断捨離中!

神奈川雪枝

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もういいかなって笑

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「これ、捨てるねー!」

休みの日にゆっくり目覚めた僕は
やたらと物音がするなと思っていた。

彼女は休みの日なのに早く起きていて、
掃除をしているみたいだった。

寝ぼけ眼で彼女の手元を見ると、
それは、
2人で初めて買ったお揃いのシャツだった。

「え?」

「着ないから捨てよ?」

「でも!」

彼女は朗らかに笑って、
「私もゆうくんも太ってピチピチになっちゃって、着なくなっちゃったじゃん!」
といった。

(それは、そうだけど。)

その後も彼女の断捨離続き、
僕との思い出の品物も次々に理由をつけては、捨てられていった。

(何で?!)


最近仕事が忙しくて、
休みの日もでかけなかったから?

前よりコミニュケーションをとらなくなったから?

考えると、
彼女が寂しがっていたようにも見えた。

(そういえば、
1ヶ月くらい前、
やたら、話があるみたいなこと、
いってなかったっけ?)

微かな記憶をたどる。












「ゆうくん、あのね?」

「なに?」

「ゲームあと何分くらいする?」

「わかんないよ。」













僕は家に帰ると常にスマホを弄っていた。
疲れてて。
ストレス発散で。
何も考えない時間が心地よくて。













彼女は何度か言ってもスマホを手放さない僕に呆れたのか、
もう構ってといわなくなっていた。













でも、僕はそれが、
煩わしさの解放かのようにおもっていた。













彼女の断捨離は1ヶ月くらい続き、
部屋はすっかり寂しくなった。

僕との思い出もほぼ捨てられていて、
必要最低限な物しかこの部屋にはなかった。













「随分、思い切ったね?」














「でしょ?
要らないものは捨てないとね!」













彼女にとって、
僕はいる物?いらない物??


少し不安になった。


最近仕事が忙しくてっていうのを建前に、
全然コミニュケーションをとれていなかったから、
久しぶりに今度の休みの日にデートをしようと誘うと、

「いいよ、家にいよう。」と、
彼女はやんわり断った。


なんだか、素っ気なくて、
僕は、
僕までも捨てられちゃうんじゃないかと、
不安になった。


夜寝る前に、
彼女に抱きつき、
「しよ?」と誘うと、
「生理だから、ごめんね。」と、
彼女は僕に背を向けた。



やばい、やばい。

最後に捨てるのは、
僕のことなんじゃないのか?!

そんな考えが頭を支配する。



モヤモヤしたまま過ごし、
休みの日に彼女の鞄を見つけた僕は、
思わずほっとした。

そのカバンは、
僕が付き合って何年かの時にプレゼントしたものだったからだ。

付き合って2年目のときだっただろうか?
随分時がたち、
彼女はいつも愛用してくれていた。

(そろそろ、新しいのを買うか!)
と、僕は携帯片手に、
鞄を大きさを見るために手に取った。

鞄には、不釣り合いな丸いキーホルダーがついていた。

(なんだ?)

でも、見たことはあるデザインで。

キーホルダーを見た僕は、
固まってしまった。













(妊娠、してるのか……?)













頭が真っ白になった。













僕の子供?

それとも、違う人?


僕の子供というには、
あまりに彼女を放任しすぎてて、
自信がわかなくて、
情けなかった。

じゃあ、違う人の子供?
浮気するくらい目を離していたけど、
彼女はそんな真似をするだろうか?


心臓が痛い。


彼女は「お昼ご飯できたよ?」と、
僕のいる部屋にやってきた。

鞄を持ったまま立ち尽くす僕をみて、
彼女は、

「やっと?」といった。

「ど、どういうこと?」

「わからない?」

「妊娠!してるの??」

「そうよ。」













「ぼ、僕の?子供??」













「当たり前じゃない?」













彼女は意味がわからないと言う目でみていた。

僕の子供?
いつ?!


「何度か言おうと思ったんだけど、
全然話聞いてくれる雰囲気じゃなかったから、いわなかったの!」

「そんな、大事なら、ちゃんときいたよ!」

「嘘つかないで、
スマホから目をはなせなかったくせに。」



捨てられるなんて考えていた僕は、
なんてバカなんだろう。

彼女はもっと先の未来を生きていたのに。

僕はなんでいつも、
気づくのが遅いんだろう?

「なんで、断捨離、してたの?」













「新しい家族が増えるのよ?
必要な物買うから置くスペースが必要でしょ?」













ごめん、ごめんね。

僕、自分のことばかりで。

もっとちゃんと、
君のこと 。













久しぶりに彼女と目が合った。気がした。













「やっと、見てくれた。」













優しく笑った彼女は、
「話したい事、たくさんあるの。」と、
僕の手をひいた。
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