雨の日の放課後

神奈川雪枝

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もっと降れ!なんてね

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学校、放課後。
突然の夕立。

下駄箱で私は電話を取り出した。
通話ボタンを押そうとした時だった。

「 雪枝ちゃん?」

「えっ。」

「傘、無いん?」

「ん。」

声を掛けてきたのは、
同じクラスの本田くんだった。

「 俺の傘、入ってく ?」

(……。)

「 ……な訳ないかあぁ~。苦笑」

「 ごめんね。」

「(謝られんのって心に来るんですけど、ぐさって。)
 いやいや、そーいえば誰かに電話するん?」

「 うん 。」

「誰、だれ?
 お母さんとか?」

「いや~ 。」

「えっ、じゃあお父さん?」

「ん~と 。」

「 彼氏とか?」

「ははは。」

「(やっぱ彼氏居るんかあぁ~、ショックや。)
 彼氏って年上?」

「うん、フリーター。笑」

「えっ、フリーターって。」

「彼、音楽で生きて行きたいらしくてさ。」

「唄、上手なんや。」

「うん。
 路上ライブしてる時に惚れたんだ。笑」

「じゃ、雪枝ちゃんから告白したん?」

「そーだよ。
 毎日駅前行って、彼探して。
 話しかけてもさ、すっごい無視されるしで。
 私、めっちゃアタックしたよ。笑」

「(もう、めっちゃ大好きなんやな。)
 何か意外やな、雪枝ちゃんがアタックするとか。」

「 やっぱり?笑
 私もさぁ、こんなに好きになる人なんて居ると思わなかった。」

「運命の人なんやね。」

「運命かはわかんないけど、
 付き合えて一緒に居れて凄い幸せだよ。
 つか、本田くんは彼女は?」

「おれ?
 居ないよ、いないいない。笑」

「えっ、意外。
 本田くん、絶対居るかと思ってた。」

「おらんよ。」

「じゃ、どんな子がタイプなの?」

「ん~わからん。苦笑」

「なにそれ~。」

ブブブって携帯が震えた。
彼からの電話だった。

「 もしもし?」

「雨降ってる?」

「降ってるよ。」

「今日、何か予定あった?」

「ん、ないよ別に。」

「そうなんや。」

「なんで?」

「いや、いつも電話かかってくるのにかかってけーへんから。」

「心配した?笑」

「全然っ。笑」

「もう~。」

「迎え行くから。」

「わかった 。」

電話を終えて顔を上げると、
本田くんは私の顔をじっと見ていた。

「ん?」

「(めっちゃ顔嬉しそうやったな。)
 彼氏さん?」

「そーだよ。」

「ええなぁ、雨の日いつも迎えに来てくれるん?」

「うん。
 私だから、雨の日大好きなの。笑」

「めっちゃ幸せそうやん。
 俺も雨の日好きになりたいわ。笑」

「本田くん、がんばれ。笑」

「おん。笑
 じゃ、俺帰るね。」

「ばいばい~。」

彼は手を振り、
傘をさして駆け足で夕立の中に飛び込んでいった。


しばらくすると、
わたしの携帯が震えた。

どうやら、
メールが届いたようだ。

雨の中私は駆け足で
校門前の車に乗り込んだ。


目の前にタオルを差し出された。

「風邪引くで。」

「ありがとう。」

「健康第一やからね。」

「ふふ、なんかおじいちゃんみたい。笑」

「なんやと~?!笑」

車内に響く、笑い声。







       雨の日の放課後。
       (毎日雨だったらいいのに。)
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