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第131話 エルザ妃の傷
しおりを挟む夜になり、セストが私たちを応接間に集めました。
「今夜、聖女様にエルザ妃の解呪を試していただき……それを終えたら、明日の朝一番で王都に向かいます。
すでに王都の間際までドラゴンが迫っていると知らせが入っています。聖女様に国に戻っていただき、結界を張る手はずはもう整えています。
聖女様が王都にまで戻られれば、魔物たちから国は守られるはず」
それで、とセストが私に言いました。
「ルチル様、解呪の前に、エルザ妃があなたと二人だけで話したいと」
◇◇◇
エルザ妃の部屋の前で、私はどこかほっとしていました。
二人きりで話したいと言われて、よかったと。
ルカは、エルザ妃の解呪の時には自分を呼べと言っていましたが、二人が顔を合わせて……これはもしもの話ですけれど、親し気に話されたら、なんだか私、どうにもいたたまれない気持ちになってしまったような気がするのです。
だって、エルザ妃は、夢渡でやってきたとき、ルカのことが好きで、それにルカも……多分、彼女のことを嫌いじゃない気がするんです。
昔の恋人で、終わった話だと言っても、それでも…………
「ルチル様、どうぞ」
考え込んでいる私を、侍女が部屋に案内します。私は深呼吸を一つして、部屋に足を踏み入れました。
部屋にしつらえられたベッドで、エルザ妃は横になっていました。
私はその傍らの椅子に、侍女に勧められるまま腰掛けました。
さがりなさい、の一声で、彼女はその場にいた侍女たちを全員下げ、私と彼女、二人きりになりました。
「こうして生身であうのは、これが初めてね」
切り出した彼女は、ベッドに横たわったまま、ずいぶん弱っているようでした。
しかし、夢渡できたときの、美しい容貌はそのまま、長い亜麻色の髪の毛、賢そうで勝気な瞳、芯のある落ち着いた声で、私に微笑みかけました。
「確かに。夢渡りでは何度もお会いしましたが、こうして会うと、不思議な感じがしますね」
頬から首までの長い傷もそのままで、私はその目立つ傷に思わず目をやり、彼女と目があいました。
「ああ、これが気になるの?
まぁそうよね、ふつう、貴族の子女が顔に傷を作ったら、みな必死で隠すでしょう」
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