異世界転生したら養子に出されていたので好きに生きたいと思います

佐和夕

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第二章

67話 二日目

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「うわぁ。海だ!」
「いや、そんな珍しくないでしょ」

 俺が嬉しそうに言った言葉に、後ろにいたアンリ先輩が突っ込む。
 確かに学校の近くに海があるけど、また旅先で出会った海は別格なのだ。

「アンリ先輩、怪我の具合どうですか?」
「今のところ、大丈夫」

 朝起きて胸を見たら、まだら模様に変色していたらしい。
 痛み止めを処方してもらったらしく、今は痛くないそうだ。
 今年は特に負傷した生徒が多く、救護班がいる部屋を訪れた時は人で溢れ返っていたと、アンリ先輩は教えてくれた。
 俺に慣れてくれたのか、アンリ先輩は普通に喋ってくれるようになった。

 二日目の俺たちのフィールドは海。
 小舟に乗り、近くにある諸島を周って、指定された七種類の品を無事手に入れたらミッションクリア。その後、ある生き物を捕らえたら課題終了だそうだ。
 今日は、どの班でも完全クリアできるような仕組みになっている。

「クラーケロート?」
「全身真っ赤な大タコだよ。ここら辺の海域に生息していて、とっても美味しいんだ。捕まえたら焼いて食べようね」

 そう言って、班長はにっこりと笑った。
 ふむ。好物なんですね。
 茹でる前から赤いのか。
 タコかぁ。たこ焼き食べたいな。

「簡単に言うけどよ、クラーケロートの吸盤は強力だぞ。しかも、個体によっては結構デカイし」

 戦斧使いの先輩は顔を顰めた。
 被害にあったことがあるのだろうか。

「そう。その吸盤がコリコリして一番美味しいんだ」

 班長は、うっとりと吸盤について語った。
 話が噛み合っていない。
 もう食べることしか頭にないらしい。
 まだ捕まえてすらいませんよ。

「小舟って、これかしら?」

 リリアーナ様が見ている先にあるのは、八人乗ったら満杯くらいの大きさの木でできた小舟だった。
 オールで漕ぐみたいだが、ここから島は目視できる位置にあるとはいえ、結構な距離があった。
 交代で漕いで行くのかな。
 海に落ちたらどうしよう。
 こちらの世界に転生してから泳いだことはないし、前世でもあまり泳ぎは得意でなかった。
 やはり、海のフィールドで泳げないのは痛いよな。
 だが、隠しているのも何かあった時に困ると思い、早々に報告しておく。

「班長。僕、泳げません」
「そうなの?」

 他の皆は泳げるし、何なら得意だそうだ。
 海の近くに住んでいるから、幼い頃から海で泳いで遊ぶことが多かったらしい。
 槍使いの人には『お前泳げないの?ダッサ~』と嬉しそうに言われた。
 人のできないことを笑うなんて性格悪い。
 だが、事実泳げないんだから仕方ない。
 俺が落ち込んでいると、慰めるように肩をポンっと叩かれた。
 双剣使いの先輩だった。

「じゃあ、君が溺れたら僕が助けてあげるね」

 ニコッと笑ってそう言われた。
 おおぉ。ナチュラルにそんなことが言えるなんて、先輩は爽やかイケメンだな。
 俺が女の子なら、ときめいちゃうぞ。

「ありがとうございます。でも、なるべく海に落ちないよう気をつけますね」

 泳げないけど、自分ができることで班に貢献できるよう頑張ろうと決意した。


 俺たちは、二日目のフィールドも最初は順調よく進んでいた。
 連なっている諸島には、ただの岩場くらい小さな場所もあって、そこに上陸し、探している時だ。
 突如異変が起きた。
 それに一番初めに気付いたのは、リリアーナ様だった。

「ねぇ、あれってドラゴンかしら?」

 リリアーナ様が指差す先に顔を向けると、隣にある島の上空に、何かが飛んでいるのが見えた。

「ドドド、ドラ、ドラゴン!?フィン!は、はや、早く!早くココ出して!!」

 言葉だけで過剰反応したのは、謎解き先輩だ。
 俺は、足場が悪い場所で飛びつかれてしまい、受け身をとれずバランスを崩して、先輩もろとも海に落ちた。

 ドッポーンっ!!

