終点ランデブー

先輩？

ガタンゴトンと、
規則正しく揺れる車内。


久しぶりに、
会社の飲み会があった。

私はお酒に弱い。
でも、大好きな先輩が転勤になる送別会だった。

寂しくて、
思わず飲んでしまった。

そしたら、
「俺もこの電車なんだよ。」と、
帰り道、
偶然にも二人きりになってしまった。

夜遅いので、
席に座れた。

「飲み過ぎじゃないのか？(笑)」と、
先輩は私の鼻を指で触る。

「だって、淋しいですもん。」と、
私は泣く真似をした。

隣同士に座って、
先輩の体温を感じながら、
私は規則正しい揺れに体を預け過ぎたようだ。

気が付いたら、
瞼は降りていて、
「おーい。」と先輩の呼ぶ声で目が覚めた。

「え？」

「お前、寝すぎだよ(笑)
　終点までついちゃう。」

「うそ？！」

がばっと起き上がるとそこは見たこともない駅を通過していた。
というか、今までかなりぐいぐい先輩に寄りかかっていたらしかった。

「はっ！先輩、すいませんっ。」

「いいよ。
　面白いから(笑)」

先輩もほろ酔いなのか、
笑って許してくれた。

「でももう、電車ないかもな。」
先輩がそうぽつりとつぶやく。

「え、どうしましょう？」

「　一緒に、泊まる？」

「え？」

「冗談だよ、タクシーで帰るか。」

「いいですよ、泊まって、も。」

「え？」

先輩の手を握った。
先輩の顔がうっすらと赤くなる。

「お前、ほんとに？」

こくりと頷く。

「次は終点、終点……。」

車内アナウンスが遠くに聞こえるほど、
胸の鼓動が高鳴っていた。