上 下
15 / 28

第十五話 キツネじゃない銀乃

しおりを挟む

「それじゃ、夜ご飯作るからまっててねー」

銀乃は私と一緒にアパートに帰ると、人間の姿でご飯を作り始めた。

「あれ、え……狐に戻らないの?」

「むっふっふ~ご飯作り終わったら人間から可愛い狐ちゃんに戻るよ!」

トントントン、とニンジンとジャガイモを切りながら、銀乃は笑った。

「ていうか、いつ気が付くんだろって思ってたよ、僕」

「へ?」

「僕のあの姿、あ、ほら狐のさ、あれで炊事や料理はできないじゃない?
僕、いっつもこの姿でお料理とかしてたんだけど」

「いつも、狐の姿だったじゃない。それにほら、狐の姿で…お掃除してたような」

「確かに。お掃除はできるね、掃除機以外。
でも炊事は無理。だって流しが高いんだもん。洗濯もハンガーに手が届かないしさ」

「……全然気が付かなかった」

「僕がご飯作ったり洗濯したりしてるとき、さあやいつも寝てたもんねぇ。
朝弱いんでしょう」

確かにそれは反論できない。私は朝バイトがなければがっつり寝ていた。

「な、何か手伝おうか?」

「あ、人間になると君って僕に気を遣ってくれるんだね。
でもいいよ、座ってテレビでも見て待ってて。これは僕のお仕事」

銀乃はそういうと、手慣れた様子で料理を続けた。
私は自分の部屋のベッドに腰かけて、なんだかそわそわした。
落ち着かない。すごく…落ち着かない…。
しおりを挟む

処理中です...