完璧な彼女

神奈川雪枝

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綺麗な星の光を彼女を受けて立っていた。

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無数に光り輝く星たち。

彼女はプラネタリウムで案内人をしていた。

彼女を見たら誰しもがとても綺麗な人ねと話す容姿をしていた。

俺は知っている。

彼女の過去を知っている。


「おまたせ。」

夜23時、
待ち合わせのバーに彼女はやってきた。

「おつかれ。」

今日も綺麗な顔をしていた。

「私、何のもうかな?」

彼女はご機嫌のようだった。


1時間くらい談笑し終わったころだろうか。

「私、最近夢を見るんです。」

「夢?」

「寝てると息苦しくなって、
 ばって目をあけると、
 黒い髪の長い女が私の上にのっていて、
 私の首に手をかけてるんです。」

「怖いね。」

「なんか寝つきが悪くて。」


そんな彼女をホテルへと連れて行った。

シャワールームから、
彼女の鼻歌がかすかに聞こえる。

(夢か。)

彼女は昔とは180度変わった。

今の彼女は茶髪のゆるふわぱーまをしている。

「斎藤さん。」

彼女はバスローブを身にまとい、
俺を後ろから抱きしめた。

「最近、私と会ってくれなくて寂しかったです。」

「ごめんごめん。」

「他の子と会ってたの?」

「そんなことはないよ。」

彼女に向き直り、
バスローブを脱がせると、
形の整った乳房が輝いていた。

恥ずかしそうな、
いや、もっと見てと訴えかける彼女の瞳に答えるように、
俺は愛撫を始めた。

顔も体も完璧だ。

俺自身、
その完璧さに興奮した。

ふと、彼女の首を見ると、
なにやら赤い痣みたいなのが見えた。

「首のとこ、どうしたんだ?」

「首?」

「なんか赤くなってるけど?」

「え、ほんと?」

彼女は俺を払いのけ、
急いで浴室に駆け込んでいった。


「斎藤さん、全然赤くなってないですよ。」

「そうか。」

「もう、びっくりした。」

「すまない。」

白い体が彼女の自慢だった。

見間違いか。

疲れているのか。

照明のせいか。

俺は挿入しながら悶々と考えた。


彼女に腕枕をしていたら、
彼女はすやすや眠っていた。

寝顔すらも美しい。

そっと腕枕を外して、
ソファでタバコを吸っていた。

「んん。」

彼女からうめき声が聞こえた。

「や、やめ。んん。」

うなさているのかと近づくと、
険しい顔をしていた。

「おい。大丈夫か?」と、
肩をゆすって声をかけた。

「いやっ。」と、
彼女は大きな声をあげたと思いきや、
目を見開いて、
肩で息をしていた。

俺もびっくりして何も言えなかった。

「さ、斎藤さん。」

「悪い夢でも見ていたのか?(笑)」


「さっき、話した夢です。」

「黒髪の長い女?」

「そうです。」

「いなかったぞ?」

「怖い。」

俺に抱き付く彼女を抱きしめた。

「もう一回するか?」

「やだぁ、もう(笑)」

なんていっていたのに、
彼女はまた全裸なって俺を誘惑した。

気持ち良ければ誰でもいい。
誰でもいいけど、綺麗な人だと有難い。

その価値観だった。

彼女の神秘的な所をなめながら、
ふと、目線を上にすると、
ぎょっとするほどはっきりと首に赤い手の後のような痣が見えた。

「おいっ。」

「んっ?」

「おまえ、首っ。」

「はぁ、首?」

「だから、痣っ。」

「え?」

彼女はまた俺をはねのけて浴室に駆け込んだ。

「斎藤さん、さっきからその首のとこの冗談、
 なんなんですか?
 やめてくださいよ、もう(笑)」

笑っている。

今は見えない。

(あれは、一体。)

行為を終え、
俺たちは布団へと入った。

「私、本当最近寝不足で。」

「なんなんだろうな、その夢。」


ウトウトしていた。

足先がなんだか妙に冷えた。

手も寒くなって。

はっと目をあけて、彼女を見ると、
彼女のそばに立ち、
見下ろすように、
黒髪の長い女が突っ立っていた。

恐ろしくて声もでなかった。

体が緊張で動かない。

彼女は眠っている。

黒髪の女がふいに顔をあげる。

目が合った。


俺はこの女の事を知っていた。

体の隅々まで知っていた。

「あっ。」

女は俺を睨んでいた。



彼女は数年前の彼女だった。

私と彼女は、
医師と客の関係だった。


全身整形。


私は主にその依頼を受けていた。

黒髪の長い髪の毛で、
切れ長の一重をしていた彼女は、
ある日金を握りしめて、
私のもとへ訪れてきた。

私は金さえ払ってくれるのなら、
客を選ばない。

全身整形はうまくいき、
彼女は完璧な美しさを手に入れた。


こういう関係になったのは、
彼女が不安だと話したからだ。

全身をチェックしてほしい。
メンテナンスのアナウンスが欲しい。

無償でチェックしてもらうかわりに、
いつでもと言ってきたのだ。

俺に害はないと思い、
俺はその話にのった。


なぜ、昔の彼女が今の彼女の首をしめる?

にらみつける?

訳がわからない。


「先生。」

昔の彼女は俺に話しかける。

「私、ダメなんです。」

「何が?綺麗になったじゃないか。」

「偽物だわ。」

「そんなことないさ。」

「本当の私はこれ!」

「どっちも本当の君だよ。」


「だめなんですっ!」

彼女は泣いていた。

心が綺麗すぎるんだろうね。

困ったな。


「先生、もとにもどしてください。」

「え?」

「私、耐えれない。」

「本当にそう望んでいるの?」


彼女は答えずに消えた。

気が付いたら、私も眠っていたようだった。


翌朝、目が覚めると、
彼女の首には何もなかった。

「寝れたかい?」

「それがここんとこ、毎日あの夢ばっかり見ていたのに、
 昨日は見なかったです。」

「元に戻りたいって思う?」


彼女は困ったように笑いながら、
「綺麗になれば悩まないって思ってました。」と俺に告げた。
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