今日もまた。

神奈川雪枝

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情けないという。

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「今日も、負けちゃった……。」

半年前から
私の家に転がり込んできた
無職の彼は、
私がお小遣いをあげると、

「倍にするから。」といって、
家を出て、

夜遅くに、
落ち込んだ様子で、
家に帰ってきて、
いつもの様にそう呟く。

「遅かったね?」

「遠いから、場所。」

「お風呂、入ったら?」

「ありがとう。」

浮浪者の彼と知り合ったのは、
飲んだ帰り道で、
アパートの近くの歩道橋で体育座りしていた彼に、
声を掛けたのがきっかけだった。

「家、ないんですか?」

「はい。」

目が合ったら、
とてもすんだ瞳をしていて、
でも、顔も髪の毛も汚くて、
オマケにくさくて。

関わるな。そう頭ではわかるのに、
「家、きます?」といっていた。

彼と私は同い年で、
若くして社長をしていたが、
倒産してしまい、
財産を全て失ったといっていた。

家にあげて、
直ぐに風呂に入らせた。

風呂から出ると、
彼はやはり整った顔をしていた。

お茶を出して、
身の上話をきいた。

そのまま、
私たちは共同生活をすることになった。

彼は日雇いのバイトを初めて、
そのうち固定のアルバイトをはじめた。

給料日になると、
私にデザートやお菓子をかってくれたり、
カフェやレストランにつれていってくれた。

でも、残った金は、
ギャンブルに溶かした。

貯金したら?というと、
少なさすぎる。
資本金にして、
増やしたいと、
彼はいう。

でも、彼はギャンブルにむいてなく、
いつも、全財産とかして、
帰ってきた。

馬鹿と思う。

彼は次の給料日まで、
私に何度か金を借りて日々を凌ぐ。

彼と寝るようになったのは成り行きで、
正社員にはならないの?ときくと、
彼はむすっとして、
私にキスをした。


負けた日々が続き、
共同生活して、3年になった。


今日も夜遅いが、
まだ彼は帰ってこない。

ガチャガチャと音がして、
彼が帰ってきた。

彼を見ると、いつもの様に落ち込んでると思ったら、
真っ直ぐに私を見つめて、

「ハローワークにいってきた。」

「え?」

「正社員、目指そうとおもう。」

「うそ?!」

「もう、ギャンブルはやめる。
俺には才能がないんだ。
よくわかったよ。
こんな俺にいつも付き合ってくれて、
ありがとう。
貯金、するよ。」

なんだか、涙がでそうになった。

「恵美、俺に声をかけてくれて、
本当にありがとう。
感謝してもしきれないよ。」

「恵美に、恩返ししないとね!」

彼の瞳相変わらず澄んでいた。

ずっとこのままだと思った。
得体の知れない男に惚れて、
ギャンブル依存症で、
負けっぱなしで、
将来なんて、
考えることすら、
無理だと思った。


「ありがとう、嬉しいよ。」

「俺、また頑張ってみようと思うから!」

「うん、頑張ってみてよ!」

私は泣きながら笑っていた。
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