夜は異世界で舞う

穂祥 舞

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14 万彩

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「ハルさん、ありがとう……めちゃくちゃよかった」

 晶は晴也の背中を抱き直し、自分のほうに引き寄せた。彼に倒れ込む形になった晴也は、勃起していることを気づかれたくなくて腰を引いたが、少し反応が遅かった。

「……ちんこ復活してるな、先に楽しんで申し訳なかった」

 晶は声に笑いを混じらせながら言った。晴也はいや、別に、その、と意味の無い言葉を連発する。

「どうして欲しい? 手でする? 口でする?」

 言いながら晶は、膝で晴也の股間を2度押した。緩い刺激でもぴりぴりきてしまい、ひゃっという声が勝手に出てしまう。
 勝手に困惑する晴也の腰に腕を巻きつけて、晶は体勢をひっくり返した。視界が回転してわっと叫んだ晴也は、次の瞬間、組み敷かれてしまったことにますます焦った。

「あっ、あっ、優しく取り扱って」
「もちろんそうさせていただきますよ」

 耳許で囁かれて腕が粟立った。奥歯がかちかちいい始めて、晴也は経験の無いたかぶりに混乱する。晶も声から笑いを消した。

「怖いの?」
「……わからない」
「期待してくれてるのかな」

 心臓がどくんと音を立て、顔が熱くなった。咄嗟とっさに違う、と言ってはみたものの、今抱いている感情に恐怖の割合は少ないので、もしかしたらと晴也は思ってしまう。

「可愛いなぁ……」

 抱きしめられて思わず目を閉じた。晶はしばらくそのままじっとしていた。おかげで晴也は少し落ち着きを取り戻す。

「……ショウさん、ごめん」

 小さく言うと、晶は軽く口づけしてくれた。少し拘束が緩み、薄闇の中で、彼が自分をじっと見つめてくるのを晴也は感じた。

「ハルさんは俺とこんな風に過ごすのは嫌?」
「……そんなことない、嫌じゃない」
「恥ずかしい?」
「うん、……自分がコントロールできなくなりそうなのも不安」

 実は今も、ややおかしくなりかけていたような気がしていた。晶のものを必死でしごいて、彼が喘ぐのを見ることに、背徳的な快感を覚えていたと思う。

「俺は淫乱なんだろうか」

 晴也はぽつりと呟いた。どうして、と晶が訊いてくる。もう正直に言おうと思った。

「ショウさんが気持ち良さそうにしてるのを見てちんこててるとか、俺ヤバくないかな」

 晶は沈黙した。そして晴也のこめかみに唇を押しつけて、またぎゅっと抱きしめてくる。晴也は晶の肌の温もりや匂いに、頭がくらくらしてしまう。

「それはハルさんが俺を気持ち良くしようとしてくれてたってことなんだよな」

 耳をつけたところから声がした。

「感激のあまり、本体もちんこも震えてしまう……」

 晶は晴也を解放したかと思うと、いきなり晴也の服を捲り上げた。

「なっ、何⁉」

 晴也は抵抗する間も無かった。晶に右の乳首を摘まれて、勝手に身体が小さく跳ねた。

「今度こそ我慢の限界なので」
「へっ? あっ……」

 親指の腹で撫でられ、晴也の声が甘ったるくなった。じんじんと痺れるものが、股間に伝わる。風呂の中で一度愛撫されたせいで、そこは敏感になっていた。

「手を噛むのは禁止、好きなだけ喘いで」
「そんな……ああっ」

 左側に熱くて滑りを持つものが触れて、晴也は腰を浮かせた。嫌だ、……気持ちいい。
 晶の愛撫は優しく丁寧だが、執拗だった。晴也は固く目を閉じて、自分を襲う甘い痺れに抗うが、全く無駄な抵抗だった。そのうち晶の手がするりと下着の中に滑り込んできて、確認するように勃ったものの根っこを掴む。

