からないし、勿論俺は何もしていないし…未だにどうしてそう思い込んだのかが謎なんだけど、とにかく…2人共が俺に襲われたの一点張りだ。初めは反論して勿論、否定もしていたんだけど…。また2人が襲われた」
な…何事なの?どういうことなの?
「それで、また2人共が俺に襲われたと騒いで…軍の大元帥と閣下方が調査してくれたんだ…」
「で、どうだったの?」
リュー君はミルクをゴクゴク…と飲むと深く溜め息をついた。
「兄上はマリエンスの手の者に襲われていた。逆にマリエンスは兄上の手の者に襲われていた」
「リュー君を除いて2人でやり合いしていたってことなの?」
「そういうこと。俺さ…兄上ともマリエンスともそこそこ仲良くしているつもりだったんだ。兄上が行く行くは国王陛下になられて、俺は軍部で大元帥になって…影になって支えて~とか考えてたのに…俺って真っ先に2人に疑われちゃったんだ…って。正直…心が折れた」
ブアッと涙が浮かんできた。リュー君は泣いてないのに、私が泣いてどうするんだ!と、思ったけど自分の事のように悔しかった。こんなお地蔵様のような澄んだ清い魔質の持ち主のリュー君が、なんで人殺しの片棒を担がなきゃならんのよっ!いい加減にしろっ!クリマリめっ!
「それから何度も兄上もマリエンスも襲われ続けた。その度に俺に反撃と称した刺客を差し向けてきて…あいつらから放たれてくる刺客のせいで軍部の仕事にも影響が出てくるし…大元帥に休職の申請をしたんだ。大元帥とか閣下方に逃げるな、頑張れ…とか言われたけど、このままいったら軍部対王太子殿下との対立と騒ぎたてられて事が更に大事になるかもしれないから…と。半ば強引に軍から逃げ出して…今に至るっていう訳」
私はボロボロと泣いていた。リュー君が私を引き寄せると優しく抱き締めてくれた。
「ミランジェが泣いてどうするんだよ~」
「だって悔しいじゃない…何もしていないのに犯人扱いされて、疑われて狙われて…じゃあ、さっきの賊ってクリかマリ、どっちかの刺客なの?」
「クリマリ?あ…ああ、兄上とマリエンスか~うん、そうだと思うよ。ただ俺を襲ったとも限らないないんだよなぁ…」
「どうしてよ?」
リュー君は何か言い淀んでいる。
「実は…少し前にトキワステラーテ王国にスカウザーの依頼として呼び出されて行ったんだけど、そこでミランジェの護衛の依頼も受けて…それからミランジェの旦那にもなってくれって頼まれたんだ。そうすればトキワステラーテ王国が俺の後ろ盾になって、クリヒリトエンス王太子殿下もマリエンス王子殿下も手出しできないようになるよ…って。俺はそれに乗っかった。もしかしたらトキワステラーテ国王陛下は俺を手駒にして色々画策しているかもしれないけど、それでもいいや…と思った。もう疲れたんだ」
まだリュー君21才くらいよね?人生に疲れるなんて早い早いっ…これは私が助けてあげなくては!
「リュー君の身の安全は私が保障するわよ!どんと任せて!なんていっても私には復活の御手の力があるしね。あいつらが絶対入ってこれない障壁を張ってリュー君の快適な睡眠をお約束致しますよ!」
リュー君はヘニャと笑った。
「うん…本当にごめんね。ミランジェのこと…恐らく兄上とマリエンスにはバレてるだろうし…」
「私の事…?」
「うん、だからさっきの賊はミランジェを浚おうとしてたのかも~って。だってミランジェを手籠めにしちゃったら、トキワステラーテ王国が自動的に味方になってくれる…ってクリマリ?の2人は考えてるんじゃないかな~て、そうしたら案の定、この家に居る時に狙ってきたし。いや~怖いね。本当にミランジェを巻き込んじゃったなぁ」
いやあちょっと、おいおい?
襲われそうなリュー君を守ることは気合が入るからいいとしても、私が浚われて…今サラリと手籠めとか言ってなかった?それってクリマリに無理やり…てこと?
それでクリマリに、この画像をばら撒かれたくなかったら言う事を聞け!とか脅されて言い成りになるアレのこと?
じょおおおだんじゃないよぉぉ!私を誰だと思ってんだよっ!精神年齢38才+18才をなめんなよ!
「だぁれが大人しく、はいはいっ何て言う事を聞くと思ってるのよ!そんな刺客、落とし穴でも掘って落としといてやるわ!」
「はいはい…手籠めは言い過ぎだね!ごめんね、落ち着いて。あくまで俺がアイツらの立場ならミランジェを味方につけたいだろうな~と思うだけで、実際はミランジェのことは眼中に入ってないかもしれないし。ほら取り敢えず、ギルド行って公所に行こうよ」
リュー君はまた私を引き寄せて頭をポンポンと撫でてくれた。
結局手籠めじゃないにしても、リュー君と夫婦になることはもう決定みたいだし…
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