緑の風、金の笛

9 はじまりの、はじまり

あとがき

　『あきとかな』からお越しいただいたかたも、はじめましてのかたも、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

　この話は、昨夏他サイトの短編コンテストに出すつもりで書き始めました。「子どもの頃の友達」というお題で着手したものの、到底上限の8000字に収まらず、私のスマホメモの中で寝ていました。
　ちょうど『あきとかな』を公開して1年となり、夏が巡って来たので、連載を開始しました。アルファポリスでBL以外のものを出すのは初めてなので、ジャンルに迷いました……。

　奏人は高校生になった時に、自分がゲイだと確信します。それが理由でトラブルに巻き込まれ、絵筆を一度捨てることになり、父親や親族に拒絶され、北海道を飛び出してしまいます。
　『あきとかな』は、知性と美貌を併せ持つ孤高の「魔物」である奏人に恋をする男性の物語です。男同士いちゃいちゃするのは平気だというかたは、こちらも是非……。既にお目通しいただいているかたには、奏人の性癖？　がこの頃に固まりつつあるのを感じていただけたのではないかと思います。

　奏大もたぶんゲイだと思います。もう自覚していて、涼子さんにも察されていそうです（私の知る限り、伴奏を活動の主軸にするピアニストは、共演者の性格や癖を察するのが凄く早いです）。奏人に雰囲気の似たフランス人の恋人とパリで暮らし、演奏活動をしてそうですね。
　現在も、日本人フルート奏者の留学先はフランスが一番多いようです。私のフルートの先生もフランスで学んでいて、彼女の話は、フルーティストとしての奏大のキャラクター造形にとても役に立ちました。

　1年越しにこの物語を締めくくることができて、ほっとしています。「じんわり」タグをつけてみましたが、何処かじわっと来た箇所があったならば幸いです。
　最後までこのお話におつきあいくださったこと、心より感謝いたします。

2022.8.12     穂祥舞