怪盗日和

神奈川雪枝

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盗んだのは……

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みんな、
みんな、
どーして わかってくれないの ?

まだ高校生だからなんて、酷いよ 。

私と彼の気持ちは、本気なのよ?
誰にだって、邪魔させない 。

若いからって、幼いからって恋愛が本気じゃないなんて決め付けないでよっ。


何度目の愛の営みでしょうか?

愛し過ぎ合い過ぎて、愛の結晶が出来てしまった 。


『 逃げようか ?』

その事を彼に告白したら、彼はそう爽やかに微笑んだ 。

「 うんっ。」

私はただ純粋に嬉しくて、
彼とならどんな事も乗り越えて、幸せになれると想った 。


なのに、彼の言葉は全部嘘だったの 。

私の事、本気で想ってくれてなかったの 。

だから、
私は一人、本当なら彼と一緒に来るはずだった街に逃げてきた 。

夜なのに、
朝よりも眩しい位のネオン 。

チカチカ、ぎらぎら 。

街も人も皆、派手はで 。




( 眩しい 。)

今まで知らなかった世界。

初めての場所、
刺激が強すぎて、
ただ、怖いと想ってしまった 。

「 何してんの?」

声を掛けられて、
振り向く前に、
腕を引かれて、
灯りから離れていく 。

「 えっ 。」

男の人の背中 。

( 誰?
 私、何処に連れていかれるの ?)

さっきの場所とは大違い。
光が無い、真っ暗闇。

でも、その場所も私にとっては初めての世界だった 。


「 あの街に、あんまりも不似合いやったから連れてきてもーた 。」

明るい声。

「 なぁ、暇なら俺と遊ぼうや?」

彼が振り返って、
にやっと笑った口からは、歯が見えた 。

「 んっ 。」

返事をする前に、
私は彼に口を塞がれていて、
どんどん服を剥ぎ取られていく 。

こんな事、私は今までずっと彼としかした事がなかったのに。
他の人となんて、ましてや知らない人となんてしたくないのに 。

少し抵抗して見るけど、
八重歯の彼は簡単に私の抵抗を避けていく 。

全部盗られて行く 。

服も、
肌も唇も、全部ぜんぶ……。

私は今までで一番大きな喘ぎ声で、
彼の吐息に、彼の汗に、
彼に酔って感じて、
高い声で月夜に果てていった 。

知らない世界で出合った彼は、
私を私じゃなくさせる 。

私に新しい事をくれる 。




でも、
彼は朝になったら、
もう居なかったの 。

それから、
私はあの光輝く街に住み着いた 。

昔の一人の男を愛してた私から考えられない、
私の世界は常に夜で、
夜になったら綺麗に着飾って蝶に化けて、
何人もの男とただ日常的に朝を迎えた 。

( 会いたい 。)

何時だって、
彼を超える人は現れない 。

そんな生活を続けていた、
ある日 。

また、貴方はふらっと現れた 。


「 変わったなぁ、自分?笑」

ネオンに照らされている私と貴方 。

「 何処行ってたの?」

彼は笑って、
私の肩に手を回した 。


「 気安く触らないでよっ 。」

私は彼の手を離した。

彼は、きょとんとしている。


「 貴方と初めて会った時とは違うんだから 。」

私がニヤりと笑うと、
貴方は楽しそうに笑った 。



今はもう、
暗闇に行かなくてもいい 。

だけどね、
やっぱり、
私と貴方は暗闇で愛し合うのが一番だと想うの 。

前は貴方の暗闇の世界だったけれど、
今日は、私の暗闇の世界にご招待 。

貴方の口に、
舌を進入させた 。

「 んっ 。」

貴方の手を、
私の自分の体に押し付ける 。

ずっと、ずっと求めてたのよ ?

貴方が忘れられなかった、
一生の愛を誓ったはずの男の事なんかもう忘れたのにね 。

私が何人もの男と朝を向かえただけ、
きっと、
貴方も何人もの女と朝を迎えていたのでしょう?

汚い、キタナイ 。

だから、
お互い、
この再会で久しぶりにしましょうね。

一夜だけなんて、言わないで 。

好きよ。何て言わないから、
何時だって抱き合いましょう ?

ふらふらする貴方に、
今夜、私は貴方の身体に私を記憶させるわ 。

私が今まで貴方を思い描いたように、
貴方も私を思い描いて ?


貴方があの日、
私から沢山のものを盗んだお返し。

私も貴方から沢山のものを盗むわ 。







†私を変えたのは貴方なの、だから後悔するなら自分を恨んでね?†
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