3 / 13
妹は、王子よりもチョコレート。
しおりを挟む名残惜しそうにしながらも、レニーはチッチをロゼに渡して馬車へと乗り込んだ。
「まさか、本当にレニーが来るなんてね。」
そう言いながらミシェルが笑った。
私の弟のミシェル・アストレアは、私のしていた乙女ゲームの攻略対象のキャラクター。
基本的ににこやかで温厚な性格。頭の回転がとても速く、優秀な公爵家の跡取り息子。
そして、ミシェルの場合厄介なのが、選択肢を失敗するとヤンデレキャラになってしまうということ……。
愛情深く優しい一面、執着心の強いヤンデレ要素を持ち合わせているのだ。
クリっとした目は母に似て可愛らしく、薄いグリーンの瞳。
双子と言っても、ダニエルとは2卵生なのでそっくりというわけではない。
ダニエルは、どちらかというと武闘派で騎士を目指していたはず……。
奥手な性格でぶっきらぼうだが、純粋な性格で真っすぐにヒロインに気持ちを伝えるシーンはグッときた。
プレイヤーの間でも人気のキャラが弟だなんて……。
もしかすると、転生したんじゃなくて夢を見ているのかもしれない。
そんなことを考えている間に、王家の所有している庭園に到着した。
いよいよ王子との対面だ。
レニーのドレスも髪の毛も完ぺき……これなら大丈夫なはず。
「姉さん、大丈夫?」
「さっきから上の空だったよね。」
どうやら挙動不審に見えていたようだ。
「大丈夫よ。とにかく、レニーをしっかりと見張っておかないと……。」
すでに、ミシェルとダニエルは、しっかりとレニーの手を握っていた。
出遅れてしまった。
2人は、レニーを溺愛している。
わざわざ、王子たちの元へレニーを連れて行ってはくれないだろう。
どうにか、あの手をほどいて私がレニーの手を繋がなければ……。
まわりを見回すと、たくさんの令嬢が群がっている場所があった。
きっとあそこに王子がいるハズ……。
「ねぇ、チョコレートを取ってあげて来てくれない?」
「そうだね。ダニエル一緒に行こう。」
双子の弟を騙したようで、少し気が咎めるが……。
こんな所で婚約者を決められてしまえば、今後のストーリーが厄介なことになってしまう。
レニーの手を握り、王子たちの元へ向かおうとした。
「ごきげんよう、マリー嬢。一緒にいるのは、妹のレニー嬢ですか?」
後ろから声をかけてきたのは、この国の宰相の1人息子ドナルド・トマスだった。
彼も攻略対象の1人で、丁寧な口調のインテリキャラ。
しかし、ヒロインに好意を持ってからは少し強引に迫るギャップが人気だったはず……。
王子にとっても忠実で、ヒロインにも優しかったキャラクター。
「ふふっ、これが欲しいのかな?」
ん?ドナルドの手にはチョコレートのお菓子があった。
あぁ、レニーがじっと見ているから気を使ってくれたのだろう。
「いえ、今ミシェルとダニエルが取りに行ってくれているので……。」
レニーが、少し残念そうにしている。
「これは、王子たちに持って行こうとしていたモノなんだけど、囲まれているから食べてもいいですよ?」
ミシェルとダニエルを見ると、令嬢たちに囲まれているようだった。
「ありがとうございます。ほら、レニーもお礼を。」
「ありがとうございます。ドナルドさま。」
レニーは、差し出されたチョコレートを受け取りにっこりと笑ってお礼を言った。
「いいえ、それより珍しいね。いつものネコは、家で留守番ですか?」
父がドナルドの父ドリューと仲が良いので、彼は何度か家にも来ていた。
だから、レニーがチッチと一緒に過ごしているのを知っているのだ。
「えぇ、もうすぐ学園にも入学するので、レニーの人見知りとネコにベッタリなのを少し治そうと思いまして……。」
「確かに、そうだね。自分の神獣は一応連れてきてもいいけど、僕らにはまだまだ先の話しだから。」
ガオは大人しく、レニーの横に座っている。
確かに、高等部になると神獣を連れて学校へ来る人もいるけど……。
神獣に選ばれた女性なんて聞いたことがないし、ゲームでもあまり登場しなかったからそこは気にしなくても大丈夫だろう。
「あれ、ドナルドさま。どうしたの?」
ミシェルが、チョコレートを持って戻ってきた。
「挨拶をしていただけだよ。それより、ダニエルを置いてきたのですか?」
「だって、僕はまだ婚約者なんて決める気はないからね。」
ん?婚約者って言ったわよね。
「どういうこと?」
「マリー嬢は知らないのですか?この会は、いわば婚約者候補を決める為の集まりなんですよ。」
何回か出席してるけど、全く知らなかったわ。
だから、たまに花を渡してくる子息がいたのか……。
そうなれば、ますますレニーを早めに売り込まないといけないじゃない。
「おい、ミシェルなんで置いて行った。」
ダニエルが少し怒りながら帰ってきた。
ミシェルは一切悪びれる様子もなく、「だって、楽しそうに話してたじゃない。」と笑った。
「困ってたなんて全然気づかなかったよ。ごめんね?」
ダニエルはミシェルを睨みつけ「絶対にわざとだろう。」と言い放った。
「ふふっ、それじゃあ僕は頑張って王子たちの所へ行ってくるよ。」
ダニエルは、王子たちの元へ向かって行った。
なんて切り出そうかしら、レニーを溺愛する2人にとって王子の元へ行くと言えば邪魔されるだろうか……。
でも、招かれたのに挨拶しないのは失礼よね。
よしっ。この案なら、王子たちの元へ行っても不自然じゃないはず……。
「ごきげんよう。マリーと双子の弟くんたち。」
決心をした直後に声をかけてきたのは、リリアン・ヴィンセントだった。
ヒロイン候補の中では1番年上で、サバサバとした性格なのに恥ずかしがり屋というギャップのあるキャラクター。
金髪に、少し赤みがかった瞳が印象的で綺麗な見た目をしている。
活発で少し姉御的な雰囲気。攻略対象から迫られた時のシーンが最高だった……。
「連れているのは、妹のレニー嬢かな?マリーの1つ年上の、リリアン・ヴィンセントだよ。」
「あぁ、紹介しますわ。妹のレニーです。」
「…ごきげんよう。リリアンさま。」
たどたどしく挨拶をしたレニーに、よくできましたとミシェルが頭を撫でた。
「可愛いわねっ!ビビアンが小さかった頃を思い出すわ。お姉ちゃんっていつも……。」
「お姉さま!恥ずかしいのでやめてください。」
リリアンに声を張り上げたのは、妹のビビアン・ヴィンセントだった。
私の同級生で、おっとりとした優しい性格をしている。
奥手な彼女が、頑張って攻略対象に気持ちを伝えるシーンは感動したなぁ……。
赤みがかった髪の毛に、ハッキリとした目鼻立ち……でもレニーの方が可愛いだろう。
「ふふっ、ごきげんようビビアン。」
乙女ゲームにも色々な種類があって、悪役令嬢が1人の場合と複数いる場合がある。
私がしていた”王子の囁き”では、プレイするヒロインによって悪役令嬢が変わっていた。
つまり、今は仲の良いこの2人でさえ悪役令嬢になる可能性があるということだ……。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる