異世界で小料理屋の女将始めます!

浦 かすみ

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時を渡る女将

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「どうやらこの魔輝石に界渡りの術式が組み込まれている訳じゃないみたいだね」

何だか分からないけど、そうなんだ…とスワ君に取り敢えず相槌を打っておいた。

それはそれで置いておいて…やっぱり怖いよ、早くなんとかして欲しい…と意味もなく天に向かってお祈りをしてみる。

天国にいる、お父さーーん助けてー!……よく考えたら勝手に守護霊扱いにしてしまったが、既に他界している前世の父は恐竜時代まで出張?して来れないかも…ゴメンよお父さん。

取り敢えず私達は高い木の上に避難している。ソッ…と下を覗くと地上でワチャワチャしている、色んな種類の恐竜達が見えるのだけど、木には登ってこれないみたい。でも翼竜っていうんだっけ?アレには空中から狙われてる気がするんだけど…

スワ君はさっきから蔦?つまりは〇ーザンがぶら下がってジャングルを移動しているあの植物ね、アレを器用に編み込んでロープを作っている。もしかして〇ーザンごっこでもするつもりなの?

ア~アアア!あのチンパンジー名前、何だったっけ?

あ、因みにジャングルは日が落ちて真っ暗になっちゃったので、灯りは月明りとスワ君の魔法で間接照明みたいなのが頭上で輝いているだけです。

そう言えば、日が落ちると…地上にいる恐竜は少し数が減ったみたい。翼竜もいなくなった。もしかしたら夜行性とかそういう習性とかあるのかもしれない。

今更だけど、私って…魔法も体力的にもスワ君の強烈な足手まといだね。今の所、叫んでいるだけしかしてませんわ…

「出来た!」

何が出来たのだろう…スワ君が掲げ持っているのはどう見ても蔦で出来たロープなんだけど…

「本当はラジーの前で手荒なことはしたくないんだけど~いつまでもこんな木の上にいる訳にいかないし…ねえ、ラジー?本当にこの魔獣達、殺しちゃダメなのか?」

私は先程スワ君に言ったことを、もう一度説明した。

「ここは異界の過去の世界…だと思うのよ。つまりスワ君が恐竜達を滅多殺しにしちゃったら、生態系がおかしくなって、地球に隕石がぶつかって氷河期が来るまでに恐竜が絶滅しちゃうじゃない!歴史が変っちゃうでしょ?絶対ダメだよ!」

スワ君は口を尖らせた。

「ちぇ…何だか分からないけど、殺しちゃ駄目ならこうするしかないよね」

スワ君は空中に手をかざした。すると…空中からゴロン…とヒコルデラ皇太子殿下が転がり落ちてきた。スワ君は手早くヒコルデラ皇太子の体に蔦のロープを括りつけた。

益々何をするつもりなのか分からない…

スワ君はロープをクイクイと引っ張りながら、ヒコルデラ皇太子の顔を覗き込んだ。

「ヒコルデラ皇太子素直に答えてくれ。異界へ渡る術式を知っているのか?」

ヒコルデラ皇太子はスワ君を睨みつけた。スワ君はニヤ~ッと笑ってから、思いっ切りヒコルデラ皇太子を蹴り上げた!?

「ぎゃあああ!」

ヒコルデラ皇太子は叫び声をあげながら空中に飛び出すと、すごい勢いで落下していった。あああ!?皇太子の落下地点には、口を開けた恐竜達が待ち構えている!

後、数メートルという所で皇太子は恐竜の餌に!?

その時、ビョーーーンと蔦のロープがスワ君に引っ張られて、ヒコルデラ皇太子は綺麗な放物線を描いてドサッと木の上に舞い戻って来た。

スワ君は皇太子に括りつけている蔦ロープをクイクイと引っ張った。

「ほら、もう言えるでしょう?」

ス……スワ君は私の知らない間に、鬼畜君になっていた……

ヒコルデラ皇太子殿下は涙目になりながら

『腰の袋に術式の魔方陣が入っている』

と、ヒコルデラ皇太子の母国語のブリンガ語で答えた。腰の……怪しげなちょっぴり小汚い袋、あれだろうか?

