私のamour

神奈川雪枝

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暇すぎ。

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出会いは、出会い系。
インターネットの掲示板だった。

何もない退屈な日常。
経験のない若い私。
毎日が刺激もなく過ぎていく。

私は、大学生だった。
なんとなくで入った大学だった。

毎日の生活に覇気がない。
やる気がない。

そんな日々を脱却したかった。

嘘をついて、高校生と名乗った。

怖くて、顔写真は乗せなかった。
名まえも偽名だ。

メールはたくさんきた。
でもどれも顔見せてって内容ばかりだった。

うんざりした。
顔に自信がない。
悪くはないとは思うけど、良いとも思えない。

会うとか、考えても見なかった。

37歳の藤島さんと会うまでは。

こんにちわ。
若いね。17才なんだ。(笑)
僕とは20歳差だね。
年上の男性はどうかな?
良ければ、君の初めてを頂きたいな。

こんなメールだった。

本当の私は21歳で、
未成年ですらなかった。

どうする?
会ったら、歳嘘ついてたのばれるかな?
童顔だから大丈夫かな?

私は経験してみたかったのだ。

待ち合わせは、駅。
仕事終わりに来るから、スーツだよって言ってた。

高校生に見える服装を考えに考えた私は、
ワンピースを着てきた。

(本当に、やるのかな?)

駅前でぼんやりと考える。
待ち合わせまで後30分もある。

本当に来るの?
私でいいの?
すごいおっさんがきたらどうしよう?

悩みが尽きない。

心臓が緊張でドキドキする。

(これが、刺激?)

お疲れ様。
仕事終わったよ。
もうすぐで駅に着くからね。

と、藤島さんからメールが届いた。

(来る……!)

本当に、インターネットの掲示板で出会って、
駅で待ち合わせして、
ホテルに行くの?

(はぁ。)

想像つかない。

全然想像つかない。

だって、16歳も年が離れてるよ?

やるの?

本当に?


ぶぶっと携帯が震える。

着いたよ。
どこらへんにいるかな?

(来ちゃった、藤島さん。)

僕は今、コンビニの前にいるよ。
来てくれるかな?

足が震える。
手も震える。

ドキドキしながら歩を進めた。

駅前のコンビニに、
スーツの男性はいた。

唾を飲み込む。

「ふ、藤島、さん、です、か?」

「あかりちゃん、?」

「は、はい。」

「こんにちわ。
 ついてきて。」と、
彼は歩き出す。

藤島さんはすらっと背が高くて、
37歳には見えなかった。

ときどき後ろを振り返る藤島さん。

(ついていってます、ええ。
 どこ、いくんだろ。
 えってか、ホテルか。
 ホテル。)

頭で一人でざわざわする。

路地裏に入る。

ホテルはすぐにあって、
「ここ。」と私の手を引っ張る。

「あっ。」

そのまま、部屋をきめて、
エレベーターにのる。

「可愛いね。」

「そっ、そうですか?」

「緊張してるの?」

「して、ます。」

ちんと、エレベーターがとまる。

灯りのついている部屋に進む。

(初めて、入った。)

