魔法をかけて

魔法をかけて

明日はサッカーの試合だった。


「山口くん。」


「ん？」


「明日、頑張ってね。」


「あ、ありがとう。」


寝る前に彼に声をかけた。


「長谷川っ。」


「ん？」

「頑張る、おまじない、してもいい？」

「え？」

私の手を取って、
甲に口づけをするはやとくん。

「ごめん、いきなり。」

「大丈夫だけど。びっくりしちゃった(笑)」

「明日、初めてのレギュラーで試合するから心配で。」

「私の手の甲なんかで、大丈夫かな？(笑)」

「ほっぺもいい？」なんて言葉よりもはやく、
頬にはやとくんの唇の感触があたる。

「ちょっと、いきなりすぎっ。」

「ありがとう。」

はやとくんはいつもと違って、
本当に不安そうだった。

「頑張って。」と、
彼にハグをした。

「長谷川？」

「明日いい結果残せば、夢に近づけるんでしょ？」

「うん。」

「怪我しないでね。」

「長谷川、あったかい。」


「うん。」

ふいに目があった。

自然な流れで私とはやとくんはキスをした。


「おやすみ。」

二人して照れていた。



試合ははやとくんは絶好調で、
勝利もおさめていた。


試合前に二人でハグをしてキスをするのがおまじないになった。


気が付けば、
高校3年生になっていた。


また卒業の日が近づいてくる。


私は彼に貰った、
中学の学ランの第二ボタンを握りしめていた。



想いを伝える。

はやとくんは夢を叶えるために毎日頑張っている。

私は彼に想いを伝える。



「山口くん。」

「ん？」

「明日で高校最後の試合だね。」


「寂しいよな。」


言葉なんていらない。
ぎゅっと彼の胸に飛び込む。


「いつも、おまじない、ありがとう。」

「ううん。」


「山口君。」

「ん？」


「私、好きなの。」

「ん？」

「山口くんのこと。」

「長谷川？」

ちゅっと彼にキスをして離れようとした。

でも、ぎゅっと抱きしめられていて離れられない。


「俺も、好きだよ。」と、
彼からキスが降ってくる。

「うそ？」

「本当。
　ずっと好きでした。」

「私も。」

「じゃなきゃ、こんなことしないよ。」

「私も。」

ふふふって笑いあって、
3度目のキスをした。



何度でも、
あなたが私を必要としてくれるなら、
ぎゅーとあなたを抱きしめて、
ちゅってあなたに魔法をかけるから。


どうか、
怪我しないで。

笑っていて。

何より一番は、
楽しんでほしい。


それだけよ。