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恐怖のサブリミナル

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その5

怪談   キ ツ ネ

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怪談  キ ツ ネ  その5                                   
                       
「お母さん、電話口に、こんな事を言ったんです」
     「あんたが住んでいるその家、
      お狐さんが困っているよ?
      帰るところがない、って
      訴えてる。だから、お前も
      伏せったまま、起きれない
      んだよ。
      嘘だと思うなら、近所で
      聞いてごらんよ」
「お母さんは昔から、妙に勘がいいところ、ありましたから。狐の石像の夢の話なんかしなくても、お母さんの口から、お狐さん、て言葉が出てきても、この時は、あんまり驚きはしなかったんです」
「ただ、なんでお狐さんが困っているのか、この時はわかりませんでした」
      「母さん、ちょっと用事が
       残っているから、直ぐには
       東京に行けないが、1週間
       以内には向かうから。
       何とかそのお狐さんに帰って
       戴くんだ。
       それまで頑張るんだよ?
       連れて行かれないように
       するんだよ?」
連れて行かれないようにする、というのは、若奥様にも、何となく分かったそうです。具体的には、例の夢の中で、どんなに怖くても我慢して、動かずに、狐の石像の中にいる事なんだ、と思ったそうなんですね。
ここでも不思議なのは、電話ではお母さんに、夢の話は一切していなかった点もそう。それ以上に、お母さんの勘の良さ、というだけで飲み込めてしまう、若奥様のお考え。
親子だから、というには、不思議過ぎます。
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