寒がりの夜はこれからだ

神奈川雪枝

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さむない?

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ぶかぶかのセーター着てるのは、

太郎くんが可愛いねって言ってくれたのがきっかけで。



昔は寒がりなのが嫌だった。

(だって、冬とか人の2倍は寒いような気がして。)



でも、最近は寒がりでよかったなぁって思ってる。

(だって、太郎くんが居るからっ!)



「今日、一緒に帰ろう~?」



「え、あ、ごめん。」



「なにぃ~、彼氏来るの?」



「うん、今日金曜日だから家に行く事になってて。

 雪降ってるから、車で迎えに来てくれるらしくて。」



「相変わらず、仲良しなんだねぇ~。」





友情よりも恋愛って訳じゃないけど。

太郎くんはもう大人で、仕事してる訳で。

いつでも会えるって訳じゃないから、どうしても優先しがちかも。

(だって、忙しい時だとメールすら出来ないんだもん。)





窓の外を見れば、

薄暗い空から白い雪が降っていた。

(早く、放課後にならないなぁ~。)











鞄を持って、校舎から出た。

学校近くのコンビニに車止めて待ってるってメール入ってたから、

急いで向った。





(にしても、ほんと寒いなぁ~><)





コンビニの駐車場には、

太郎くんの車。



(あれ、でも運転席に居ない?)



コンビニに入ったら、

雑誌コーナーのとこで立ち読みしてる太郎君発見☆



後ろからいきなり抱き着いたら、

「ぅわぁっ。」ってびっくりしてた。笑



「 もう~雪枝、びっくりするやんか。」



「ごめんね~。笑」



「 雪枝、肉まん食べる?」



「うん、食べたい~~~。」



にっこり笑って、

レジのとこ。



肉まんとピザまんとあんまん、

1個ずつ買ってた。



車に乗り込んだら、

嬉しそうな顔して肉まんの入った袋をがさがさしてる、太郎くん。



「 全部、わけっこしようなぁ。」って、

1個ずつ取り出しては半分にちぎってっていう作業を繰り返す。



「 はい、これ雪枝の分な。」



「んーまいっ。」って満面の笑顔で食べてる太郎くんを見てるだけで、

私の心はあったかくなってくる。





「今日の夜は、鍋にする~?」



「鍋かぁ~、いいねぇっ。」



太郎くんはもう肉まん食べ終わったのか、

ハンドルを握った。



「 雪枝、俺に見惚れんのもええけど、はよせな肉まんさめてまうよ?笑」



「べ、別に見惚れてなんかないもーーーんっ。」



やっぱり嬉しそうにむふふって笑ってる太郎くん。

(なんだ、ばれてたのか、気付いてないと思ったのにぃ~。)





太郎くんのマンションの近くのスーパーに着く頃には、

私も肉まんをもう食べ終わっていた。



二人でスーパーでお買い物。

(何か新婚さんっていうか、同棲してる気分で幸せっ。)



「 なに鍋にする~?」



「ねぎ、いらないからねっ。」



「雪枝、まだねぎ食べられへんのっ?」



「食べれるけど、好きじゃないのっ。」



「ふーん、じゃぁ、椎茸は?」



「好きっ。」



「じゃ、こんにゃく。」



「糸こんにしよ~。」



「せりも。」



「えぇー、いやだー。」



「我侭いわんの、雪枝一人の鍋ちゃうねんから。」



「太郎くん、こわいーーー。」



「こわないやろ?!笑」



「いいもんー、鶏肉私一人で食べちゃうんだからねっ。」



「あかんよ、一緒に食べるよっ。」



「 人参どーしようかなー。」





「雪枝、太郎くんの事好き?」



「え?」



「せやから、俺の事好き?」



「 好きだけど?」



「全然気もち篭ってへんー。」



「いきなり、どーしたの?」



「太郎くん、お拗ねモード突入や。」



「ちょ、どーしたの?ね?」



「好きやったら、ちゅーして。」



んーって目瞑って、唇突き出し始めた太郎くん。

(いやいや、此処スーパーだからっ。普通にお客さん居るからっ。)





困ってたら、

太郎くん目あけて、

「なんや、やっぱり好きちゃうやん。」って

一人でスタスタカゴ持ってレジに行っちゃった。

(何でいきなりそーなるかなぁ~。)





会うの久しぶりで、

喧嘩なんかしたいはずなくて。



レジ袋に詰めて、

スーパーの外。



「待ってよ、太郎くんっ。」



(何で無視するの?)





「太郎くんの事、一番に大好きだよっ。」って腕掴んで、

背伸びしても、私背低いから太郎くんが屈んでくれないと唇まで届かなくて、

顎にちゅってキス。



「 怒っちゃやだよ。」って言ったら、

ふにゃんって笑って、「ごめんごめん、ちょっと意地悪したなった。笑」って。



「太郎くんのばぁーかっ。私本気で怒らせちゃったのかと思って、

 すっごいびっくりしたんだからね。」



「雪枝がもっと気もち込めて好きって言ってくれたら、

 俺だって、こんな事せぇへんよ。笑」



「気もちこもってるもん。」



「ごめんって、拗ねないのっ。」



車の後部座席に買った物乗っけて。



ふと、空を見上げてみた。



「雪、凄いねぇー。」



「ほんまやなぁ~。」



「朝から降ってるよねー、寒いっ。」



指先までセーターひっぱって、

擦り合わせるように、手のひらくっつけて、

白い息をはぁーって吹きかける。



後ろから太郎くん抱きしめてきて、

「こうしたら、ちょっとは寒なくなるやろ?」って。



私はこれが大好きだったりもする訳で。



「 もっと、あったかくしてよー。」って言ったら、

私の手を太郎くんの手で包まれた。



「あったかいやろ~?」



指先触られたとこから、

久しぶりの太郎くんの体温にドキドキ胸が高鳴ってきた。



「じゃ、あたしもあっためてあげる。」



はぁーって息吹きかけたら、

「くすぐったい。」って言われた。





もっともっと触れ合いたい。

会えなかった分の寂しさ埋めるように。



「ね、早くお家行こう?」



「そやな。」



(スーパーの駐車場でいちゃつくなんて、初めてだ。←)





あったかい鍋二人で作って、

箸突っつきあって、一緒に食べて。



ぶかぶかのセーター、

きっと、君が可愛いって言ってくれたから着てるのに邪魔になるんだろうなとか

思ってみたり。













      寒がりの夜はこれからだ。
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