緑の風、金の笛

穂祥 舞

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7 えんそうかい

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 消化器内科医である伯父の信介は、すらりと背の高い奏人の父とはまた違う、どっしりとした男性らしい容姿の人である。如何にも頼りがいのありそうな雰囲気を醸し出し(弟の勇人ははっきりものを言うこの伯父が少し怖いようだが、奏人は大好きである)、父と同じように周囲から先生と呼ばれる立場だが、それを鼻にかけることが無い。
 奏大と玄関に向かうと、伯父はやあやあ、と相好を崩した。

「かなちゃん、久しぶりだね‥‥‥楽しく過ごしてるようで良かったよ、平松くんは帰省中なのにこんなところまで呼びつけて申し訳ないね」
「いえ、僕が涼子さんに無理を言ったんです、おふたりの夏休みを潰すようなことになって」

 奏大は慌てたように言った。東京にいる時も、奏大が練習のために川口の濱家に行っていたようで、彼は伯父を濱先生と呼んだ。

「明日奏人くんが北海道に帰ると聞いてますから、もう毎日は来ませんよ」
「へぇ、平松くんは随分かなちゃんと意気投合したんだね」
「ええ、年の離れた弟ができたみたいで楽しいです」

 伯母はこんなとこで話しこまないの、と男たちをリビングに追いやり、キッチンカウンターの中に入る。奏人はりんごジュースを奏大と飲んだことを自己申告した。

「あらそう、じゃあコーヒーにしようかしら‥‥‥かなちゃんはミルクをたっぷり入れてカフェオレにしてあげる」

 奏人はみんなの分のコーヒーカップを用意した。今日は暑さがかなりましで、ホットコーヒーでも構わない感じである。奏大の言うように、夏の終わりの始まりが訪れた感じがした。



 全員でお茶をしてひと息つくと、奏人の描いた絵が場をひとしきり盛り上げた。フルートを構える奏大の後ろ姿に、大人たちが感心してくれて、奏人は嬉しかった。奏大は携帯電話を出して、その絵の写真を撮る。

「彩色したらまた写真を撮って見せて欲しいな」
「あ、お父さん以外携帯電話持ってない‥‥‥」

 写真を送るなんて、どうすればいいのだろう。奏人が困惑すると、伯母が笑った。

「お母さんにデジカメで撮ってもらって、プリントして奏大くんに送ってあげたらいいわ」
「うん、引き伸ばして額に入れとくよ」

 奏人はなるほどと思ったが、そこまでされるのはちょっと照れくさい。奏大は伯母にメモを貰って、そこに東京の住所を書き始めた。8月の末には安曇野から戻るという。

「明後日から僕と奏人くんはペンパルなんだ」

 奏大が自分の名前を書いた時と同じく、やや縦に長い字が手渡されたメモの上に並んでいた。奏人はあらためて、こんな字を書くんだなあと思う。
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