小さな小さな初恋

神奈川雪枝

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なんなの。

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好きか嫌いかどっちかで言ったら、

迷わず、嫌いだと思う。



人の顔見ては笑うし、

掃除は押し付けるし、

宿題も勝手に見て写すし。



だから、

席替えしてこいつの隣になった時、

心の底から最悪だって思った。



「なぁー。」



「 なに?」



「お前さー、好きな奴と居んの?」



「は?」



「はって、もうすぐバレンタインデーやんか。」



「 あぁ~。」



「あぁ~って相変わらず興味無さそうやな。笑」



「 本田君は、モテルもんねー。」



「そーそー、お前と違ってなぁ~。」



「私は別に男子じゃないから、バレンタインにもてなくてもええもんー。」



「それもそうやな。笑」



自習のプリント。

算数、苦手なんだよね。



「 俺、お前からチョコ欲しい かも。」



「はい?」



「どーせ、誰にもあげる奴居らんねやろ?」



「好きな人居ないもん。」



「せやから、俺が貰ったる。」



「はぁー?」



「黙って、俺にチョコ寄こせっ。笑」



にっこり笑顔で言われても。

(あー、でも本田の笑顔は嫌いじゃないかもなー。可愛い、かも 。)





だからって訳じゃないけどね、うん。

たまたまだよ、暇だったし。



朝、教室に入ると本田の机の上には可愛い袋がいっぱい置いてあった。

( すご 。)



「 あー、神奈川。」



「おはよう。」



「俺、凄いやろ?笑」



「いっぱい貰ったんだねー。」



「 今、どんな気持ち?」



「 え?」



「やっぱ、何でもない。」



「そ?」



「おん。」



机の上のちょこれーとの包装を開けて中身をチェックしてる本田。

(私からなんて、別に要らないじゃん。)



チョコを渡さないまま、放課後になった。

先生に呼ばれて職員室に行って、教室に戻った。

(何で私がプリント運ばなきゃいけないのー?)



扉の前。

教室から男子の声が聞こえる。



「なぁー、本田って神奈川の事好きなんー?」



「はぁー?」



「やって、よく話しかけてるやん。」



「そんなん、暇やからに決まってるやろー。」



「本田、モテルのに何で神奈川になんー?」



「は、なんやねん?」



「葵ちゃんとかのがええやんーーー。」



「長谷川?」



「俺、葵ちゃんからチョコ欲しかってんー。」



「あー、そーなん?俺、確か長谷川からチョコ貰ったかもー?」



「ええなー。」



「なぁ、神奈川のランドセルにチョコ入ってんで?」



「うっそ、馬路で?」



「これ、本田へのチョコやったりしてー?笑」



「 神奈川、本田にチョコ渡す勇気なかってんなぁー。」



「そんなんあるかー。」



「ほら、チョコ貰ったれよー。」



「なんでやねん。」



「これで、本田と神奈川両想いやんー。」



「葵ちゃんは、俺のもんやぁー。」



「ほら、本田チョコー。」



 ボタっ。



「ふざけんなよ、誰があんな女とっ。」



 ガラ 。



心臓が痛かった。

(なにそれ、なにそれ、どーいう事?)



(私が何でアンタの事好きな事になってんの?好きな訳ないじゃん。)



(一瞬でも笑顔可愛いとか想わなきゃ良かった、チョコなんか持ってこなきゃ良かった 。)



「神奈川 。」



「 最低 。」



皆私の事見てる。

(良かった、数人の男子しか居なくて。)



恥しさと悔しさで、顔は赤くなるし体は震えるし。



本田の足元に落ちている、私のちょこれーと。



プリントを先生の机に置いて、

筆箱とかを急いでランドセルに詰め込んだ。



「神奈川 。」

(よく、声かけられるよね。)



ちょこれーとを拾った。

帰ろうと想って扉を開けようとしたら、本田が腕を掴んだ。



「ちょ、待てって。」



「……。」



「 今のは、その 。」





「 アンタなんか大っ嫌いっ。」



腕振りほどいて、

振り向いて、目を見て言った。

本田はびっくりした顔してて。

勢いそのままに、ちょこれーとの箱を投げつけた。



「いたっ。」



そのまま、

教室を後にした。

(もう金輪際、あいつとは関わりたくもない。)

その日から、

私は本田と話さなくなった。

(たまに話しかけられるけどね、そんなん無視、無視っ。)



「 なぁー。」



「……。」



「神奈川?」



「……。」



「無視すんなや。」



「 うっさい。」



自習プリント。

算数わかんなくても、本田に聞いたりなんか絶対にしない。



(早く、席替えしたい。本田の隣なんて、もう嫌。)





あれから、

男子なりに気を使っているのか、

バレンタインデーの事について誰からも何も言われなかった。





そんなこんなで、

相変わらず席は変わらず、

気がつけば、明日はホワイトデー。

(もう、1か月経つんだー、早いなぁー。まぁ、私には関係ないけどね。)





