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第六話 銀乃と胡吏志(こりし)
しおりを挟むすっくと立ちあがり、エプロンをひらめかせて銀乃は私とイケメンの間で、イケメンを威嚇した。
「……さてはお前、馬鹿だな」
いらいらとイケメンは銀乃をねめつける。
「俺はこの女を助けたんだ。礼を言われこそすれ、盗人と罵倒されるいわれはない。
俺をこれ以上侮辱するなら、ただじゃおかん」
怒ったように、イケメンの瞳が、闇の中で光った気がした。が、はっと彼は我に返ったようだった。
「が、これ以上お前とここで話し込んで人が来てもまずい。ここは学生アパートも近く、お前が人目に付く可能性がある。
まだ続けるなら我々はもう少し物陰で話すべきでは?」
銀乃は少し黙って、相手をじっとみた。
「いや、もういい。
キミが何者かは大体わかった。さあやを助けてくれたのはどうやら本当みたいだね」
「さっきからそう言っているだろ」
「でもお前の助けなどいらなかったよ。禍々しいものがさあやに触れたら最後、それは災いなすことなく消えてしまうから。何しろ僕がさあやを守っているから。分かったかな?」
得意げにあごをあげた銀乃にイケメンはため息をついて、
「ふん、どうだか」
と言い捨てた。
「んなっ!
宇迦様の一の飛脚狐、黒の銀乃とは僕のことだ。野狐のお前の助力などいらないこと、明白だろう」
イケメンは銀乃を一瞥すると、強い眼光で馬鹿にしたように笑った。
「野狐と侮ったな、無礼者。成田山に連なる霊狐、胡吏志とは俺のこと。
宇迦様の名に免じて、争いごとは今日は避けよう、だが次はないと思えよ」
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