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きみが旅立つ日
6月6日①
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身近な人がスポットライトを浴び始めるというのは、こんなに唐突にしれっと始まることなのかと暁斗は思う。
4月に画集を出さないかと、主に美術関係の書籍を取り扱っている老舗の出版社から声をかけられた奏人は、暁斗を伴って担当者と会った。奏人は、これまで数えきれないほどの人間と接して契約を結んできた、暁斗の観察力のようなものを頼っていたらしい。初顔合わせをした担当者について、信用できそうな人だと思うと暁斗が言うと、あっさり出版をOKした。
早速出版社との契約書が送られてくると、奏人は暁斗と一緒に、突っ込みどころが無いかを精査した。奏人は印税のパーセンテージはあまり気にしなかったが、著作権の有無と保護は厳しくチェックした。最近、特にネット上では、イラストの著作権を平気で侵害するような者が跋扈し、プロもアマチュアも泣かされている。恐ろしいことに、特に外国人や子どもは、他人の絵を自分の作品だと言ったり、商品に加工して販売したりすることが、犯罪であると理解していないという。
「リスペクトからくる行為なんだよね、彼らにしてみたら」
奏人は学問の世界でも、同じようなことが起きていると説明する。
「とても共感するから、同じ考えだからって、論文やレポートで原文を引用せずに丸写しするんだ」
暁斗はそれを聞いて呆れた。暁斗の会社でも、新しい事務機器のデザインを外部のデザイナーに依頼した時は、細心の注意を払う。
「それをパクりだと認識してないってこと?」
「そうなんだよ、留学生にそういう子がごくたまにいるから、呼び出して説諭するって専任の先生から聞いた……日本や欧米ではそれは絶対認められないし、研究者としてやっていけなくなると言っても、きょとんとすることもあるって」
奏人の副業先である奈良の女子大は、歴史ある国立大学だ。留学生のレベルも、親に金を出させて日本のレベルの低い私大に来て、授業にも出ず遊んでいるような子たちとは違う筈なのだが。
「凄いな、完全に感覚の違いなんだな」
「そう、学術論文でもこんなことがあるんだから、ネットに出回るイラストなんかはもっと軽く扱われるよね」
奏人もインスタグラムに絵を投稿する時、ここ3年はサインや「sample」の字を入れるなどしている。それでもどこで勝手に商品化されていても、おかしくないという。暁斗は首を捻った。
「自作発言も駄目だけど、勝手に商品化って、他人のイラストを使って金儲けしてる自覚が無いんだろうか……」
奏人も首を傾げて微苦笑した。
「僕にもそのパクりが多いと言われる国出身の友達がいるし、彼らの名誉にかけて言うけど、その国の人みんながそんな考え方じゃないからね」
「もちろんそうだ、うちの会社だってかの国の会社に上得意様は沢山いるし、そういうことで揉めたことは無いよ」
それはともかくとして、出版社からは、まだこの企画について公開しないでほしいと奏人は言われている。しかし画集で取り扱う予定の絵は、インスタグラムから引き上げるよう指示されていた。
「ネットから下げるイコール商業化だってみんな知ってるから、バレるんだけど」
奏人はそう言って笑う。そういうものなのかと暁斗は思った。
「でも黙って下げるのは良くないだろ? その絵が好きな人もいるわけだから」
「そうだよ、結局『事情により』ってお知らせして、匂わせることになるんだけど」
絵を描くことは奏人にとって、あくまでも副次的な行為だ。現在の彼の目標は博士論文を仕上げることなので、暁斗の目から見ても、彼はそこに一番時間を費やしている。そのせいか、画集の出版の話を喜んではいるものの、奏人は普段通りで落ち着いていた。
4月に画集を出さないかと、主に美術関係の書籍を取り扱っている老舗の出版社から声をかけられた奏人は、暁斗を伴って担当者と会った。奏人は、これまで数えきれないほどの人間と接して契約を結んできた、暁斗の観察力のようなものを頼っていたらしい。初顔合わせをした担当者について、信用できそうな人だと思うと暁斗が言うと、あっさり出版をOKした。
早速出版社との契約書が送られてくると、奏人は暁斗と一緒に、突っ込みどころが無いかを精査した。奏人は印税のパーセンテージはあまり気にしなかったが、著作権の有無と保護は厳しくチェックした。最近、特にネット上では、イラストの著作権を平気で侵害するような者が跋扈し、プロもアマチュアも泣かされている。恐ろしいことに、特に外国人や子どもは、他人の絵を自分の作品だと言ったり、商品に加工して販売したりすることが、犯罪であると理解していないという。
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暁斗はそれを聞いて呆れた。暁斗の会社でも、新しい事務機器のデザインを外部のデザイナーに依頼した時は、細心の注意を払う。
「それをパクりだと認識してないってこと?」
「そうなんだよ、留学生にそういう子がごくたまにいるから、呼び出して説諭するって専任の先生から聞いた……日本や欧米ではそれは絶対認められないし、研究者としてやっていけなくなると言っても、きょとんとすることもあるって」
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「そう、学術論文でもこんなことがあるんだから、ネットに出回るイラストなんかはもっと軽く扱われるよね」
奏人もインスタグラムに絵を投稿する時、ここ3年はサインや「sample」の字を入れるなどしている。それでもどこで勝手に商品化されていても、おかしくないという。暁斗は首を捻った。
「自作発言も駄目だけど、勝手に商品化って、他人のイラストを使って金儲けしてる自覚が無いんだろうか……」
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