不承知の事でございました。

神奈川雪枝

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君の方がよっぽど

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「高橋さんがいればなんでも大丈夫な気がする。」

俺の部下の一人である浅瀬はよくこう呟く。

新しい案件で行き詰った時だった。
「高橋さんがいればなんでも大丈夫な気がします。」と話した。

「ほんとに？」

「ええ。」

それからふいに解決の糸口は見つかり事なきを得たのだった。

浅瀬はあまり喋る方の人間ではなく、
控えめな黒髪ロングの女だった。

そんな浅瀬と2人で関西の方に出張になった時のことだった。
1日目の商談も無事に終わり、
「お疲れ。」といって、
ホテルにて解散しようとした時だった。

「高橋さん。」
「ん？」
「一緒にご飯食べませんか？」と浅瀬がいう。

「俺は別に構わないけど、疲れないか？
　気ぃ使わなくていいぞ？」とフォローするも、
「いえ、一人で食べてもあれですから。」と浅瀬は言う。

2人でホテル近くの居酒屋へとやってきた。
浅瀬は酒が好きらしく、
日本酒を飲んでいた。

「高橋さんは関西よく来られてますよね？」

「あぁ、出張でな。
　ある意味、関西は俺の担当でもあるからな(笑)」

「いいな。」

「出張がか？
　別にいつもと何もかわらんぞ？」

浅瀬は静かに日本酒を口に運んだ。

それから会話も程々に食事を楽しんだ後だった。
部屋まで送ると、
浅瀬は、
酔い覚ましに水でもどうですか？と俺を誘う。

「いや、いいよ(笑)
　俺、酔ってないし。」

「私が酔ってしまって。」

浅瀬は俺の服の裾を離さない。

「ダメですか？」

ダメにきまっているんだが、
据え膳食わぬは男の恥とやらで、
部屋に入ってしまった。

バタン。

扉を閉めるや否や、
浅瀬は俺に抱き付いてきた。

「お、おぃ。」

「私、好きなんです。
　高橋さんの事。」

「あ、ありがと。」

「ダメですか？」

胸が当たる。

「だ、だめじゃな、いよ？」

「なら。」
と浅瀬に押されるままにベッドに倒されてしまった。

浅瀬はするすると服を脱いでいく。

「おぃおい、浅瀬っ。」と言ったが否や、
浅瀬は俺の口を塞ぎながら押し倒してきた。

俺の胸板に顔を埋めながら、
浅瀬は俺に言う。

「高橋さんとならなんでも大丈夫な気がするの。」と。

結局、朝まで浅瀬の部屋で迎えてしまった。
浅瀬は普段と何も変わらない。

俺だけがそわそわして2日目の商談をやり過ごしたのだった。

その日の夜だった。
浅瀬はまた俺を誘う。

「今日も、いいですか？」と。
さすがに今日はと俺は冷静さを装う。

「ダメですか？」

「いくらなんでも、俺たち付き合ってないし。」

「付き合いましょう？なら。」

浅瀬は冷静そのものだ。
俺の振りとは違う。

「私は入社してからずっと好きだったんです。」と
真っ直ぐ眼を見て言われた。

とりあえず、ご飯でもと浅瀬のペースに乗せられてしまった。

気が付けば俺は酒に飲まれていて、
俺の部屋で浅瀬を抱きしめていた。

「高橋さん、
明日までには返事を聞かせてくださいね。」と浅瀬は、
俺の耳元で囁く。

明日で、出張も終わりかぁ。

朝、ロビーで待ち合わせると浅瀬が
「高橋さん、襟。」と俺の襟元を直す。

昨夜の浅瀬の姿を思い出し、
照れてしまう。

「あ、ありがとう。」

「いえ。」

浅瀬はどうしてこうも動揺しないのだろうか？

3日目最終日の商談も何事もなく終えた。

明日は会社が休みだった。

「どうする？
　かえってもいいし、一泊していってもいいぞ。」

「　他人行儀なんですね。」

珍しく浅瀬が唇を尖らせる。

「で、どうする？」

「高橋さんに任せます。」

「任せるって。」

「私は、今日も高橋さんと過ごしますから。」

どこまでも真っ直ぐな瞳だった。

「わかった。
　俺は今日は帰るよ。
　浅瀬も、家に帰りなさい。
　な、わかったな？」

浅瀬は返事をしなかった。

新幹線で隣の席に座る。
浅瀬は俺の太ももに手を置いた。

「おい。」

「なんですか？」

「手。」

「嫌いじゃないくせに。」

浅瀬はつんとしている表情とは裏腹に、
ねっとりと俺の太ももを撫でる。

「私、帰りませんからね。」

「勝手にしろ。」

確かに新幹線でそうはいったものの、
浅瀬は本当に俺についてきたのだった。

「本当に帰らんのか？」

「はい。」

家に上げれば、
浅瀬はすぐさま俺に抱き付いてきた。

「返事、きかせてくれますか？」

目の前に浅瀬の唇がある。
この状況で憎いやつだ。

「　俺のどこがいいんだよ？
　お前より１０も離れてるんだぞ？」

「私は気にしません。」

「俺が気にする。」

「なのに、やったんですか？
　ひどい。」

浅瀬は俺の顔にキスを降らす。

「高橋さん、早く決めて。」
俺の股の間に浅瀬はぐいぐい入ってくる。

心と体は正直なものだった。

「ねぇ、早く。」

浅瀬が艶っぽく俺の耳元で囁くや否や、
俺は彼女をベッドに運んでいた。

会社の部下と3日間もすることになるなんて、
責任を取るしかないじゃないか。

「本当に俺でいいのか？」
浅瀬の胸に顔を埋めながら確認する。

「私は、高橋さんがいいんですっ。」

浅瀬は体をくねらせる。

浅瀬の足を開きながら、
俺は考える。

そんな俺の考えを読むかのように、
自ら開きなら浅瀬は言う。

「高橋さんが居れば、なんでも大丈夫な気がする。」と。

俺は浅瀬に身を委ねることにしたのだった。

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