長谷川さんへ

神奈川雪枝

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大人の事情


通された部屋は和室だった。




「夜は部屋食みたいですよ。」と、

彼はコートを脱ぎながら私に話す。




ドキドキ緊張した。

会ったばかりの人と相部屋って大丈夫なんだろうか?と今になって不安になる。




「ところで、なんて呼べばいいですか?」と、

ふいに彼の顔が目の前に現れた。




「か、神奈川です。」




「神奈川さんですね。

 僕は、千葉です。」




朗らかに手を差し出されたので、

おずおずと手を握った。




ぎゅって一回力強く握られた。




長谷川さんと関係を持ってしまって以来、

長谷川さん以外と触れ合ってきてなくて、

顔が熱くなった。




「やっぱり、元気なさそうですね。

 失恋したんですもんね、そりゃそうか(笑)

 こんなに喋って、俺って元気ありあまってるな。

 初めてきたところだからテンション上がっちゃって(笑)」




フレンドリーに話しかけてくれるのにうまく話せない私に、

「とりあえず、風呂行きますか。」とタオルを渡してくれた。




あったかい温泉に雰囲気のいい露天風呂に、

私も少しテンションが上がった。




出ると、彼は待っていてくれて、

「牛乳飲めます?」と150円を私に渡した。




「すいません、ありがとうございます。」




「気にしないでください。

 一人だったんで、一緒に居てくれる人がいてくれてうれしいです。」




「私、貰ってばかりで。

 その、コロッケとか、牛乳まで。」




「コロッケ!美味しかったですよね?」




「はい。」




部屋に戻ると、食事の用意が済んでいた。




「お酒飲めます?」と、彼は私にメニューを渡した。




食事中、

千葉さんは会社の既婚者の女上司に尊敬が恋愛感情になってしまって、

忘年会の時に酔った勢いで関係を持ってしまったと話した。




1回だけのつもりがなんやかんやでずるずる続いてしまったと。




女上司が転勤になるから終わりになったのだと話した。




「上司が遠くにいってしまって、寂しいって思いもあるんですけど、

どこかでご家族にも申し訳なく思っていて、

ほっとした自分もいるんです。

でもやっぱりもう会えないって思うとなんだかやるせなくて、

有給とっちゃいました(笑)」




食事が終わって、

2組しかれた布団を見ながら、

窓辺で椅子に座って、

お酒を飲みながら千葉さんの話を聞いていた。




世間では不倫相手に同情するなんてありえないことだ。




でも、私には千葉さんの気持ちが痛いくらいわかる。




純粋に好きだった。




その人にはもうパートナーがいた。




体は繋がれるのに心はどこかちぐはぐで。




「か、神奈川さんっ?!」




気が付くと泣いていた。




「わかりますっ。

 私もやめようって、こんな関係よくないって頭ではわかっていたんですけど、




 でも、やっぱりっ好きでっ。




 関係を終わらせることが、辛くてっできなくてっ。」




千葉さんは私の隣にきてくれて、

頭を撫でてくれた。

























 オ ト ナ の 事 情 ( こ ど も の 言 い 訳 、 )



















長谷川さんっていう温もりを失くしたばっかりで。




目の前に居たのが千葉さんで。




お酒で理性はもうなくて。



















気づいたらキスをしていて。




求め合っていて。



















ぱって目が覚めたら、

4時で、

薄明るくて。




隣ですーすー眼鏡をとった千葉さんが眠っていて。










あぁ、酔った勢いでやってしまったという後悔と。







久しぶりに長谷川さん以外とした新鮮さと。










何より、大事に扱ってくれたという千葉さんの優しさが嬉しくて。







静かに泣いた。
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