不器用クッキング

神奈川雪枝

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今日も作るよ

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私は今日も作る。
毎日毎日なにか一つお菓子を作って、
君にプレゼントをする。

些細な出来事だ。

大学受験を控える君に
私ができることは、
少しの糖分を与えることだから。


「おっはよ。」

「……。」

部屋にはいれば、
君はまだベッドの中。

「おーい!朝だよっ!」

「……。」

布団をはがせば、
眩しそうに眼を細める君。

「 はよ。」

「うん、おはよう。」

「今日も悪いな。」

「いいよ、家となりだから。」

君は受験浪人。
予備校に通う毎日。

私はまだ高校2年生。
学校行く前に、一人暮らしの君に挨拶をする日課。

「はぁ~~~。ねむっ。」

「昨日は何時までしてたの?」

「3時。」

「毎日頑張るね。」

「うん。」

鞄から昨日の夜に作ったクッキーを取り出す。

「はい!今日はクッキー。」

「お、ありがとう。」

私のお菓子を朝食代わりに食べているいる君。

「なんのお菓子食べたいとかある?」

「なんでもいいよ。」

「作り甲斐ないなぁ。」

「だって、全部うまいもん。」


「私ね、きみが好き。」

「は?」

「卵の黄身だよ。」

「いきなりなに?」

「プリンにしようかな?カスタードサンドにしようかな?」

「俺、プリンがいいなぁ。」

「わかった。」


告白する勇気がない。
だから、愛情をお菓子にこめてつくるよ。

「私、学校いかないと。」

「おう、気を付けろよ。」

「じゃぁ、また明日ね。」

「じゃぁな。」

朝の数十分が、
なによりも幸せ。

もう少しこのままでいさせて、
なんてね。
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