普通の部屋みたいだなって思った。

「あかりちゃん。」

ソファに誘導される。

「本当に、俺でいいの?」

藤島さんは私の身体を撫でまわしながら、囁く。

「あっ、はいっ。」

体がゾワゾワする。

「可愛いね。
 17才だもんなぁ。」

顎をくいっとあげられる。

目があった。

言葉なんていらなかった。

そのままベッドに移動して、
服を脱がされて、
愛撫をされて、
簡単に挿入されていた。

藤島さんは私を褒める。

可愛いね。
綺麗だね。

聞きなれない言葉に、
テンションも上がる。

行為が終わって、
彼の腕枕。

「あかりちゃん。」

「なんですか?」

「また、会ってくれる?」

「はい。」

それから私たちは週1で会った。

いつも駅で待ち合わせして、
ホテルにいって、
やる。

それだけの関係だった。

それだけで良かった。

何もないと思っていた私の日常に、
藤島さんとのエッチな日々が加わる。

私はその日が恋しかった。

無我夢中で私の身体を求めてくれる藤島さん。

1年すぎたころだった。

「あかりちゃん、もうすぐ卒業でしょ?」

「へ?」

「高校。最後くらい、制服きてきてよ(笑)」

「汚れちゃうもん。」

「だから、学校最後の日が終わったら着てきて。
 約束ね。」

うんともいやとも言えなかった。

(制服。
 家にあったかな?)

家のクローゼットを開けてみる。
制服はあった。

(はいるかな。)

試しにきてみた。

(こんなんで本当に喜んでくれるの?)

3月、
私は制服をきて、
駅にいた。

「あかりちゃん。
 本当にきてきてくれたんだね。
 ありがとう、嬉しいよ。」

藤島さんは嬉しそうで、
鼻歌を歌っていた。

この日は、部屋にはいるなり、
キスをされて、
胸をまさぐられ、
スカートをめくられた。

「あかりちゃん、かわいい。興奮する。」

キスをしながら、藤島さんは言う。

ベッドに流れ込む。

スカートははいたまま、
ぱんつだけを脱がされた。

そのまま、藤島さんの上に乗る。

「いいねぇ。」

藤島さんは下から私をつく。

「あっあっあっん。」

藤島さんは起き上がると、
私の後頭部を抑えながら、
キスをする。

制服は、藤島さんの精液で汚れた。

「ごめんね。
 クリーニングしてかえすから。
 これ、帰りきていって。」と、
紙袋から黒のワンピースを渡された。

「サイズ。」

「触ってるから、わかるよ。」

着てみると、サイズはぴったりだった。

藤島さんは、私のことをどう思ってる?
私はどう思ってるの?

援交なの?
でもお金はもらってない。

セフレ?
のわりには、私たちは年が離れすぎてない?

恋人でも友達でもない私たちの関係は一体なんなんだろう?

ある日、彼の腕枕でそれを問うた。

「藤島さん。」

「なに?」

「私たちっていったいどういう関係なんですか?」

「俺は好きだよ、あかりちゃんのこと。」

「でも、付き合ってない。」

「付き合う?(笑)
 こんなおっさんでいいのなら。」

「私でいいの?」

「そういう関係って、大切かな?
 俺は毎週癒されてるよ。」

「私も。」

「それでよくない?」

(私、でも、この関係に名前が欲しいです。)

とは言えなくて、
そうだねと返した。

だらだらとこの関係は続いた。
いつまで続くのかと思った。

「あかりちゃん、成人おめでとう。」

藤島さんが私に缶チューハイを渡す。

「ありがとう、ございます。」

(とっくに20歳こえてるけど。)

「あかりちゃん。
 実はおれ、前に腸をやってね。
 最近調子が悪くて、調べたら再発してて、
 今度入院してくるよ。」

「大丈夫、なんですか?」

「大丈夫(笑)」

そう言って笑った藤島さんを見たのが最後だった。

私たちは、メアドでしかつながってない。

返事がこなきゃ、私たちはどうしようもないのだ。

私の部屋には、あの日きた制服も、
貰った黒ワンピースもある。

でも、藤島さんだけ会えない。

退屈な日々から救いだしてくれた藤島さん。

連絡がないだけで、
病気が悪化したと考えるのはあまりに短絡的だ。

終わったのだ。

あの日、笑顔で藤島さんの秘密を教えてもらった瞬間、
私たちは終わったのだ。

3年ちょっとの関係でした。

雨の日も風の日も、
私たちは毎週金曜日、
駅で待ち合わせをしたね。

それだけが私にとっては愛しい日々でした。

私の本当の年齢を伝えられないまま、
終わってしまった。





大好きでした。










最初にメールをもらったときからずっと。
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