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第2章表 闇
同郷
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諏訪領。岡谷と呼ばれる諏訪領の北部に到着する。意外と近い距離にあるものだ。
「ここで何かするの?」
「情報を集めるだけだ。松本でもそれなりの情報は集まったが、そこで得られる情報には限りがる」
「仁が何の旅をしているかはわからないけど、行動範囲だけ見てもすごいことしてると思うよ。蛟とも戦っちゃうし」
「あれは成り行きみたいなものだ」
「成り行きなんかで蛟と戦わないけど」
最強と聞いて、実力のほどを確かめて起きたかっただけだったんだがな。妖が絶滅種というのはよくわかる。あれで最強格か。普通の村1つを破壊する程度はあるが、町と同等の実力だろう。松本の戦力があれば十分に止められる程度だった。
だが、あの4人組は相当な実力があった。女侍に至っては俺と同等近くの力を持っていた。あの4人、いや、塩尻にいた者も含めてあの5人は相当異質だった。柊の村の実力者並であった。
「考え事?」
「ん?ああ、ちょっとな」
「考え事もいいけど、もう着いたよ」
「そうだな」
もう太陽は上がりきっている時間帯だ。戦闘で朝から泥だらけの俺たちは一泊する宿を確保し、朝風呂を浴びさせてもらった。
「早いな」
「温泉じゃないからあまり入る気がしなかった」
「贅沢だな」
「温泉に慣れてるからね」
柊の村には温泉があり、松本領にも温泉が引かれていたが、こっちにはないようだ。
「このあとどうするの?」
「とりあえず、諏訪に向かう前に岡谷を回ろう」
岡谷で昼食前に商人や気さくな浪人に世間話と洒落込むことにした。まずは岡谷でそこそこ大きい服屋に入る。
「なあ、この辺で最近変な騒ぎがあったと思うんだが」
「騒ぎ?」
「ああ」
「山賊が出たって話か?」
うん?
山賊?
蛟が出た話はこっちには伝わっていないのか。話の切り出しが予想以上に変な方向に飛んだものだ。
「山賊の話か、なんだったか二槍武人だったっけか?」
「そうそう、どうも山陽から来た山賊らしくてな、松本さんが探し回っているとか。そのせいで諏訪も戦力割いてるらしいな」
「そこまでするほどの相手なのか?」
「そりゃそうだろ。二槍武人といえば山陽じゃ一番強い人間と言っても差し支えないほどのやつだ」
一番強い人間ね。
「上泉様以外じゃあいつに勝てたやつはいないからな」
「上泉様が!?」
え?
まさかの柊の反応。知り合いか?
「知り合いか?」
「いや、兄ちゃん上泉様を知らないのかよ…」
「知らん。俺は世間とは程遠い地域に住んでいた」
「…上泉様ってのは上野にある前橋さんところに仕えている稀代の剣聖よ」
「剣聖か」
随分と大層な称号だこと、天下に轟く名前ということだろう。
「そして私たち、封山村の師範です」
「そうなのか、知らなかった」
柊たちの村は封山村というのか。
俺は柊の言葉にある意味で納得がいった。あの村は陽毬が生贄にされる封印が施されたバケモノがいる場所。そんな重要地区を守護するゆえに、剣聖を派遣して村の人間を強化して、部隊を派遣するよりも、その地にいる人間を活用しているといったところか。
「本当に上泉様を知らないとはな、それは世間知らずか陸奥の国の者だろう。兄ちゃんは前者だな」
「わからんぞ。俺が知らないだけで、俺自身が陸奥の国の人間かもしれん」
「その可能性はあるな。だが、兄ちゃん陸奥の人間はそんなに人間染みてないぞ」
「そうか?」
「ああ、奴らがここ岡谷で暮らせばネジが外れた危ないやつといって煙たがれるだろうよ」
陸奥国とは一体どんな場所だよ。むしろ変な興味が湧く。
