戦う意味なんてない

神奈川雪枝

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無問題よ!

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問題児。

彼にその名札をつけていいのかと、私は迷ってしまう。

それは、彼が本当は心優しいっていうのを知ってるからなのか、
ただ粋がってるだけと年のせいにしてしまっているからなのかは、
分からないけれど。


( 煙草 。)
屋上の見回り。
扉を開け、下を見たら煙草の吸殻。

「 本田 。」

私は、フェンスに寄りかかってる彼の名を呼ぶ。

「……。」

( 無視 かよ 。)

「煙草、吸ってたやろ?」
「……。」

彼は、煙草を吸いながら私のことを睨み付けた。
( あーもう、煙たいっつうの! ←)

「 お前、まだ二十歳ちゃうやろ 。」

「 煙草は法律で二十歳からって決められてんの。」

「高校生は、まだ早いっての 。」


「 高校生でも、一人の人なんやで 。」


彼は、私を睨んだままそう答えた。

「そうやな。って、私が社会科担当してんの知ってるやろ。
 人権の話とか、ばり得意分野やで 。」

「 人権って、何のためにあるん?
 眼に見えへんもんやし、
 大人は人権を傷つけるやんか 。」

「 何、何か言われたん?」


「 お前みたいなクズ、死ねばええんやって 。」


「そんなん、誰に言われてん ?」

「国語教師の、秋山 。」

「あー、あの人か。
 あんた、あのおっさんにえらい嫌われてるもんな 。」

「生徒に、そういうこと言う教師の方が問題やろって思う 。
  何か、そんなおっさんに貶されたのがめっさ腹立つ 。」

彼はそういうと、静かに空を見上げた。

( やっぱり、まだ子供やなぁ 。)

私も、空を見上げた。
そこには、綺麗な景色。
赤みがかかっている空。


教師という仕事上、子供とは嫌でも向き合わないといけない。
生徒は悩み、必死なのだ。
だから、教師は優しい心で向き合わないけへん。
教師が生徒見捨てるなんてこと、あってはいけへんことやと思う。

答えは自分で見つけるものやけど、
それを手助けするのは、他人でも構わない 。


「 なぁ、本田。
 今日、一杯飲むか?」

「 はっ ?」

「せやから、一緒に飲み明かそうかって言うてんの。」

「何、酒は高校生からでもええん?」

「んー、あかんやろうなぁ 。」

「 何なんそれ 。」


「私な、本田の笑顔が好きやの。」


「 知らん 。」

「せやから、悩みでも愚痴でも何でも聞いたるから、
 笑顔、見せてや?」

「 めっちゃ煩い 。」

彼は、静かに微笑んでいた。




           戦 う 意 味 な ん て な い 。
       
        (笑顔は大切な宝物!) ( 彼を大きな愛で抱きしめてあげよう。)
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