下駄箱、昇降口。

何故か一人突っ立てる、本田。

(眉間に皺寄ってる、怖い形相やな。)





「 おい 。」



「……。」



「 神奈川 雪枝。」



「……。」



そのまま無視して通りすぎようと想ったら、

いきなり本田が足を出してきて、

つまずいて転んでしまった。



「 いたっ。」



「 お前が無視するからやろ。」



「 最低やな、相変わらず。」



「 最低なんは、お前やろ。」



黙って立ち上がった。



「 ちょ、神奈川って。」



また、腕掴まれた。



「 なに?」



「 その 。」





「 もう、私に関わらんといてよ。」



そう言い捨てて、

歩き出した。













3月14日、土曜日。



家。

(何かテレビとかやってないのかなー、暇ー。)



「ねー、お母さんー。お腹空いたー。」



「お菓子でも食べー?」



「お菓子昨日全部食べたー。」



「 100円あげるから、コンビニでも行ってき?」



「えっ。(100円?!)」





テレビもないし、

お菓子もないし、

しゃーなしに、とりあえずコンビニに行ってみる事にした。





ガチャ。



家を出て少し歩くと、

電柱の所に、何故か本田。



(きも 。)



「 あっ。」



「 ……。(無視、無視と。)」



「 神奈川っ。」



「 ……。」



無視して通り過ぎた。

そしたら何故か、本田も後ろをついてきた。

(馬路で何?)



立ち止まって、振り返った。



「 何か、用?」



「 その 。」



「……。」



「あの、さ 。」



ずっとモジモジしててらちが開かないと想ったから、

私は黙って歩き出した。



そしたら、

やっぱり後ろついてくるんだもん、彼っ。

(ちょ、なんなの一体?)





コンビニ。



やっぱり私の後ろをついてくる彼、

ていうか、むしろもう隣を歩いている彼。



「 あのさ、気持ち悪いんだけど。」



「なん、具合悪いん?大丈夫?」



「は?」



「やって、気持ち悪いって。」



「アンタに気持ち悪いって言ってんのー。」



「 俺 ?」



「さっきから後つけてきて、なんなの?」



「 神奈川 。」



「 なに 。」



「 好き 。」



「はい?」



「せやから、好きって言うてんのっ。」



「は?」



顔真っ赤にして、

いきなり何を言い出したかと思えば、なんなの?

(ばつこく?)



「 ごめん、俺今ちょっと嬉しい。」



「 なにが ?」



「 神奈川と久しぶりに会話出来て。」



「 え 。」



「神奈川の声、久しぶりに聞いたから。」



「 そんな事 。」





「 バレンタインの日、ほんまごめん。」





「 ……別に、いいよ。」



「うせやん、むっちゃ無視し続けたくせに。」



「やって、本田からチョコくれ言うたくせにさ、いらんとか言われるとか訳わからんやん。」



「 あー、うん。」



「 何で私に、チョコくれとか言ったん?」





「 気付いてない?」



「は?」







「さっきから、好きやって言ってるやん。」





「いやいや、冗談とかええし馬路で。」



「冗談っ?!」



「そーやろ?」





「 あー、もうっ。

 こーなったんも全部、あいつらのせいやのにっ。

 ほんとはバレンタインの日にって想ってたんにっ。」



「ちょ、本田?」





「 俺、ずっと神奈川の事本気で好きやってん。」





「 うそ でしょう ?」





「次、嘘とか冗談とか言ったらしばくから。」



「 馬路で ?」





此処は、コンビニで。

お菓子コーナーで。

私は100円しか持っていない訳で。

店員さんとかお客さんもいるわけで。



さっきからおっきい声で目の前の彼は、何を言ってるの?って話で。



いっそ、全部嘘ならいいのに、夢ならいいのに。





なんで顔真っ赤なの、本田。



なんで泣きそうなの、わたし。





(あー、どうしよ、嬉しいとかおもいたくないのにっ。)







チュって音が聞こえたと想ったら、

本田の顔が近くにあって、

唇に感触あって。



頭で理解するほどに恥しくなって、

私の顔、真っ赤になってく 。





「 俺の事、好き?」





認めたくないけど、

絶対ありえないけど 。





「 好き かも ?」





ぎこちなく言ったら、

本田がとりあえず凄い嬉しそうでむっちゃ笑顔だったから、

つられて私も笑顔になっちゃった 。









恥しくて、

結局コンビニで何も買わないで、

二人手繋いで、

近くの公園に来た。





「 これ 。」



「なに?」



「今日、ホワイトデーやんか。」



「あぁ~。」



「相変わらず興味なさそうやな。笑」



(だって、お返し来るなんておもわないじゃん。)













     小さな小さな初恋。











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