champagne flash

神奈川雪枝

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キラキラは日没から0時の間の1時間に1回だけなんだって

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薫とフランスに訪れたのは
18歳の時だった。

高校の卒業記念の旅行で、
パリに来た。

家がお隣同士で、
幼なじみだった私と薫は、
意気投合して、
すぐに仲良くなった。

成長と共に、
異性としても意識するようになった。

中学一年生の時は
意識しすぎて、
ギクシャクした。

中学2年生の時は
クラスが離れてしまったので
なんとか接点を持とうと空回りした。

中学三年生の時、
放課後の教室で
たまたま1人でいた薫を見かけた私は、
彼に勇気を出して話しかけた。

「か、かおるっ。」

「清香?どうした?」


「一緒に、帰らないっ?!」


ドキドキして
顔が赤くなって
目をつぶった。

拳に力が入った。



「いいよ。」

私だけが意識してて、
薫は久しぶりなのに普段通りだった。


一緒に隣を歩くのは何年ぶりだろうか。

気がついたら、
同じ背丈だったのに、
薫は私より随分背が高くなった。

薫はいつも通り歩いてるだけなのに、
緊張していつもより私の歩幅が小さいのか、
距離が空いていく。

「ごめん、歩くの早かった?」

「ううううん!大丈夫っ。」

薫は笑って速度を緩めてくれた。


(ああ、もう家に着いちゃう……。)

何も言えなくて立ち止まった私に
薫も止まった。

「清香。」

「え?」

「また前みたいにさ、こうして話そうよ?」


うんといえなくて。
幼なじみじゃなくて、
もっと近づきたいのに。







「清香、起きて。」

はっと目を開けると、
そこには高校を卒業した薫が微笑んでいた。

「なんか夢見てたの?
顔が気難しかったよ?笑」

「うるさいっ!」

私は飛行機の中に居た。


私と薫は付き合って、
4年目になる。

初めての海外。
初めての2人での旅行。


パリに着いたら、
薫は前に家族で来たことがあると、
懐かしいと腕を広げた。

トロカデロ広場というところに来た。
まだ夕方前だった。

「清香!見て!」

エッフェル塔が見える。

「初めて見た。」

「日没から1時間に1回、
キラキラ光るんだよ?」

それがとても綺麗なのだと、
薫は瞳を輝かせた。

「へぇー。」

「あんまり興味なかった?笑」

「いやいや、見たいんだけど、夜はちょっと怖いよ。」

それもそうだねと
手を繋いで宿泊先へ向かった。


カフェレストランに入り、
夕飯を済ませた。

驚いたのは、
薫が少しフランス語を嗜んでいた事だ。


部屋へ戻るともう夜になったいた。

「清香!こっちきて!」
窓の方へ向かうと、
エッフェル塔が見えた。

丁度21時になり、
キラキラと煌めいた。

「わぁ、すごい!」

「一緒に見れて良かった。」







「清香、おめでとう。」

目の前には、
25歳の薫がいて、
私に花束を差し出していた。

私はドレスを着ていた。


「清香の幼なじみの関本薫といいます。」
薫は私の隣に座っている尚人に挨拶をしていた。

今日、
私と尚人は結婚する。







「また、前みたいにさ、
こうして話そうよ?」
夕日に照らされた中3の薫。

「違うのっ!!」


「私、薫のことっ、
……好きなの……。」


すごい小声になってしまった。

恥ずかしくて顔をあげれない。



「俺も!」

薫は満面の笑みで、
私に手を差し出した。

そこから
私たちは
幼なじみから
恋人になって、
高校受験も
同じ高校への通学も、
テスト勉強も、
文化祭も
一緒に過ごしていった。

フランスにだっていったのに。

薫と窓越しに見たシャンパンフラッシュ。
「一緒に見れて良かった。」と、
薫はそう言ってくれたのに。


薫は就職。
私は料理の専門学校へと進んだ。

距離ができた。
お互い忙しくて。

喧嘩も増えた。
好きなのに。

私が専門学校を卒業した年、
薫は、
同棲しようと言った。

私は嬉しくて、
泣きながら頷いた。

でも、
もうすでに空いていた溝を埋めることは
できなかった。

同棲しても
すれ違う生活に、
一緒に住んでるからこそ生まれる嫌悪から
生まれる喧嘩。

私たちの仲は、
限界だった。


そんな生活が続いて、
22歳の時、
薫がアパートの部屋で
普通に、
籍入れない?と提案してきた。

私は考えることもなく、
断っていた。

「ごめん。」

「なんで?!」


「離れた方がいいと思うの。」

ある時から変えられなくなった
写真立ての写真。

随分前から着なくなったお揃いのシャツ。


私たちはもう終わっている。

更に次のステージへなんて、
こんな状態で進めない。


「もう引越し先の目処はついてるから。」

私がそう呟くと、
薫は脱力した顔で
ごめんと謝った。



尚人は職場の上司で、
よく2人で仕事していたこともあって、
だんだんプライベートでも仲良くなって、
付き合って入籍する事を決めた。


新婚旅行はどこがいい?ときかれた私は
即答でパリと呟いていた。


前は前日寝れなくて
爆睡した飛行機も
起きてられた。

トロカデロ広場にいったのは、
夜だった。

尚人は酒を飲んでいて陽気だ。

「もうすぐよ。」


23時になったと同時に煌めくエッフェル塔。

やっと、窓越しじゃなくて
近くで見れた。

本当は迷った。
結婚式に薫を呼ぶ事。


でも久しぶりに電話してみたら、
薫はお祝いに行かせてよと優しく囁いた。








二次会にうつることになり、
ドレスからワンピースへと着替えた。

外に出ると、
尚人は先に会場に向かっていて、
薫が居た。

「清香、おめでとう。」

「さっきもきいたよ。笑」



「なんか感慨深いな。清香が結婚するなんてさ。」

「結婚願望ないとでも思ったの?笑」


この建物の窓からは、
東京タワーが見えた。


「東京タワーも綺麗だね。」

「聞いたよ、尚人さんとパリに行ったんだってね。」

「うん。トロカデロ広場でシャンパンフラッシュみてきたよ。」


薫は一瞬息を飲んで、
私を見つめた。

「タクシー、よんであるよ。」

薫について行く。

二次会の会場に向かう途中、
スカイツリーが見えた。


「スカイツリーも綺麗だね!」

私がそういうと、
薫は自分の窓の方に顔を向けて、
見ようとしなかった。


「薫?」


真ん中に置かれた指輪のついた私の手に
薫は手だけ重ねて、

「俺にとっては、
あの時のエッフェル塔を超える夜景は
ないんだよ。」

とぽつりと呟いた。
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