私には、姉が言っている乙女ゲームが理解できない。

irai

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妹は、王子よりもチョコレート。

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名残惜しそうにしながらも、レニーはチッチをロゼに渡して馬車へと乗り込んだ。



「まさか、本当にレニーが来るなんてね。」



そう言いながらミシェルが笑った。





私の弟のミシェル・アストレアは、私のしていた乙女ゲームの攻略対象のキャラクター。

基本的ににこやかで温厚な性格。頭の回転がとても速く、優秀な公爵家の跡取り息子。



そして、ミシェルの場合厄介なのが、選択肢を失敗するとヤンデレキャラになってしまうということ……。



愛情深く優しい一面、執着心の強いヤンデレ要素を持ち合わせているのだ。



クリっとした目は母に似て可愛らしく、薄いグリーンの瞳。



双子と言っても、ダニエルとは2卵生なのでそっくりというわけではない。





ダニエルは、どちらかというと武闘派で騎士を目指していたはず……。



奥手な性格でぶっきらぼうだが、純粋な性格で真っすぐにヒロインに気持ちを伝えるシーンはグッときた。



プレイヤーの間でも人気のキャラが弟だなんて……。



もしかすると、転生したんじゃなくて夢を見ているのかもしれない。



そんなことを考えている間に、王家の所有している庭園に到着した。









いよいよ王子との対面だ。



レニーのドレスも髪の毛も完ぺき……これなら大丈夫なはず。



「姉さん、大丈夫?」



「さっきから上の空だったよね。」



どうやら挙動不審に見えていたようだ。



「大丈夫よ。とにかく、レニーをしっかりと見張っておかないと……。」



すでに、ミシェルとダニエルは、しっかりとレニーの手を握っていた。

出遅れてしまった。



2人は、レニーを溺愛している。



わざわざ、王子たちの元へレニーを連れて行ってはくれないだろう。



どうにか、あの手をほどいて私がレニーの手を繋がなければ……。



まわりを見回すと、たくさんの令嬢が群がっている場所があった。



きっとあそこに王子がいるハズ……。



「ねぇ、チョコレートを取ってあげて来てくれない?」



「そうだね。ダニエル一緒に行こう。」



双子の弟を騙したようで、少し気が咎めるが……。



こんな所で婚約者を決められてしまえば、今後のストーリーが厄介なことになってしまう。



レニーの手を握り、王子たちの元へ向かおうとした。







「ごきげんよう、マリー嬢。一緒にいるのは、妹のレニー嬢ですか?」



後ろから声をかけてきたのは、この国の宰相の1人息子ドナルド・トマスだった。



彼も攻略対象の1人で、丁寧な口調のインテリキャラ。



しかし、ヒロインに好意を持ってからは少し強引に迫るギャップが人気だったはず……。



王子にとっても忠実で、ヒロインにも優しかったキャラクター。



「ふふっ、これが欲しいのかな?」



ん?ドナルドの手にはチョコレートのお菓子があった。



あぁ、レニーがじっと見ているから気を使ってくれたのだろう。



「いえ、今ミシェルとダニエルが取りに行ってくれているので……。」



レニーが、少し残念そうにしている。



「これは、王子たちに持って行こうとしていたモノなんだけど、囲まれているから食べてもいいですよ?」



ミシェルとダニエルを見ると、令嬢たちに囲まれているようだった。



「ありがとうございます。ほら、レニーもお礼を。」



「ありがとうございます。ドナルドさま。」



レニーは、差し出されたチョコレートを受け取りにっこりと笑ってお礼を言った。



「いいえ、それより珍しいね。いつものネコは、家で留守番ですか?」



父がドナルドの父ドリューと仲が良いので、彼は何度か家にも来ていた。



だから、レニーがチッチと一緒に過ごしているのを知っているのだ。



「えぇ、もうすぐ学園にも入学するので、レニーの人見知りとネコにベッタリなのを少し治そうと思いまして……。」



「確かに、そうだね。自分の神獣は一応連れてきてもいいけど、僕らにはまだまだ先の話しだから。」



ガオは大人しく、レニーの横に座っている。



確かに、高等部になると神獣を連れて学校へ来る人もいるけど……。



神獣に選ばれた女性なんて聞いたことがないし、ゲームでもあまり登場しなかったからそこは気にしなくても大丈夫だろう。





「あれ、ドナルドさま。どうしたの?」



ミシェルが、チョコレートを持って戻ってきた。



「挨拶をしていただけだよ。それより、ダニエルを置いてきたのですか?」



「だって、僕はまだ婚約者なんて決める気はないからね。」



ん?婚約者って言ったわよね。



「どういうこと?」



「マリー嬢は知らないのですか?この会は、いわば婚約者候補を決める為の集まりなんですよ。」



何回か出席してるけど、全く知らなかったわ。



だから、たまに花を渡してくる子息がいたのか……。



そうなれば、ますますレニーを早めに売り込まないといけないじゃない。





「おい、ミシェルなんで置いて行った。」



ダニエルが少し怒りながら帰ってきた。



ミシェルは一切悪びれる様子もなく、「だって、楽しそうに話してたじゃない。」と笑った。



「困ってたなんて全然気づかなかったよ。ごめんね?」



ダニエルはミシェルを睨みつけ「絶対にわざとだろう。」と言い放った。



「ふふっ、それじゃあ僕は頑張って王子たちの所へ行ってくるよ。」



ダニエルは、王子たちの元へ向かって行った。



なんて切り出そうかしら、レニーを溺愛する2人にとって王子の元へ行くと言えば邪魔されるだろうか……。



でも、招かれたのに挨拶しないのは失礼よね。

よしっ。この案なら、王子たちの元へ行っても不自然じゃないはず……。





「ごきげんよう。マリーと双子の弟くんたち。」



決心をした直後に声をかけてきたのは、リリアン・ヴィンセントだった。



ヒロイン候補の中では1番年上で、サバサバとした性格なのに恥ずかしがり屋というギャップのあるキャラクター。



金髪に、少し赤みがかった瞳が印象的で綺麗な見た目をしている。



活発で少し姉御的な雰囲気。攻略対象から迫られた時のシーンが最高だった……。



「連れているのは、妹のレニー嬢かな?マリーの1つ年上の、リリアン・ヴィンセントだよ。」



「あぁ、紹介しますわ。妹のレニーです。」



「…ごきげんよう。リリアンさま。」



たどたどしく挨拶をしたレニーに、よくできましたとミシェルが頭を撫でた。



「可愛いわねっ!ビビアンが小さかった頃を思い出すわ。お姉ちゃんっていつも……。」



「お姉さま!恥ずかしいのでやめてください。」



リリアンに声を張り上げたのは、妹のビビアン・ヴィンセントだった。



私の同級生で、おっとりとした優しい性格をしている。



奥手な彼女が、頑張って攻略対象に気持ちを伝えるシーンは感動したなぁ……。



赤みがかった髪の毛に、ハッキリとした目鼻立ち……でもレニーの方が可愛いだろう。



「ふふっ、ごきげんようビビアン。」



乙女ゲームにも色々な種類があって、悪役令嬢が1人の場合と複数いる場合がある。



私がしていた”王子の囁き”では、プレイするヒロインによって悪役令嬢が変わっていた。



つまり、今は仲の良いこの2人でさえ悪役令嬢になる可能性があるということだ……。



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