スワ君は、またニッコリ笑ってからブリンガ語で

『因みに皇太子にはまたさっきの亜空間に戻ってもらうけど、もし俺が死んだら一生あの空間から出れなくなるからね?それはよくよく考えておいてよ?』

と言うと、ヒコルデラ皇太子はヒイッ!と叫んでから

『何も…何もしないからっあの空間だけはぁ…!』

と縛られたまま逃げようともがいたけど、スワ君がヒコルデラ皇太子に馬乗りになり、ちょっぴり小汚い袋を毟り取った。

『それはっ大切にしてくれ!遺跡から発掘してきた古代魔道具なんだ!』

「まあ…」

「へぇ~魔道具ね」

スワ君はその小汚い袋の中に何のためらいも無く、手を突っ込んだ。ぎゃあ!…と思ったけど、スワ君は突っ込んだまま首を捻っている。

『すごい魔流の流れを感じるんだけど、袋の中には何も入って無いな…何、この袋?』

『モチ…という名の魔道具だ。物を収納出来る。固形物なら何でも収納出来る。魔法陣も中に入っている』

ヒコルデラ皇太子の説明に思わず、ほぉ~と声が出てしまう。魔道具か~魔法でそんな収納袋が作れるんだ…スワ君はうんうんと頷きながら、袋から手を引き抜いた。あ、手に何か紙を持ってる。

「これが魔法陣か…へぇ…なるほど」

横からスワ君の持っている魔法陣の紙を覗き見てみたが、何がなるほど!なのか全く分からない。ほらさ~魔術の勉強は王太子妃の勉強に関係ないから!

分からないことへの言い訳だけは、年々上手くなる…

その時、ヒコルデラ皇太子は急に立ち上がると、スワ君の方に突っ込んできた。

「…っ!何!?」

スワ君は魔法陣の解読に集中していたようで油断していたのか、飛びつかれてよろめいている。ヒコルデラ皇太子はスワ君の手に噛みつき、スワ君の手から強引に魔法陣の紙を奪って口でくわえた。

ヒコルデラ皇太子は口に銜えたままニヤリと笑っている。その時、術式が発動した。

『*△◆…□!』

「それはっ…!貴様っ…」

スワ君がヒコルデラ皇太子に向かって叫んだのと同時に……ヒコルデラ皇太子は消えた。

「…っ!」

スワ君と私は衝撃で固まっていた。消えた?消えたよね…え?まさかヒコルデラ皇太子…

「無事に…移動出来るはずはない…」

スワ君の呟きにハッとしてヒコルデラ皇太子の消えた辺りを見た。

「ヒコルデラ皇太子…移動、界渡りをしちゃったの?」

「ああ…だが術式を唱えても彼の魔力量なら無理だろう…俺が魔輝石持ってるし…」

「あ…」

そうか…界渡りなどは魔力量が無いと出来ない…イメージがある。魔術に詳しくない私でも、簡単に発動する魔法と、魔力量等…条件が揃わないと発動しない魔法があることぐらいは知っている。

ホーホッホホ…何だろうか?遠吠え?恐竜の時代に梟なんて可愛い鳥類はいないし…夜行性の恐竜の鳴き声かもしれない。

恐竜?嘘…でしょう?