「窮屈だったなぁ、風呂で一回抜けば良かった」

 大きな手に包まれるのが気持ち良くて、晴也は喘ぎながら首を振った。晶は手をゆるゆると動かしながら、唇を脇腹に這わせ始める。何処に何をされても感じてしまう晴也は、右手で口を塞いで声が出るのを妨げた。

「あっ、ハルさん……俺あなたの声聞きたいのに……」

 晶はそう言って顔を上げ、晴也の手をどかせようとして掴んだ。下半身への刺激が止んだので、晴也は身体のこわばりを少し解いた。

「俺のために囀って欲しい」

 晶は言って唇を重ねて来た。それだけで気持ち良かった。身体がとろけてしまいそうだ。唇を離すと、晶は大切な秘密を告白するような思わせぶりな口調で言った。

「これからハルさんをパラダイスに連れて行こうと思うんだけど、暴れないでいてくれる?」

 晴也は呼吸を乱しながら、へ? と声をうわらせた。晶は晴也の右の耳たぶにキスして、そのまま囁く。

「ハルさんのきれいなちんこを傷つけたくないからね」

 晶は左の腕を晴也の腰に巻きつけ、右手で下着ごとズボンを剥ぎ取る。晴也はぎゃっと叫んだ。

「はいはい、まだ慣れてくれないんだな」
「こっ、こんなことっ、一生慣れるかっ!」

 晴也の切れ切れの訴えに笑いがかぶさる。

「前回から間が空いたからなぁ」

 晶が指先で晴也のものの裏を撫で上げたので、晴也は背筋を駆け上がった快感に、うあっと叫んで身体を反らせる。その瞬間、両脚を開かれ、押さえつけられた。えっ! と言った声が消えない間に、晴也はほとんど暴力的な快感に襲われて、再度叫んだ。

「ああっ、やめろ馬鹿!」

 もう爆ぜてしまいそうなものを包み込んだ熱くて柔らかい空間が、晶の口腔だと気づいて、晴也は羞恥のあまりほとんどパニックに陥った。

「何してんだよ、そんなことするな、あっ!」

 すぐに何をされているのか、わからなくなった。とにかくぎゅっと締めつけられる度に、下半身から未知の快感がどんどん押し寄せて、あっという間に頭の中に靄がかかる。気持ちいい、という言葉しか浮かび上がらず、晴也は口を押さえることも忘れて喘ぎ続けた。

「ああっ、もう出るっ、やめろっ」

 じゅくっといやらしい音が股間から聞こえた。全身に鳥肌が立つような気持ちよさも相まって、晴也は思わず涙をこぼす。

「ショウさん、やめて、もう駄目……あ、あっ」

 拒否して暴れることも最早出来ず、晴也は腰をぴくぴく震わせながらされるがままになっていた。気持ち良くてたまらない。こんなの、知らなかった。
 晴也はぼんやり目を開いて、天井を視界に入れた。その時強く吸われて、天井が歪んだように見えた途端、全身が震えた。

「あ……うあっ、いくっ、出るっ!」

 頭の中で何かが弾ける。勝手に腰が揺れた。溜まった小便を思い切りぶちまけた快感に晴也はああ、と満足の声を上げたが、はたと我に返った。今……何をした?

「ショウさん! えっ! 俺今っ……」

 晴也は痺れる身体を腕で支えながら無理に起こし、まだ自分のものを口に入れている晶に仰天する。サイドテーブルから枕元に下ろしていたティッシュの箱に手を突っ込んで、柔らかい紙を掴み出した。
 晶はやたらに幸せそうな顔をして晴也のものを口から出した。溝に晶の唇が軽く掛かった瞬間が気持ち良くて、晴也は思わず小さく喘いだが、すぐに晶の口にティッシュの束を押しつける。

「ごめん! 口に出すなんて俺最低だ、吐けっ!」

 晶は目を丸くした。晴也に口を塞がれ、強く背中をさすられて、彼は口の中の液体をティッシュに吐き出した。しかし随分少ないように晴也には思えた。
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