「陸奥国というのは危険な思想が溢れかえっていると?」
「ああ、奴らは畏れも信仰する。邪神すら信仰対象になる。邪神だけを信仰しているわけではないらしいがな。ある意味で強者には従う弱肉強食の国よ」
結構有益な情報が得られた。
「よし、兄ちゃんの採寸は終わったぞ」
「こちらも終わりました」
「全部で銀判2枚だ」
俺は支払いを済ませ、羽織と袴を受け取る。柊も隣で受け取っていた。俺たちは店を後にした。店を出ると柊が俺を眺めていた。
「仁はあまり似合いませんね」
「何が?」
「仁は最初の格好が似合っていたと思います」
「とはいってもあれは俺の地元のものだからなあ、ここらでは売ってない」
「そうなんだ。あれ、動きやすそうに見えたけど」
「どうだろうな。今来ているのと大差はないと思うけど」
「そう」
柊はまた口を閉ざしてしまった。
「………」
「………聞きたいことがあるなら聞いていいぞ」
「本当!?」
口は災いの元だったかもしれない。だが、嘘は言わない範囲でどうにかごまかしておこう。
「仁の本名とかも変だったし、けど仁は日本人の顔だし、一体どこ出身なの?」
「俺の出身地か、よくわからない。ただ言えるのは田舎であったのは確かだ。地元は神奈川と呼ばれていた」
「どこ?」
「どこだろうな。正確な方角はわからん」
「帰れるの?」
「今のところ帰る気はないし、帰りたくなったら頑張って帰るさ。…帰れるかは知らないけど」
相模とか武蔵といえば柊もわかるだろう。この地に当てはめるなら相模になるのだろうが、俺の地元は神奈川である。確か神奈川の地名は横浜の方が由来だったはずだが、嘘はいっていないからセーフだな。…うん。
もし異世界から来たという事情を話せば、芋づる式に俺の目的も話すことになるだろう。そうすれば、柊の村、封山村が守ってきた封魔を解き放つことになる原因になる。俺はこの世界にとっては最悪の敵だろう。事情を話せば柊は俺に剣を向けるだろう。俺はいったい何をしているのだろうな。敵対することになる柊を弟子に迎えたりして…。
「仁?」
「ん、ちょっと考え事だ」
「仁はなんで旅してるの?」
「………」
なんでか、なんでだろうな。ただ、あいつの涙に心臓を締めつけられたようだった。
ただそれだけだ。
「大事なものを取られたんだ」
「泥棒?」
「まあ、そんなところだ。そいつの居場所もわかっている」
「界門の話聞いているってことは京ってこと?」
「今のところはな。だが、京には界門が多くあるからな。違う場所に飛ばれたら終わりだが、まだ京にいるはずだ」
「へー」
まだ他にも聞いておきたいことがある。もう少し岡谷を見て回っておくか。
「お、さっきぶりだな」
「あんたは…」
背後から声をかけられ、振り返ると蛟のときに共闘した女侍がいた。
「おお、兄ちゃん。あのときは助かったぜ」
「随分と早かったな」
肩を怪我していた一行の仲間も加わっていた。
「あの後俺も峠の方に向かっていたからな。合流は早くできた。治療でちょっと時間を食ったがな。兄ちゃんのおかげで助かったぜ。蛟相手にみんあ無事———」
「ちょっといい?」
おっさんがこれから話が盛り上げそうというタイミングで女侍が遮る。興奮冷めやらぬまま止められ、喋り足りないのか少し大げさな態度で横にフェードアウトしていく。
女侍が横を通り抜け様にこっちへこいと、2人きりで話したいということらしい。
「待っててくれるか」
「むぅ」
「別にむくれんでいいから」
俺は柊を残して女侍と町の通りから少し外れた小道に連れられる。諏訪湖のほとりに腰掛けろとのことだ。少し距離を置いて隣に座ると、すぐさま指をさした。
「その靴、どこで買ったの?」
女侍の眼光はとても鋭いものだった。
「外国から仕入れたんじゃねえか?」
メーカーの物だし、メイドインジャパンじゃないだろうなあ。
冗談はさておき、どうやら俺の想像を通り超えた人物だったらしい。
「日本人ね」
「顔からして日本人だろうに」
「やめて、私の言いたいことはわかるでしょう?」
「わかりたくもないのだが」
「可愛らしい顔して面倒な性格しているわね」
「この顔が可愛いと思うなら眼科に行ったほうがいいぞ」
「この世界に眼科なんてないのだけど?」
尻尾を出したわねとでも言いたげだった。だが、半ば確信しているこの女性に、ずっと話をそらし続けるのは意味がないだろう。俺はすばやく白旗を上げた。そしてそれにツッコミをいれるということは同じ穴の狢ということになる。
「向こうの世界出身なのか」
「ええ」
「同郷の者がいるなんて思わなかった」
「私は…、もしかしたらって可能性を考えていたけど…」
「言いづらそうだな」
「そうね」
女侍は足元にある石を湖に投げ入れた。特に意味のない行為だが、彼女の表情は固まっていた。
「私もたぶん間接的に関わっているから」
2分くらい黙っていた口が開いた。どういう意味だろうか。自然と手に持った石に力が入る。
「あなたの目的は何かしら?」
「教えるとでも?」
「恋人でも攫われた?」
「っ!………どういうことだ?」
激情に包まれそうな感情を押さえ込んで聞き返す。
「私も攫われて、生贄にされる予定だったといえばいいのかな?」
その表情は物憂い。
「…何年前に攫われたんだ?」
「10年くらい前かな。私は逃げ出して生贄にならず、そのとき封印を強化できなかったから、彼らも焦っているのでしょうね」
「………そうか」
「あなたの邪魔はしないから、1つ聞いていい?」
「なんだ?」
「あなたどうしてあんなに強いの?」
「名前を神からもらった」
「神から」
「ああ、今の名は須之仁、仁と呼んでくれ」
「仁ね。私は夕実。10年前に神隠しにあった向こうの世界の者よ」
手を差し出される。
「…」
「握手は嫌?外国の文化のないこっちじゃ珍しいけどね」
「向こうでも握手なんてそうそうしないぞ」
「そうだったかしら、小学生だったから覚えていないわ」
俺はその手を握ることはなかった。
「ここで何かするの?」
「情報を集めるだけだ。松本でもそれなりの情報は集まったが、そこで得られる情報には限りがる」
「仁が何の旅をしているかはわからないけど、行動範囲だけ見てもすごいことしてると思うよ。蛟とも戦っちゃうし」
「あれは成り行きみたいなものだ」
「成り行きなんかで蛟と戦わないけど」
最強と聞いて、実力のほどを確かめて起きたかっただけだったんだがな。妖が絶滅種というのはよくわかる。あれで最強格か。普通の村1つを破壊する程度はあるが、町と同等の実力だろう。松本の戦力があれば十分に止められる程度だった。
だが、あの4人組は相当な実力があった。女侍に至っては俺と同等近くの力を持っていた。あの4人、いや、塩尻にいた者も含めてあの5人は相当異質だった。柊の村の実力者並であった。
「考え事?」
「ん?ああ、ちょっとな」
「考え事もいいけど、もう着いたよ」
「そうだな」
もう太陽は上がりきっている時間帯だ。戦闘で朝から泥だらけの俺たちは一泊する宿を確保し、朝風呂を浴びさせてもらった。
「早いな」
「温泉じゃないからあまり入る気がしなかった」
「贅沢だな」
「温泉に慣れてるからね」
柊の村には温泉があり、松本領にも温泉が引かれていたが、こっちにはないようだ。
「このあとどうするの?」
「とりあえず、諏訪に向かう前に岡谷を回ろう」
岡谷で昼食前に商人や気さくな浪人に世間話と洒落込むことにした。まずは岡谷でそこそこ大きい服屋に入る。
「なあ、この辺で最近変な騒ぎがあったと思うんだが」
「騒ぎ?」
「ああ」
「山賊が出たって話か?」
うん?
山賊?
