BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

庚寅

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5歳の僕 ♢学園編 2♢

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ヘーゼリオさんとの和やかな空気になってきた話し合いは、午後の授業が開始する前に鳴る予鈴の音で、一旦解散となった。
まだお互いに話したいことがあると意見も一致したので、明日もこれくらいの時間にここで待ち合わせることにした。
さっきまでのいざこざなんてなかった、という僕達の空気に、待ってくれていたルーとリディは複雑そうな表情だった。



リディは何か僕に訴えるようにグルグルと唸りながら移動の間中腕の中に縋り付いてきたけれど、さすがにずっと抱えて移動するのに疲れた僕に気が付いてすぐに降りて僕の手を引いてくれた。
座ってる時に膝に乗せるのはまだ大丈夫だけど、僕と共にリディも成長してるから、ずっと抱えて歩くのは無理なんだよね。
ルーは何も聞かず、言わずに付き従ってくれている。
眉間に僅かに寄った皺がルーの思いを物語ってるけど、主とする僕の意向を尊重してくれてるんだと思う。
内心はめっちゃ物申したいだろうな、と思いながらも僕も何も言わずにそんなルーに甘える事にした。



ルーは勝手に今日のことを誰かに報告したりはしないだろう。
雇い主は父様だが、僕を主として生涯仕えると、僕の専属執事になる事が決まった時、彼からそう誓ってくれた。
だから僕の意志を裏切る行為はしない。
…リディは、口止めしなくても、リディの言葉が理解出来のは黒帝様だけだから大丈夫。
理由がちょっとアレだけど、万が一黒帝様に話したとしても、人の営みや揉め事に首を突っ込むなんてしない、本来の聖獣様とは、そういう存在だ。
リディがちょっと僕に懐きすぎててイレギュラーなだけだ。



その後はいつもと変わらない時間を過ごした。
保健室で丁重にもてなされながらお昼寝をして、選択教科を1枠受ける。
放課後は兄様達の膝の上で生徒会のお仕事(の手伝い)。
邸に帰り、着替えて夕食。
兄様とお風呂。
そして兄様達に挟まれて就寝。
兄様達との舌の訓練で今日もふにゃふにゃにされて、落ちるように意識を手放した。
主人公に漸く会えたからか、久しぶりに前世の僕の夢を見た…気がする。
目が覚めた時には、既に殆どが靄がかかったように思い出せなくなっていた。
朝食を食べる頃には前世の夢を見ていたことも忘れていた。





♢♢♢




「レティの前世はどんなだったか、少しも覚えてないのか?」



昨日の約束通り、保健室に向かう途中の穴場の庭園の昨日と同じベンチでヘジィは待ってくれていた。
もう昨日のような不穏な空気は全くなくて、昨日とは別人のように穏やかに迎えられた。
ルーとリディはまだ警戒してるけど。
昨日と同じ位置で、会話は聞こえないけどいつでも動ける、という目でこちらを見ている。
ヘジィに謝ると、元は俺のせいだから気にしてない、と言われた。
名前も、前世持ち同士仲良くしようと言って、お互いを愛称で呼ぶ事になった。
前世の名前でもいいぞって言われたんだけど、僕はもう前世の僕自身の事をほとんど覚えてない事を正直に伝えて、前世の名前も分からないので断った。


「僕の前世の事は、産まれた時にはもう殆どが薄い記憶になっていて、その少し残ってたものも時間が経つほど少なくなってきてるんだ。
1番ハッキリ覚えてるのは、『キミセカ』の世界の話。
それが僕の前世での心の支えだったこと。
あとは…性別は男性。
16歳頃までは生きてたって記憶があった事と…僕も田舎に生まれ育ったよ。○○市って名前の所だったと思う。
家の屋根の色は緑。
僕の部屋の中のテレビ画面周りの景色に両親は健在だったこと。
……あとは…もう覚えてないなぁ…。
生まれた時には自分の名前も顔も思い出せなかった気がするし、両親も健在だったのは分かるんだけど面影とかも覚えてない。
日常の出来事なんかも母様のお腹の中に置いてきてしまったみたいだ。
それから思い出す事もなくて、少しずつ薄れて今の僕が濃くなってく感じ。
……ごめんね、ヘジィの期待に応えられなかったよね…」



思い浮かべながら話すのに夢中で、いつの間にかヘジィが泣きそうな顔になってたのに気が付かなかった。
瞳が揺れて色んな感情が混ざりあってるように感じる。
前世を忘れていってしまう僕に同情してくれてるのかもしれない。



「あ! あと、僕も同性愛者で周りに隠してたよ!
それでこっそり『キミセカ』してたんだ!
そこはヘジィと一緒だね!」



僕は気にしてないよって気持ちを込めて笑顔で言ったんだけど、ヘジィの顔は余計にくしゃりと歪んだ。
僕は何かしてしまったんだろうか。



「ヘジィ……?」



「───っ、悪ぃ、何でもねぇ」



そう言って顔を僕とは反対に背け、呼吸を繰り返してまたこっちを向いた時にはもう穏やかな顔に戻ってた。
目尻が少し赤く見えるのは、今日の日差しがいつもより少し強いからだろうか…



「ー詳しくは教えられねぇけど、お前が何でいるのか。
もしかしたら分かるかも知れねぇ。
知ってそうなやつに心当たりがある。
……ただ、なかなか掴まらねぇやつだから、いつ分かるかも、本当に分かるかも確かじゃねぇんだけど…」



ヘジィの意外な言葉に、咄嗟に返事も出来なかった。
僕の事が分かる?
分かる可能性があるなんて思いもしなかった。
ヘジィの心当たりとは、もしかして制作関係者の転生者でもいるんだろうか?
でも内緒って事はその人は正体を知られたくないってこと。
僕に直接問い詰めに来る位、その心当たりとの接触は難しいんだろう。
それでも、僕の事を気にかけて聞いてくれるんだ。



「ありがとう、ヘジィ」



僕が笑顔でお礼を言うと、ヘジィは少し寂しそうに笑った。





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