あなたにとっての王

神奈川雪枝

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私にとっての王

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私は、愛想のある優しいホストがいい。
硬派とか軟派とか今どうでもいい。
「(ブスだけど)かわいいね。」って
真っ直ぐ言われて首吊りたい。

そんな願望だった。
この服可愛いねじゃだめ。
このバックいいねでももちろんだめ。
今日の髪型似合ってるなんて論外。

「顔が可愛いね。」って私そのものをほめてほしい。
わがままなことなのかな?


ホストクラブに行きだしたのは最近だった。
派手なホストも地味なホストも、
いろんなホストについてもらったけど、
私のほしい言葉をいってくれるホストはいなかった。

そんな時だった。
新しく入ったレオ。

目が大きくて子犬みたいなレオ。

「ゆかりさん。」

彼は私のお気に入りになった。

アフターするようになったけど、
レオは絶対寝ない。

なんで?
ダメなの?

懇願してたも、
大きい目を伏し目がちに首を横にふるだけだった。

レオは果物を可愛いといった。
すべすべでもないのに。と私は思う。

「ゆかりさんはさ、
 なんで化粧するの?」

綺麗でいたいからよと言えば、
そのままで十分なのにとレオは笑う。

レオは私の家で飼っている亀に興味を示した。

「こいつ、いいね、かわいい。」

私はこんな緑色の4足歩行に負けるのかと思うと、
笑みがこぼれた。


レオと私は同棲するようになったけど、
それでもレオは一向に抱こうとはしなかった。


亀の餌やりをしながら
レオは言う。

「散歩しよ。
 桜咲いてるみたいだよ。
 俺花見したい。」

レオはどうしてホストなんてしてるの?と聞けば、
スカウトされたからと笑う。

レオは根無し草みたいに、
ふわふわしていた。

どうしても我慢できなくて、
おねがいとレオのズボンのチャックをさげたときがあった。

レオは悲しい顔で、
俺たたないんだとぽつりつぶやく。

「ごめん。」

「いいんだ。」
とレオは私のことを指でしてくれた。

レオはとても上手で、
絶対もっと前から夜の世界にいたんだろうなって思った。

レオと過ごすと時間はあっという間に過ぎる。

そんなレオが家に帰ってこなくなった。
3か月も帰ってこない。
店も辞めちゃっていた。

亀のお世話、誰がするの?
レオがいなくなってはじめて、
私は泣いた。

息が苦しかったから。

レオは根無し草でもあったけど、
私の酸素でもあったから。

レオ。

レオ。

どこにいるの?

会いたい。

会いたいよ、レオ。

レオの携帯に連絡なんてつくはずもなかった。

ゴミ箱にレオの精液のついたティッシュが捨てられていた。
レオは女の子にたたないんじゃないのかなって思ってた。

前に店でレオの太ももに座った時、
確かに当たっていたのだから。

私を生きやすくしてくれていたレオ。
レオにとっては、
性別という壁は息苦しかったね。

ごめんね、
ありがとう。

指でしてくれたことがどんだけのやさしさか
私は思い知れない。

レオ。

レオ。

相手は見つかったの?

今度はずっと一緒にいれそうな人なの?

ねぇ、
レオ。

私たち、友達くらいにはなれなかったかな?

レオ。

どうかあなたが息苦しくありませんように。

私はそう願いながら、
亀に餌をあげた。

だってレオは私に唯一、
「ゆかりはさ、
 そのままで十分可愛いよ。」って言ってくれた人だから。

彼の幸福を願わずにはいられない。
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