蛟が出た話はこっちには伝わっていないのか。話の切り出しが予想以上に変な方向に飛んだものだ。
「山賊の話か、なんだったか二槍武人だったっけか?」
「そうそう、どうも山陽から来た山賊らしくてな、松本さんが探し回っているとか。そのせいで諏訪も戦力割いてるらしいな」
「そこまでするほどの相手なのか?」
「そりゃそうだろ。二槍武人といえば山陽じゃ一番強い人間と言っても差し支えないほどのやつだ」
一番強い人間ね。
「上泉様以外じゃあいつに勝てたやつはいないからな」
「上泉様が!?」
え?
まさかの柊の反応。知り合いか?
「知り合いか?」
「いや、兄ちゃん上泉様を知らないのかよ…」
「知らん。俺は世間とは程遠い地域に住んでいた」
「…上泉様ってのは上野にある前橋さんところに仕えている稀代の剣聖よ」
「剣聖か」
随分と大層な称号だこと、天下に轟く名前ということだろう。
「そして私たち、封山村の師範です」
「そうなのか、知らなかった」
柊たちの村は封山村というのか。
俺は柊の言葉にある意味で納得がいった。あの村は陽毬が生贄にされる封印が施されたバケモノがいる場所。そんな重要地区を守護するゆえに、剣聖を派遣して村の人間を強化して、部隊を派遣するよりも、その地にいる人間を活用しているといったところか。
「本当に上泉様を知らないとはな、それは世間知らずか陸奥の国の者だろう。兄ちゃんは前者だな」
「わからんぞ。俺が知らないだけで、俺自身が陸奥の国の人間かもしれん」
「その可能性はあるな。だが、兄ちゃん陸奥の人間はそんなに人間染みてないぞ」
「そうか?」
「ああ、奴らがここ岡谷で暮らせばネジが外れた危ないやつといって煙たがれるだろうよ」
陸奥国とは一体どんな場所だよ。むしろ変な興味が湧く。
「陸奥国というのは危険な思想が溢れかえっていると?」
「ああ、奴らは畏れも信仰する。邪神すら信仰対象になる。邪神だけを信仰しているわけではないらしいがな。ある意味で強者には従う弱肉強食の国よ」
結構有益な情報が得られた。
「よし、兄ちゃんの採寸は終わったぞ」
「こちらも終わりました」
「全部で銀判2枚だ」
俺は支払いを済ませ、羽織と袴を受け取る。柊も隣で受け取っていた。俺たちは店を後にした。店を出ると柊が俺を眺めていた。
「仁はあまり似合いませんね」
「何が?」
「仁は最初の格好が似合っていたと思います」
「とはいってもあれは俺の地元のものだからなあ、ここらでは売ってない」
「そうなんだ。あれ、動きやすそうに見えたけど」
「どうだろうな。今来ているのと大差はないと思うけど」
「そう」
柊はまた口を閉ざしてしまった。
「………」
「………聞きたいことがあるなら聞いていいぞ」
「本当!?」
口は災いの元だったかもしれない。だが、嘘は言わない範囲でどうにかごまかしておこう。
「仁の本名とかも変だったし、けど仁は日本人の顔だし、一体どこ出身なの?」
「俺の出身地か、よくわからない。ただ言えるのは田舎であったのは確かだ。地元は神奈川と呼ばれていた」
「どこ?」
「どこだろうな。正確な方角はわからん」
「帰れるの?」
「今のところ帰る気はないし、帰りたくなったら頑張って帰るさ。…帰れるかは知らないけど」
相模とか武蔵といえば柊もわかるだろう。この地に当てはめるなら相模になるのだろうが、俺の地元は神奈川である。確か神奈川の地名は横浜の方が由来だったはずだが、嘘はいっていないからセーフだな。…うん。
もし異世界から来たという事情を話せば、芋づる式に俺の目的も話すことになるだろう。そうすれば、柊の村、封山村が守ってきた封魔を解き放つことになる原因になる。俺はこの世界にとっては最悪の敵だろう。事情を話せば柊は俺に剣を向けるだろう。俺はいったい何をしているのだろうな。敵対することになる柊を弟子に迎えたりして…。
「仁?」
「ん、ちょっと考え事だ」
「仁はなんで旅してるの?」
「………」