「「「フィン!!」」」


 俺は、慌てた班のメンバーにすぐさま救出された。
 あっという間の出来事で、怖かったというより、驚きの方が大きい。
 泳げない発言しておいて良かった。

「あー、びっくりした」
 
 全身ずぶ濡れで、岩場に座り込んだ俺の言葉に、みんなが安堵したように息をつく。

「びっくりしたのはこっちだ!馬鹿!」

 俺と同じように、全身ずぶ濡れの槍使いの一年生が、スパンっと勢いよく俺の頭を叩いた。
 意外なことに、彼が俺を助けてくれたのだ。
 俺が海に落ちた瞬間、すぐに彼も海へ飛び込んでくれたらしい。

「こらこら。今のはフィン悪くないでしょ」

 双剣使いの先輩が、先を越されちゃった、と苦笑している。
 俺は叩かれた頭を摩りつつ、礼を言った。

「ごめん。助けてくれてありがとう。ニコラ」
「ふんっ」

 礼を言ったのに、槍使いの一年生、ニコラは顔を顰めてそっぽを向いてしまった。
 照れているのだろうか。
 一緒に海に落ちた謎解き先輩も、他のメンバーに海から引き上げてもらい無事だった。
 今は班長に説教されている。

「まったくもう。ほら、フィンに謝る」
「うぅ。フィン、ごめんよ」

 シュンとして謝る謎解き先輩。
 俺はその謝罪を受け入れ、濡れているニコラと先輩を魔法で乾かした。
 二人は一瞬で服と体が乾いたことに驚いている。
 俺は先生のスパルタ教育の賜物か、幼い頃に比べると、実に様々な魔法を使いこなせるようになっていた。
 最後に自分も乾かし、先程リリアーナ様が指差した方向へと改めて顔を向け、俺はその光景に驚きの声を上げた。

「えっ、増えてる!」
「何だって!」
「本当だ。五、六頭はいるぞ」

 みんなも顔を向け、ドラゴンが増えていることに驚いている。
 海に落ちる前は、一頭だけしか見えなかった。
 この一瞬のうちに増えたのだろうか。

「おかしいな。この辺りにドラゴンはいないはずなんだけど」
「でも、実際に目の前にいるよ」

 双剣使いの先輩が眉を顰め、アンリ先輩が不安そうに呟く。

「何だか、興奮してるように飛んでるわね」

 リリアーナ様の言葉通り、ドラゴンたちはギャアギャアと鳴き声を上げ、バッサバッサと大きく翼を動かしている。
 そして、島の中央に向かって攻撃を仕掛け始めたことを、注意深くみていた戦斧使いの先輩が気づいた。

「あそこに何かあるのか?」

 その時、ドラゴンが向かっていった辺りから、何かが空高く打ち上げられた。
 破裂音がし、丸く赤い光が上空に現れる。

「あれは救難信号!」

 班長が叫んだ。
 救難信号。
 誰かが助けを求めているのだ。

「大変!誰かがドラゴンに襲われてるんだわ!」

 リリアーナ様の言葉の後に、同じように何かを打ち上げる音が、背後からも聞こえた。

「えっ?」
「嘘だろ!?」
「こっちも?」
「あれ、あれ見て!あそこも!」

 立て続けに破裂音がした。
 最初の一発を合わせて全部で四発。
 上空には丸く赤い光。
 つまり、四箇所からほぼ同時に救難信号が発せられたのだ。

「いったい何が起こって…?」

 俺たちは、救難信号をしばし呆然と見つめるしかなかった。
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