青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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夫と妻

いや、そもそものポテンシャルが違うしさ



……

………

気が付いた…。まだ夜中、だと思う。何故「目が覚めた」という表現を使わないかと言えば本日、二度目の失神だからだ。

寝落ちしちゃった☆とか爆睡しちゃった☆とかでは断じてない。

失神、気絶…昏倒ではないがとんでもない凶器でやられて昏倒したという表現でもあながち間違い…ではない。

「あ、気が付いた?」

何が、気が付いた?だよ!お前何様だよっ!…あ、王子様か…

「ん…ゲホッ…」

慌てて自身の口の中に水魔法をかけて口内を潤しながら、隣でニヤニヤしながら私を見ているリュー君を睨む。

「だから言っただろ~?」

「ゴホッ…何が?」

リュー君は私の頭を撫でながら、益々ニヤニヤする。

「カッシーラ伯の領地で俺、言っただろ?ミランジェは体力無いと色々困るからって…」

「色々…まさか、こういう事態を想定してあの発言をしていたの…?」

えぇ…嘘でしょう?そんな前からコレのこと考えていたの?このっエロ地蔵め!

「そもそもさ、気絶するまで…ってどう考えてもおかしくない?」

「ええ?だってこれぐらい普通だよ?夫婦になったら一番に問題になることじゃないか~世の中の夫が気を揉むことだよ?嫁の体力が無いとかさ。ミランジェの体力が無さ過ぎるんだよ~」

なんか胡散臭い…ホントかよ?そんなに私って体力無いの?まあ…確かに最近はマシだけど、前は50m走っただけでゼイゼイ言ってたしな…

「確かに人より体力無い気がするし…そうだよね、もっと頑張るわ」

「よしっミランジェの為だ!もっと頑張れ!」

そう言ってリュー君は私を抱き込んでくる。何だかやっぱりちょっと違う気がするけどさ…

……

………

…………

ん?三度目の失神…か?いや今度は爆睡だと思いたい。もう朝日が昇っているようで部屋の中が明るい。フト…隣を見ると地蔵ががっつり私を抱き締めたまま眠っていた。

美形だ。

眠っている大概の男子はよだれが顔に付着していたり、重力のせいで布団に横になっているだけで顔が潰れて不細工さが増すものだけど、寝姿も美しい男子って何事だ。

「いいな~」

「何がいいの?」

リュー君の目がゆっくりと開いていく。あれ?声に出して言ってたかな?

私は動こうとして、自分の体の不快感に気がついて洗浄魔法を私とリュー君に使った。ホホホ、日々魔術の本を見て独学ですが勉強中ですよ?

リュー君は神々しい笑顔を浮かべながら

「なあ?何がいいの?」

と再び聞いてきた。

「え?だってリュー君、横に寝転んでいても、格好イイ顔のままだもん。大抵の人は変な顔になるよ」

リュー君はちょっと眉根を寄せた。

「大抵の人って…男の寝顔…見たことあるの?」

ん?ちょっとリュー君の魔質が歪んでるよ?