なんでか、なんでだろうな。ただ、あいつの涙に心臓を締めつけられたようだった。
ただそれだけだ。
「大事なものを取られたんだ」
「泥棒?」
「まあ、そんなところだ。そいつの居場所もわかっている」
「界門の話聞いているってことは京ってこと?」
「今のところはな。だが、京には界門が多くあるからな。違う場所に飛ばれたら終わりだが、まだ京にいるはずだ」
「へー」
まだ他にも聞いておきたいことがある。もう少し岡谷を見て回っておくか。
「お、さっきぶりだな」
「あんたは…」
背後から声をかけられ、振り返ると蛟のときに共闘した女侍がいた。
「おお、兄ちゃん。あのときは助かったぜ」
「随分と早かったな」
肩を怪我していた一行の仲間も加わっていた。
「あの後俺も峠の方に向かっていたからな。合流は早くできた。治療でちょっと時間を食ったがな。兄ちゃんのおかげで助かったぜ。蛟相手にみんあ無事———」
「ちょっといい?」
おっさんがこれから話が盛り上げそうというタイミングで女侍が遮る。興奮冷めやらぬまま止められ、喋り足りないのか少し大げさな態度で横にフェードアウトしていく。
女侍が横を通り抜け様にこっちへこいと、2人きりで話したいということらしい。
「待っててくれるか」
「むぅ」
「別にむくれんでいいから」
俺は柊を残して女侍と町の通りから少し外れた小道に連れられる。諏訪湖のほとりに腰掛けろとのことだ。少し距離を置いて隣に座ると、すぐさま指をさした。
「その靴、どこで買ったの?」
女侍の眼光はとても鋭いものだった。
「外国から仕入れたんじゃねえか?」
メーカーの物だし、メイドインジャパンじゃないだろうなあ。
冗談はさておき、どうやら俺の想像を通り超えた人物だったらしい。
「日本人ね」
「顔からして日本人だろうに」
「やめて、私の言いたいことはわかるでしょう?」
「わかりたくもないのだが」
「可愛らしい顔して面倒な性格しているわね」
「この顔が可愛いと思うなら眼科に行ったほうがいいぞ」
「この世界に眼科なんてないのだけど?」
尻尾を出したわねとでも言いたげだった。だが、半ば確信しているこの女性に、ずっと話をそらし続けるのは意味がないだろう。俺はすばやく白旗を上げた。そしてそれにツッコミをいれるということは同じ穴の狢ということになる。
「向こうの世界出身なのか」
「ええ」
「同郷の者がいるなんて思わなかった」
「私は…、もしかしたらって可能性を考えていたけど…」
「言いづらそうだな」
「そうね」
女侍は足元にある石を湖に投げ入れた。特に意味のない行為だが、彼女の表情は固まっていた。
「私もたぶん間接的に関わっているから」
2分くらい黙っていた口が開いた。どういう意味だろうか。自然と手に持った石に力が入る。
「あなたの目的は何かしら?」
「教えるとでも?」
「恋人でも攫われた?」
「っ!………どういうことだ?」
激情に包まれそうな感情を押さえ込んで聞き返す。
「私も攫われて、生贄にされる予定だったといえばいいのかな?」
その表情は物憂い。
「…何年前に攫われたんだ?」
「10年くらい前かな。私は逃げ出して生贄にならず、そのとき封印を強化できなかったから、彼らも焦っているのでしょうね」
「………そうか」
「あなたの邪魔はしないから、1つ聞いていい?」
「なんだ?」
「あなたどうしてあんなに強いの?」
「名前を神からもらった」
「神から」
「ああ、今の名は須之仁、仁と呼んでくれ」
「仁ね。私は夕実。10年前に神隠しにあった向こうの世界の者よ」
手を差し出される。
「…」
「握手は嫌?外国の文化のないこっちじゃ珍しいけどね」
「向こうでも握手なんてそうそうしないぞ」
「そうだったかしら、小学生だったから覚えていないわ」
俺はその手を握ることはなかった。
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