「恐竜時代に置いていかれちゃったんじゃない!?」

じゃなーいじゃなーーーい…とジャングルに私の雄叫びが響いています。叫んだ後、グルキュキュ~~…と盛大にお腹が空腹を訴えている音が聞こえました。

「……」

月明りとスワ君の魔法の灯り…その淡い光の下でスワ君の表情は焦ってないように見える。何か考え込んでいるみたいだ…。

「ラジー」

「なんでございましょうか!」

怖いのと若干パニックになりかけているので、前のめり気味にスワ君に返事を返した。

「俺の失態だが、逃げたヒコルデラ皇太子を追いかけなきゃいけない」

「はいっ!」

「ヒコルデラ皇太子には追尾魔法をつけているので、どこに逃げようが見つけることが出来る」

「はい…」

「ここで待っててもらうのと、追尾と捕獲に一緒に来るのとどっちがいい?」

「一緒に行きます!」

即答した。こんな木の上で一晩中いるのは無理無理!万が一にも木が折れたりしたら、地上に真っ逆さま…恐竜の餌になっちゃうじゃない。

完全なる足手まといだけど、ここでひもじくボッチで待っているより、スワ君と行動を共にしておいたほうがいいに決まっている。

「そうか、うん。じゃあ行こうか…と言っても、ヒコルデラ皇太子の魔力量じゃそんな遠くまで飛べないだろうしな~うん…ああ、いたね」

すぐ見つかるものなんだ。ん?追いかけるって行ったけど…

「スワ君…ちょっと待ってよ。追いかけるってどこに追いかけるの?」

スワ君はキョトンとした顔を私に向けてきた。

「どこかは…いってみないことには場所は分からないけど、多分異世界のどこか?」

スワ君に聞き返そうとした時には、視界が暗転して体がグルンと回転したみたいな感覚になった。

さぁ……

「さむーーいい!寒い寒い…!?何何?」

スワ君が慌てて私達の周りに障壁を張ってくれた…ここは?辺りを見回した。ここは…繁華街だ。キョロキョロと辺りを見る。恐らく先程まで居た、異世界の現代日本…だと思われる。街灯の大きなテレビに現在時刻が表紙されている。

深夜1時40分…これほど人影がまばらなのも夜中だからか。車も数台が遠くの方を走っているのが見える程度だ。

「ここは先程、渡って来た場所…だな?人影がほとんどいないな」

「はい、夜中ですので店は閉まっていますし、人もいないと思われます」

「そうか…うん、あの術式では一度通った異界の路しか通れないのだな…」

どういう意味なんだろうか?ジッとスワ君の顔を見ていると、スワ君は、それはね…と説明をしてくれた。

「ヒコルデラ皇太子が持っていた界渡りの術式には、見たもの、記憶にある所にしか飛べない…という制約がついていた。普通の転移魔法も一緒なんだが、未開で未知の土地、時代、場所には飛べない。記憶の媒体が必要なんだ。つまり、この世界に飛べたのもラジーの記憶を見たからで…先程の魔獣の屯う所も恐らく、記憶やそれに関する知識が頭に明確にあった人物の記憶を見たから飛べたんだ。だからヒコルデラ皇太子が飛べる範囲はこの場所と、先程の魔獣の場所と我々が居た元の世界…だけということになる」

うんうん、そうか、あれでもまって?

「でも…ヒコルデラ皇太子が記憶を探る魔法を使えばもっといける場所が広がるんじゃ?」

スワ君は少し笑っている。

「そうだな、この世界で記憶誘導魔法をかけ続けて…その中で飛べそうな場所を選ぶのには魔力も時間もかかるな。それこそ…あの警邏の方々にショクシツ?というので捕まってしまうのでないかな?」

「ああ~そうか。記憶を見る為に沢山の人の居る場所に行かないといけないものね。そうすれば必然的に騒ぎになって警察官に見つかる確率も上がるね…」

スワ君は笑顔から表情を引き締めた。

「早く、ヒコルデラ皇太子を捜そう。自棄になって町中で暴れたりこの世界の人々を傷付けるかもしれない」

そうだ…それがあるんだった!銀髪の変質者どこだー!

「あっちだ!」

スワ君にまた姫抱っこをされて私は深夜の繁華街から、郊外へと飛んで行ったのだった。

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