「えっとね、勉強サボって中庭で昼寝していたデジバラとダンカレ…涎ダラダラ流していて、あれはダメ」

リュー君は魔質を元に戻した。そして苦笑しながら

「ダンカレもデジバラも可哀想に…」

と、言った。

「何言ってるの、ダンカレもデジバラも造形はいいのよ?私はお腹を出してボリボリおへそをかいているデジバラを見て、益々ダメだと思ったわ」

そんな所まで見られていたのか、デジバラ気の毒に…とリュー君が小声でデジバラに慰めの言葉をかけている。

その時

家の玄関口に人の魔力を感じた。人数は1人…だが良くない魔力の持ち主だ。

リュー君も気がついた。手早く服を着ると、寝台の中で体を起こした私の肩を撫でてから

「俺が見て来る」

と言って、素早く部屋を出て行った。私も体に回復魔法をかけてから、リュー君の後を追う。

リュー君は玄関先に佇んでいた。どうやら玄関先に居た良くない魔質の持ち主はもういないみたいだ。

リュー君が私を見た。

「ミランジェも視えるよな?これ…触りたくないんだけど…穢れてるよな?」

とリュー君が指差したのは、家の前に設置されている郵便受けだ。

うわ…郵便受けの周りをどす黒い魔質が覆っている。

「郵便受け穢れてるね…」

「やっぱり?」

私は郵便受けに浄化魔法を使った。郵便受けの穢れが消えた。

「あっ…穢れ消えた。流石ミランジェ~えっと…手紙だ。げぇ…」

リュー君は郵便受けを開けて中を見て顔をしかめている。どうしたんだろう?

リュー君は封書を見せてくれた。

「リュージエンス=ヴェシュ=サザウンテロス王子殿下宛てで…差出人は…ん?クラシス=ベイフィート?何で?」

「本当に何でだろうね…」

昨日の今日でクラシスがリュー君に何の用だろう?しかも先ほど良くない魔質の持ち主がこの手紙を持って来たと思われるし…

すると突然目の前に転移魔法の気配がし、

「ミランジェ!殿下!おはよぉ!」

と朝っぱらからハモリながらデジバラとダンカレの双子が姿を現した。

「……朝から何?」

私がそう聞くとダンカレがさっさと家の中に入って行くと、勝手に奥の作業室兼居間に入って行った。

「明後日からサザウンテロス帝国に行くだろ~?俺達リュージエンス殿下とミランジェの護衛をするんだよ」

「そうそう、だから護衛はずっと側についてなきゃね!と、言う訳で~お腹空いたぁ朝ごはん!」

デジバラもそう言いながら勝手に室内に入って行く。

「早く朝ごはん頂戴!お腹空いて死にそうだ!」

またハモリやがった双子を睨みつつ、私も室内に入った。後ろでリュー君が

「お腹が膨れたら大人しくなるから…」

と子持ちのお母さんみたいな台詞を吐いていた。わあーってるよっ!あいつらは食い物あげときゃ静かなんだよ。

という訳で急いで朝食を作る。

作り置いていたトマトシチューを再度温め直し…それとクロワッサン、ついでにパンケーキも焼いておく。そしてジャガイモを千切りにして潰し固めて、ハッシュドポテトを作って揚げるとそれと先日キューインス閣下にあげた唐揚げと一緒に盛りつけて出した。

朝から揚げ物で胃もたれしてしまえぇ!

…結果

双子達に全部食べつくされてしまった。あの子達まだ17才だもんね。胃も若かった…。

しかしパンケーキ焼いていてよかった。たっぷりシロップをかけて美味しく頂き、食後に温かいココアを飲んで気持ちを静める。

リュー君は黒茶を飲みながら双子達と例の手紙を見て首を捻っている。

「殿下、開けちゃえば?」

「そうしようか?」

「ミランジェが浄化してくれたんでしょ?もう悪いの無いなら見ちゃえば?」

リュー君と双子はえいっ!とか言いながら手紙を開けて3人で覗き込んで見ている。ええ?いきなり皆で見るの?

「うわ~!」

「これ罠だ!」

「リュージ殿下がクラシス陛下に…狙われてるの?これ?」

「ひえっ…よせよダンカレ!想像したっ!」

「デジバラだってそう思うから罠だって言ったんだろ?」

私も手紙を覗き込んでいる3人に近づいた。

「狙う?何が…」

リュー君はその手紙を指で摘まむと私の方に嫌そうに投げてよこした。すごく雑な扱いだ…

私はそのリュー君宛てのクラシスからの手紙を読んだ。

『リュージエンス=ヴェシュ=サザウンテロス王子殿下

先日は我が国の近衛が大変に無礼な行いをし、申し訳なく思っています。つきましてはリュージエンス殿下とお会いして直接謝罪をし、友好を深めたいと思います。王宮の私室にてお待ちしておりますので必ず御1人でお越し下さい。  
                       クラシス=ベイフィート』

「変な手紙。謝罪って何?あの近衛に怪我させられたの私だよ?」

私がそう言ってリュー君を見るとリュー君は眉間に皺を寄せていた。

「だよな~。それを何で俺にだけ謝罪するんだよな?」

ダンカレとデジバラは体を摩っている。何か色々と想像しているようだ。

「この1人で来い…が罠っぽい!」

「友好を深めたいだってぇ~きんも~!」

リュー君は少し考えていたが、よしっと手を打つと

「ダンカレ、伝令を。タウメントス隊長とナフテラージャ王女殿下に、コレについてご相談したいと。デジバラはキューインス閣下とガンバレス大尉に伝令を、同じご相談を…俺達もすぐに登城しよう。」

ぐるりと私達を見回しながらそう言った。

ダンカレとデジバラはすぐ立ち上がって

「御意!楽しみだぁ!」

と叫んでから転移魔法で消えた。私も立ち上がりかけて、リュー君に手を引かれた。何?

「ミランジェは留守番で、と言いたいところだけど…行くよね?」

「何言っているのよ?勿論行くわよ当然でしょ?クラシスはキューッと握り潰してやらなきゃ気が済まないわっ!」

リュー君が、握りつぶす…と言って渋い顔になったけど、私はそれには構わず台所を片付けて急いで出かける準備をした。

今回はリュー君と2人でベイフィートの城門から堂々と登城した。門番も顔パスだ。

暫く歩くと、マジアリート様とお父様のボレンティ公爵が急ぎ足でこちらに向かって来る。

「カッシーラ伯もお待ちです、こちらへ」

案内された先には、カッシーラ伯とキューインス閣下とガンバレス大尉、そして今回の審議に集まった術師の方が皆様いる。

そしてリュー君と皆で綿密な打ち合わせが始まった。


□■ ■ ■ ■ □ ■ ■ ■ ■


リュー君は廊下をゆっくりと歩いている。すると…一人のメイドが近づいて来た。

「お待ち致しておりました、ご案内します」

はは~ん、来たな…と私は透過魔法の中で双子達とにんまりと微笑みあった。

解説しよう。

私は今、透過魔法…姿を隠す魔法を使い、デジバラとダンカレと3人で障壁の中に入ってリュー君の後を付けている。

因みに

私達の他のキューインス閣下率いるサザウンテクロス軍部チームとナフィ姉様率いるトキワステラーテ王国チーム、それとカッシーラ伯率いるカッシーラ領チームに分かれてリュー君の後をつけている。

姿は見えないけれど、大人数でゴソゴソと移動中だ。

「どこに行くのかな?」

「王宮の私室の方じゃない?」

ダンカレとデジバラのおしゃべりを聞きつつ…コソコソとリュー君とメイドの後を追う。

1人で王宮内を歩いていれば、向こうから寄ってくるさ。

という、ダーシュお義兄様の言葉に従ってウロウロしていたリュー君の元にメイドが近づいて来た。

そう…クラシスの呼び出しに1人でやってきた…と見せかけて、皆で覗いてやろうぜ!作戦だった。

取り敢えず、リュー君1人というのが罠だ!危険だ!と皆様が仰ったので、じゃあどうやって護衛しましょうか?となり…この魔法を使うことにしたのだが、今の所、障壁内に居る私達は誰にも気付かれていない。

すると王宮の奥に向かうリュー君とメイドは一つの部屋の前で立ち止まった。

「こちらで御座います」

メイドが開けた扉の中に入りながらリュー君はこちらを見てニヤッと笑っている。

「よし、部屋に魔術結界は無いな…部屋の中へ転移だ」

ダンカレに手を掴まれた瞬間、もう部屋の中に転移していた。双子も結構優秀なのね…涎ダラダラでおへそボリボリ掻いていたけど…。

周りの魔力の気配を探ると、ナフィ姉様やキューインス閣下の魔力も感じる。皆、居るね。

「おい…見ろよ。あのおばさんだぜ」

とデジバラが言うので視線を上げるとその室内には…クラシスではなくプリエレアンナ様が1人で居た。

どういうこと?

    
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