神使キツネの魂結び~死んじゃって生き返った私、お狐お兄さんに完璧お世話されちゃってていいんですか!?~

山口じゅり(感想募集中)

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第三話 イケメンガトーショコラ術式

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確かに、すごいイケメンだった。

たぶん私とかリコさんとかと同い年くらいだろうと思う。
短い黒髪に涼し気な瞳、モデル並みに細い体には、しっかり筋肉がついている。ぴったりしたズボンに銀のチェーンをかけ、グレーのトップスに紺のジャケット。
それがまたシンプルに良く似合っていた。これが新帝大の学生なら、絶対に謎のチェックシャツを決めてくるはずだ。
というわけで、彼がうちの学生ではないことは確かだった。
もしそうなら、よく言えばのどか、悪く言えばダサい新帝大の学生の間で、この浮世離れした容姿の学生が話題にならないはずがない。

というわけで、彼が明らかに新帝大の学生ではないことだけはわかった。よくわかんないけど東京のいけてる私大の学生みたいなオーラがある。

彼はお茶を運んできた私をちらりとみて、

「ガトーショコラのケーキセットで」

と言った。声もいい感じの低音だった。声までイケメンとかすごいな……。


「ねぇ、あのお客さん、絶対ただものじゃないと思わない?」

「ああ、うん、ただものじゃないよね、空気が一般人じゃないもん」

キッチンでコーヒーを入れるリコさんが、ケーキ作りにいそしむメイナさんにささやいている。

「ねぇモデルさんかなぁ、なんかこうネットとかの有名人かな~メイナはどう思う?」

「なんだろうね、この辺では見かけないタイプだよね。間違いなく新帝大一年ではない、チェックシャツじゃないし」

メイナさんもチェックシャツ……私もそれ思った、とちょっとだけ思った。

「うーんとっても気になる!
というわけではい、私コーヒー淹れたから、さあやちゃんあのイケメンさんにガトーショコラもってって」

「はーい」

私はお盆に乗せてコーヒーとガトーショコラをイケメンさんのもとに運んだ。
彼は頬杖をついて内装をぐるっと見渡していた。ついでにケーキを運んできた私の手を穴のあくほどじっと見た。私の手に付けた鈴が、ちりん、となった。

「おい店員」

「あ、はい」

「術式が下手だ」

非常に重々しい口調で、彼は言った。

じゅつ…しき…? とは??

「その鈴で隠そうとしているようだが、魂がはみ出してる。定着もしていない。納めて、封じているだけにすぎない。見るやつが見れば、すぐわかるぞ。
このままでは遠からずお前の命、盗られてしまうだろう。
神に連なるものにまじないをしてもらったようだが、そいつは不器用だな。
しばらく外にでるな。猫の前にひよこを放り出すようなものだ、守りもなく出れば、すぐ死ぬだろう」

「……はぁ」

また死ぬって言われた、と私は思った。あと、すごく変な人だな、とも思った。私が変な人だと思ったのは伝わってしまったようで、彼は非常に苦々しい顔をして、

「……もういい、下がってくれ」

といった。その目は『こいつわかってねぇ』という表情がありありと出ていた。

私は言われた通りキッチンに戻った。



「ねぇ、イケメンに何か言われてたみたいだけど、何言われたの?」

目ざといリコさんが楽しそうにきいてくるのを、いや、そんな大したことは言われてないですよ、とやり過ごしながら、私はちらっとイケメンを見た。

彼は大変おいしそうにガトーショコラを食べていた。
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