5 / 11
先の見えない入り口
先の見えない入り口 ~願望を叶えるために~ 3
しおりを挟む
あの夜、どうやって一人暮らしのワンルームマンションまで帰ってきたのか…… 優也ははっきりとは覚えていませんでした。
確かなのは森沢真由美先生の秘密の「副業」に打ちひしがれ、電車から降りてからこの場所まで、誰もいない暗い道をとぼとぼと歩きながら辿り着いた事だけです。
ワンルームマンションの部屋に着くなり、着替えもせずにベッドに倒れ込み、そのまま深い眠りに落ち込んでしまったのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どれほどの時間が経ったのでしょうか。
優也ははっと目を覚ますと慌てて時計を見ました。時間は23時を少し回ったところです。
ベッドから這い上がり、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、渇いた喉を潤すために一気に飲み干しました。
身動きせずベッドに座りながら、今日の出来事をひとつづつ辿っていました。
進路指導室で真由美先生から勉強に打ち込むよう説教された事……
電車の中で見つめ続けた先生の美しい横顔……
繁華街の路地の奥にある男性向けの性感エステ店に入る先生の後ろ姿……
目の奥に残る光景を幾度も辿るうちに、優也は少し冷静になって自分の立場を考えました。
(もしかしたら、僕は先生の決定的な弱みを握ったってことじゃないか…… この事を誰にも言わない条件で、先生に僕のお願いを叶えてもらうことが出来るのかも…… 今までは単なる妄想の中で我慢していた事か、ひょっとしたら現実になるんじゃないか?)
優也自身、真由美に抱く想いは、どうあがいても遂げらるもので無いことは知っています。ですが、それを認めてしまうと、全ての望みが絶たれた後の虚しさが怖くて現実から目を背けていたのです。
(先生から嫌われたり憎まれたりする事を受け入れさえすれば、今日の出来事は僕にとってはチャンスなんだ。だって、あんな店で客にいやらしい事をしている先生の責任なんだから……)
しかし、もし真由美に性感エステ店での「副業」を否定されたら、それを認めさせる証拠は何ひとつありません。
ビルに入る先生の姿をスマホで撮影しても、性感エステ店とは別のフロアに行ったと言われたらそれまでです。
店のある5階で証拠写真を撮ったら、その場で店の人に取り押さえられ、酷い目に合わせられるに違いありません。
それに店のサイトにあるプロフィール写真だって、顔の半分しか写っていないのですから証拠にはなりません。
(真由美先生が秘密を否定して、根も葉もない事で僕から恐喝されたと学校に報告したら、退学はおろか警察に逮捕されてしまう…… 大学にも行けないし、友達にも会えない)
優也は手元にあった鏡を手に取ると、自分の顔を様々な角度からチェックしました。暫くしてから溜め息をつき、鏡を傍に置いてうなだれます。
(やっぱり駄目だ…… どう見たって未成年者だもんな。本当は客として真由美先生と2人きりの時間を過ごせれば1番いいのに、その前に未成年者だからって入店を断られるに決まっている)
客として真由美先生からの性的施術を受けることも、証拠を突きつけて交換条件で願望を叶えてもらうことも不可能に思えてきました。せっかく掴んだ先生の秘密を利用することも出来ずに、今までと同じように悶々とした日々を過ごすしかないのです。
優也は途方にくれたように手に持ったスマホで店のサイトをぼんやりと眺めていました。ふと、店の電話番号が目に止まります。
(とりあえず、電話だけでもしてみよう……)
それは真由美先生があの店の中でどのような事をしているのか、少しでも詳しく知りたいという思いからでした。電話番号のリンクをタッチすると、呼び出し音が二回ほど鳴ってから優しげな声の女性が出ました。
「はい、貴賓館です」
優也は思わず慌てて電話を切りました。男性が電話に出るものと思っていたのに、女性の声だったので焦ってしまったのです。
(何だよ…… そんなことでぐらいで慌ててたら何も出来ないじゃないか)
ふと気が付いて、スマホの電話機能を非通知に切り替えました。店に自分の電話番号を知られるのが怖かったのです。
落ち着きを取り戻そうと一呼吸置いてから再び店の電話番号にタッチしました。
「はい、貴賓館です」
先程と同じ美しい声で女性が電話に出ました。
「あの…… すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが」
優也は務めて落ち着いた大人の声を装って話しました。
「そちらのお店のシステムを教えてくださいますか」
やっとの思い口にした言葉でした。
「お問い合わせ、ありがとうございます。こちらは男性の方に特別な癒しと安らぎをご提供するサービスをしております。個室の中で当店のエステテシャンから特別な施術をさせて頂きます」
「あ…… あの、特別な施術ってどんなことするんですか」
優也は大体は察しがついていました。出来ればこの女性からの言葉で聞きたかったのです。乾いた口の中で舌が絡れて流暢に話せません。
未成年と思われないよう必死に大人の口調を演じましたが、意識すればする程、かえって不自然な話し方になってしまいます。
(落ち着け…… たかが電話じゃないか)
優也はもう一度、深く深呼吸をしたのです。
確かなのは森沢真由美先生の秘密の「副業」に打ちひしがれ、電車から降りてからこの場所まで、誰もいない暗い道をとぼとぼと歩きながら辿り着いた事だけです。
ワンルームマンションの部屋に着くなり、着替えもせずにベッドに倒れ込み、そのまま深い眠りに落ち込んでしまったのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どれほどの時間が経ったのでしょうか。
優也ははっと目を覚ますと慌てて時計を見ました。時間は23時を少し回ったところです。
ベッドから這い上がり、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、渇いた喉を潤すために一気に飲み干しました。
身動きせずベッドに座りながら、今日の出来事をひとつづつ辿っていました。
進路指導室で真由美先生から勉強に打ち込むよう説教された事……
電車の中で見つめ続けた先生の美しい横顔……
繁華街の路地の奥にある男性向けの性感エステ店に入る先生の後ろ姿……
目の奥に残る光景を幾度も辿るうちに、優也は少し冷静になって自分の立場を考えました。
(もしかしたら、僕は先生の決定的な弱みを握ったってことじゃないか…… この事を誰にも言わない条件で、先生に僕のお願いを叶えてもらうことが出来るのかも…… 今までは単なる妄想の中で我慢していた事か、ひょっとしたら現実になるんじゃないか?)
