BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

庚寅

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7歳以降の僕 ♢就職編と見せかけて王宮編♢

前世のアイツと今世のアイツ (ヘーゼリオ(ヘジィ)視点)③

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思わぬ形で再会した前世の幼なじみの今世での名前は、レティシオ。
この国の貴族の頂点とも言える、マガリット公爵家の三男。
攻略対象者である兄弟の、ゲームには存在しなかった末弟。


そんな幼なじみの前世の記憶に残っているのは、その殆どが前世のBL恋愛ゲーム「キミセカ」に関することで、俺の事も、自分の親の事も、前世の自分自身の人生の殆ども忘れてしまっている様だった。
正直、住んでた場所地名をコイツが最初に言わなけりゃ、気付くのはもっと遅くなってたと思う。
それでも、レティシオのぽつりぽつりと辿るように教えてくれた前世のゲーム以外での記憶は、確かに俺の幼なじみのもので…。




僕の家のお隣さんの屋根は青色だったよ。
(ああ、俺の実家の屋根は確かに青だった)

小学校に行く途中にある家の犬が凄く吠えて怖かった。
(そうだな、いつも俺の影に隠れながら通ってた。)

僕、前世も年の頃より小さくて、よく女の子達にからかわれてたんだ。それがとても嫌だったのは覚えてる。
(あれは自分たちより可愛い顔したお前に嫉妬してたんだろ。今の自分の外見の事も良く分かってねぇみてぇだし。生まれ変わっても自分の事には疎いんだな、お前。)

思い出すのはいつも1人でいる時の事ばかりなんだよね。
(それ以外のことは思い出したくねぇのかもな。俺の事も、もしかしたら…。でも、それでいいのかもしれねぇ。俺の事も、悲しかったことも、あの電車に撥ねられた時の感覚なんか、思い出さねぇ方がいいに決まってる。)


その時の俺はただただ、レティシオの思い出せる前世を聞きながら、その小さな薄紅色の唇が動く様を眺めていた。





その日レティシオの話を聞いてから、俺の中での今世で生きる意味ってやつが変わった。
あれほど執着していた目当ての相手にも、無理に言い寄ろうとは思わなくなった。
ある意味1番望んでいた相手に会えた事で、色々きちんと考えられるようになったんだと思う。



実際、ゲームのキャラとしての彼は好きだったが、今世レティシオと一緒にいる彼も好きになったのかと聞かれたら、それは違うなって思う自分にも気付けた。
俺が好きだったのはゲームの中の、正統派で、完璧で、何をしてもかっこ良くて、主人公だけに愛を囁いてくれる、そんな彼だったから。


今、同じように学生して彼は、レティシオに夢中で、でもレティシオ兄に思うように近寄らせても貰えなくて…。
この世界の彼は正統派でかっこ良い完璧な人、と言うよりも、設定通りに文武両道、品行方正、誰から見ても完璧な王子様なのに、好きな人に思うように近寄れもしない、レティシオ本人には気持ちに気付いても貰えない、学園での1番は全部想い人の兄に取られてしまう。
そんな人間味を感じる、正直全部知ってて見てると、ちょっと情けなく見えちまうような、そんな人だった。
まあ、あの恐ろしい兄達相手じゃ何も出来ないのも仕方ないとも思うけどな。



でもそんな姿を目にする度、ここはゲームとは違うんだなと認識させられた。



それに、それ以外にも…もう、ゲームと違う所だらけ過ぎて…。
ハッキリ言って、それでもゲームの通りにできるなんて、俺には思えない位の環境にまで、その時既に周りが変化していた。


レティシオの兄達を頂点に、生徒会メンバー主導のもと " 天使を見守る会 ” なんて、レティシオを守るための組織が作られて、学園生徒の殆どが会員になったり。

その " 天使を見守る会 ” の規律が厳しくて、それでもより上部のレティシオに近い位置にいきたい会員達が、品行方正過ぎる位に学園生活を過ごし、国内派閥(親の宮廷内派閥とか貴族間の派閥とか反王族勢力とか)関係なく『全ては天使レティシオの平穏な日常を守る為に』を合言葉に纏まってるもんだから、今までにない程に問題も起きず平穏が保たれた学園内では学園長はもちろん、学園教師陣も諸手を挙げてこの会の存在を支持した。
そりゃあもう、様々な所に融通、優遇されて学園行事でもこの会は度々幅を効かせてた。
というか、もうこの会が色々牛耳ってた。


俺はもちろん会員には所属していなかったが、会上層部では俺とレティシオが個人として親しくしているのも黙認、という形で見守られていた。

レティシオ兄や会の連中からしたら、レティシオ個人として俺と話したりする時間を大切にしたいと思っている、と言うのが重要で。
だからこそ会員でもない、公爵家との縁もなく格式も釣り合わない、もっと言えば出会い頭に掴みかかるという、今思えばあの恐ろしい兄二人に密かに抹殺されてもおかしくないような事をした俺が、釘は刺されたが…まあ、元幼なじみとの縁も切らずに平穏無事には過ごせてる。



そんな俺とは違い、私欲や家からの言い付けでレティシオと接触した奴らの末路は恐ろしくて口にできない。
きっと俺がたまたま知った話もほんの一部だろうし、恐ろしくて口外なんてできないしな。
この辺の事に関しては、どうやら俺の推し元俺のお目当てを筆頭に王族も噛んでるらしいから、深入り厳禁だ。
本当に、ゲームのキャラ設定どこいったんだ。




ゲームから変わっちまった事は他にもまだある。

俺が気がついた時には、レティシオの傍には聖獣の長とも言うべき黒龍の次代が常に侍っていたり。

レティシオの兄二人なんて、もうゲームの設定の枠ぶち破って色々規格外になってるし。
もう性格やなんかも別人な気がする。
ゲーム通りなのは見た目だけなんじゃねぇかってくらい。

そもそもレティシオが1番ゲームの世界枠から飛び出ている。
ゲームにいなかったって話は置いとくとしてもだ。
幼児なのに学園に通ってるのでさえおかしいのに、本人遊び感覚で新しい、若しくは飛躍的改変をされた魔道具や魔術式ぽんぽん世に出すし。
それが本人の知らん所で国の色んな問題解決したり、他国との関係円滑にしたり、戦争が回避されるほどの起因となったり。

それも本人がまだ魔力成長すら訪れてないのに、だ。

本人学校の授業受けてるだけのつもりで作った物が、周りの命救ったり他国救ったり自国発展させたり。

兄以上の規格外。

本人まだモブのつもりとか、本当に溜息しか出てこない。

当然自分を取り巻いてるアレもこれもなんも気付いてない。

生まれ変わっても相変わらずのアイツは、自分の事になると途端にてんでさっぱりだ。




そんな飛び抜けた才能と賞賛と人心を掴んだ元幼なじみを取り巻くその異様とも言える環境は、学園在学時のみならず、学園卒業後も変わらず続いていた。
いや、寧ろ拡大していた。



元幼なじみは在学中に、既に魔道具研究所所員や王宮魔道士団員の敬慕や崇拝の対象になっていたし、在学中に生み出した魔道具が各騎士団生存率を著しく上げた事で騎士団内での支持や人気も今や、不動のものになっている。


そして内宮、つまり内政に関わる者たちの中にも既存の派閥を超えたレティシオ派天使を見守る会がじわじわと勢力を拡げている。
ぶっちゃけレティシオが入学して天使を見守る会が出来てから会員になった奴らは、将来王宮内で仕事するだろうレティシオと共に在る為に、様々な汚く醜い謀略策略渦巻く王宮内でレティシオを煩わせることなく平穏に過ごして貰う為にと、しのぎを削って限りあるその枠を自分のものにせんと競い合った。
その結果学園内の水準が上がり、それも学園側からの会への支持に繋がったんだが、まあそれは俺には関係ないし置いとくとして。


