教師真由美の密かな「副業」 〜教師と生徒、2人だけの交換条件〜

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2つの現実の狭間で

2つの現実の狭間で ~自分だけの「もう1人」の先生~ 2

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 英語の授業の終わりを告げるチャイムが教室に鳴り響きました。担任教師の森沢真由美は教材を片付けながら、2時限目の世界史の授業が担当教員の用事のため自習とすることを生徒達に連絡しました。

「世界史の自習をしてもいいですし、英語の自習をしてもいいですよ。もちろん、期末テストに向けて弱点科目の勉強をするのもいいです」

 授業が中止になって喜ぶ生徒達を制するように、真由美は続けます。

「ただし、笹山君と真壁君の2人は昨日の進路指導の続きをしたいので、後で面談室に来て下さいね。最初は笹山君からでいいかな」

 真壁優也と笹山は慌てて頷きました。

「真壁、森沢先生はお前に厳しいなぁ…… また叱られるのか?」
「森沢先生は女子生徒には優しいけど、男子生徒には厳しいよな。その中でも特にお前にはな」

 隣の席の岩田と、後ろの席の清水が笑いながら話しかけてきます。

「知らないよ、小言ばかりで嫌になるよ」

 そう言いながら優也は教室を出ようとする真由美先生の姿を目で追いました。

「先生、森沢先生!」

 3人の女子生徒がスマホを出しながら楽しそうに先生の後を追います。

「先生、見て見て。昨日、新曲の動画がリリースされたんだよ」

「あら、本当?」

 それは男性K-POP グループの新曲ビデオが動画サイトにリリースされたのを、先生にも教えようと女子生徒達が声をかけてきたのでした。

「んー! なかなか素敵ね。上川さんのイチオシの子もカッコいいね」

 スマホを覗き込みながら生徒達と楽しそうに話す真由美先生の姿を、優也は羨ましそうに見ていました。彼女は厳しい面もありますが、生徒思いで親身に相談にのってくれたりもするので、女子達からも人気があったのです。

 …… 僕には見せてくれない笑顔だな……
 …… やっぱり先生に嫌われているのかな……
 …… だけど、そんなことはもう、どうでもいいんだ……
 …… 僕はゲームに例えれば、最強の魔法と武器を手に入れたんだから……

 優也はポケットの中のスマホに触れました。今、この中には彼にとって大切な「魔法」と「武器」が入っているのです。

 優也はこのスマホで、真由美先生の副業先である貴賓館での勤務スケジュールを知ったり、施術をした客と彼女が交換したメッセージの内容を読んだりと、誰も知らない「もう1人の先生」の姿を密かに見る「魔法」を使うことが出来るのです。

 例えば、真由美先生の性感帯については、学校の誰も知る由もないことでしょう。彼女のプロフィール欄にある、胸や背中、首筋などを男性に触れられることで、女性としての悦びに浸れると書かれたメッセージを優也は知っていました。

 それだけではありません。真由美先生の意思に反してでも、「もう1人の先生」であるセラピストの「由紀子」から、客として性の施術を受けるための「武器」でもあるのです。
「交換条件」の使いようによっては、真由美先生そのものを、自分の意のままに操る究極の武器となる筈です。

 しかし今の優也には、それを使うための非情さと覚悟が足りないのかも知れません。まだ、そこまでの「大人」ではないのです。

 真由美先生から最初に面談室へ来るように言われた笹山が教室から出て行きました。優也は気恥ずかしそうな彼の後ろ姿を見ながら、次が自分の番であることを思うと次第に鼓動が早まります。

 ……  先生と2人きりになっても、今までと同じように普通に話すことが出来るのかな……
 ……  むしろ秘密を知ったことで僕の方が意識しちゃって、しどろもどろになって変な生徒と思われないかな……

 性体験の無い優也にとっては、ずっと密かに想い続けている女性と2人きりなる事だけも、胸が押し潰されそうになるのです。それに加えて、その本人の秘密を知ってしまったから尚更です。

 ……  もし、客として先生からサービスを受けても、その事で先生に嫌われたくない……
 ……  ましてや、先生の体目当てで「交換条件」を出して脅迫するなんて犯罪じみた事、怖くて出来ないよ……

 優也は迷路の中で出口を求めて彷徨っているようでした。出口らしいものに近づいたと思っても、それは陽炎のように遠くに離れていくのです。

 彼にとっては、とりあえず目先の計画を遂げる事が何よりも最優先でした。思惑通りにキャンセル待ちの予約が取れて、定められた90分の間だけでも真由美先生の体で想いを遂げたいのです。

 教師の戸が空いて、最初に真由美先生からの面談を受けた笹山が入ってきました。気が付けばもう20分程が経っています。

「真壁、次はお前だよ」

 笹山が声をかけてきます。すぐに他の生徒が彼から面談の内容を聞き出そうとして近づいていきました。笹山は、にやけた顔で声を潜めて真由美先生のことを話しているようです。

 優也はそれを横目で見ながら、ノートと筆記用具を持って教室を出て行ったのです。
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