優也自身、真由美に抱く想いは、どうあがいても遂げらるもので無いことは知っています。ですが、それを認めてしまうと、全ての望みが絶たれた後の虚しさが怖くて現実から目を背けていたのです。
(先生から嫌われたり憎まれたりする事を受け入れさえすれば、今日の出来事は僕にとってはチャンスなんだ。だって、あんな店で客にいやらしい事をしている先生の責任なんだから……)
しかし、もし真由美に性感エステ店での「副業」を否定されたら、それを認めさせる証拠は何ひとつありません。
ビルに入る先生の姿をスマホで撮影しても、性感エステ店とは別のフロアに行ったと言われたらそれまでです。
店のある5階で証拠写真を撮ったら、その場で店の人に取り押さえられ、酷い目に合わせられるに違いありません。
それに店のサイトにあるプロフィール写真だって、顔の半分しか写っていないのですから証拠にはなりません。
(真由美先生が秘密を否定して、根も葉もない事で僕から恐喝されたと学校に報告したら、退学はおろか警察に逮捕されてしまう…… 大学にも行けないし、友達にも会えない)
優也は手元にあった鏡を手に取ると、自分の顔を様々な角度からチェックしました。暫くしてから溜め息をつき、鏡を傍に置いてうなだれます。
(やっぱり駄目だ…… どう見たって未成年者だもんな。本当は客として真由美先生と2人きりの時間を過ごせれば1番いいのに、その前に未成年者だからって入店を断られるに決まっている)
客として真由美先生からの性的施術を受けることも、証拠を突きつけて交換条件で願望を叶えてもらうことも不可能に思えてきました。せっかく掴んだ先生の秘密を利用することも出来ずに、今までと同じように悶々とした日々を過ごすしかないのです。
優也は途方にくれたように手に持ったスマホで店のサイトをぼんやりと眺めていました。ふと、店の電話番号が目に止まります。
(とりあえず、電話だけでもしてみよう……)
それは真由美先生があの店の中でどのような事をしているのか、少しでも詳しく知りたいという思いからでした。電話番号のリンクをタッチすると、呼び出し音が二回ほど鳴ってから優しげな声の女性が出ました。
「はい、貴賓館です」
優也は思わず慌てて電話を切りました。男性が電話に出るものと思っていたのに、女性の声だったので焦ってしまったのです。
(何だよ…… そんなことでぐらいで慌ててたら何も出来ないじゃないか)
ふと気が付いて、スマホの電話機能を非通知に切り替えました。店に自分の電話番号を知られるのが怖かったのです。
落ち着きを取り戻そうと一呼吸置いてから再び店の電話番号にタッチしました。
「はい、貴賓館です」
先程と同じ美しい声で女性が電話に出ました。
「あの…… すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが」
優也は務めて落ち着いた大人の声を装って話しました。
「そちらのお店のシステムを教えてくださいますか」
やっとの思い口にした言葉でした。
「お問い合わせ、ありがとうございます。こちらは男性の方に特別な癒しと安らぎをご提供するサービスをしております。個室の中で当店のエステテシャンから特別な施術をさせて頂きます」
「あ…… あの、特別な施術ってどんなことするんですか」
優也は大体は察しがついていました。出来ればこの女性からの言葉で聞きたかったのです。乾いた口の中で舌が絡れて流暢に話せません。
未成年と思われないよう必死に大人の口調を演じましたが、意識すればする程、かえって不自然な話し方になってしまいます。
(落ち着け…… たかが電話じゃないか)
優也はもう一度、深く深呼吸をしたのです。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる