ごめんください。

神奈川雪枝

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(ガタッ!!

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家に私一人しかいないはずなのだ。


私から一番遠い対角線上に、

誰かの気配を感じる。


いるわけがない。


私は一人暮らしだ。



私の頭上で、人がいるかのように音がする。

木がきしむ音がする。



私から遠く離れたところで誰かいるような気がする。


(誰?)



なんてことのない午後の昼下がりだった。


突然、バタンと何かが倒れた音がした。


慌てるかのように家がきしむ。



私はおそるおそる音がした場所へと行ってみたのだ。



そこには、

見知らぬ青年がいた。


二人して目が合って、
声が出なかった。



(?!)



「 あの、ごめんなさい。」


「だ、だれ?」


「僕、怪しくないんですけど。」

「誰?!」



「隣の家のものです。」


「は?」



「洗濯物、風で飛んじゃって。とりにきたんです。」


確かにこの部屋は、ベランダのある部屋だった。


「なんで、室内にいるの?」


「気になっちゃって。」


「は?」


「僕、ずっとお隣さんのこと気になってて。」


(気持ち悪い。)



「いつも、洗濯ほすときに、その下着とか見ちゃって。
 色々想像しちゃって。
 どんな人なのかなって思ってたら、
 僕の洗濯物、飛ばされちゃって。

 運命だと思って。

 ちょっと見るだけならいいかなって思って、

 窓あいてたし。」



何を言っているのか、理解できなかった。
干してある下着に欲情してた変態ってこと?

「でも、やっぱり、素敵だぁ。」

「は?」

「想像してたよりも可愛いです。
 今ってノーブラですか?」

「?!!」

「おっきんですね。」

目の前に変態がいる。
どうしたらいいのだろうか?

通報!

通報したい。

しなきゃ。


携帯、どこだっけ?

あぁ、隣の寝室で充電している。

どうしよう。


「僕、水色の花柄のブラジャーが好きで。
 今日干してあるのは、黄色のブラですよね?」

(やばい。)


本当に下着で興奮するやついるんだ。
室内干しだわ、そりゃ。


「さわったりしてもいいですか?ってダメですよね。(笑)」

気持ち悪くて、声が出ない。


「あ、僕、そろそろ帰ります。」


ベランダからひょいと隣に移っていった。


べたんと地面に座り込む。


怖い怖い怖い、
怖すぎる。


今までたまに感じてた気配って今のひと?
やばくない?


やばい。


無意識に涙が流れそうになる。


女の一人暮らし、
危なすぎるだろ。


私はそれ以来下着は室内に干したし、
なにより速攻彼氏と同棲した。
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