問題は、そのおかげで前世の記憶があるってアドバンテージのある俺ですら、ぜんっぜん学園の誉組枠内に引っ掛かる事も出来ない位にまで異様に水準が上がり過ぎちまってるって事だ。
ただでさえ競争率の高い王宮への出仕って出世枠の道が、希望者達のレベルの高さのせいで驚く程に狭き門となってしまってる。


もれなく俺も落ちたよ。内宮出仕枠。
おかげでレティシオの下の兄の方に声掛けられて、あいつの家が受け持ってるっつう王家直属の仕事の方の裏方構成員枠として、魔道士団に裏口入団させられたよ!
俺の魅了は使えるから丁度いいとか言ってたよあの性悪!
インテリお色気優男設定どこいったよ!


レティシオを直接見られる、しかも直轄になる魔道士団と魔道具研究所は、そんな狭き門の内宮よりも人気だったからな!
表から正式入団なんて、魅了の力使うしか脳のない俺には無理無理!
まあ、そこ見込まれてってのと、レティシオが気を許してる奴って事で声掛けられたんだけどよ。
そんときは、仕事にあぶれる危機乗り越えれたと思ってラッキーとか思っちまったわ!
内容聞いて、仕事し始めて即行受けたこと後悔したわ!
こえーよマガリット公爵家!
いや、末端の俺なんかが知ってるのはほんとまだ表面のちょっと下の部分位の情報なんだろうけどよ。
そんでこれもレティシオには全然教えてないとか!
ホントどんだけだよ!って心の中で叫んだわ!
心の中でな!

恐ろしくて口には出せないからな…。

俺も命は惜しい。





そんなこんなで、俺が学園卒業後から所属している魔道士団第2小隊も、隊長がレティシオと在学時期が被ってて、設立初期からの天使を見守る会会員であるって所から、色々察して欲しい。


まあ、魔道士団内にレティシオを慕っていないヤツなんか恐らく居ないだろうが…。


先日、レティシオが俺を個人的に訪ねてきた時に応対したらしい隊長の、それ以降俺を見る時の表情と言ったら…。
古株会員である隊長は、そりゃあ直接俺に何か言うことも、レティシオの妨げになる様なこともしない。
俺にレティシオとの渡りを付けろなんて間違っても言わないし、周りに言い広めたりもしねぇ。


でも、ふとした時のあの表情。


そりゃ羨ましいんだろうよ。
そりゃそうだよな。
お前らからすりゃあな!


だけどな。
俺からすりゃあすっげえ面倒だよ!
レティシオとちょっと話すんのにも、人目死ぬほど気にしてるよ!

怖えよ!

止めてくれよその、羨望と嫉妬と苦渋混ぜ込んだみてーな顔は!

ほんと勘弁してくれよ。
隊での仕事ん時くらい、平穏に過ごさせてくれ…。




そんな気持ちでレティシオに相談ってか頼み込んだってか、こう、誰にも気付かれないようにこっそり連絡取れる方法ねぇのかって話が元になって、レティシオがまた世界揺るがす位の画期的魔道具作り出しちまうのはもう少し先の話だ。


その相談した時のレティシオは、まだここがゲームの世界だって思いが強いみたいだった。

ほんと、こんな違うことしか無いのに、まだモブのつもりかよ、お前。

つーかいい加減、せめてあの兄二人と王子の気持ちくらいは気が付いてやれよ
そんで面倒なこと全部、喜んで引き受けてくれる周りの奴らに任せて、とっとと幸せになっちまえば良いんだ。
……まあ、そうは言っても、身体はまだ幼児ガキだからな。
しゃーねぇから、もう少し、お前のうだうだに付き合ってやるよ。

今度は俺も間違えねぇからよ。
お前がいつでも何でも相談できる相手ってやつ位には、俺でもなれるよな?


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