奇跡と当然と凡人

yuushi

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桜舞う季節

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桜が舞う・・・

桜色に塗装されたアスファルトにたたずむ一人の青年。

あざ笑うかのように木々たちがざわめく。

詰め折の黒衣の制服の首元には銀色に輝く、白鳳ハクホウ公立高等学校の校章。

3年生を示す申し訳なさそうな暗めの深緑の”3”の数字。

「・・・ガッコ行きたくねぇな~」

ぼさぼさの頭をさらにぼさぼさにかく。

ふと目を左手首にしたデジタルな腕時計に目を落とす。

”06:53”

授業料払ってんだからしっかり勉強して来いとオヤジにどやされたからでも、

いつまでも春休み気分でゆっくり寝てるんじゃないわよと母親に叩き起こされたわけでもない。

新学期早々の朝錬アサレンに強制参加が義務付けれているからである。

木漏れ日が差す道をとぼとぼと学校を目指し歩き出す。

朝の練習、スポーツや勉学を人より上達したいから行うもの。

ではなく・・・

朝の鍛錬、普通の高校生が持ちえる能力を開花できていない者が開花できるように

先生がマンツーマンで鍛えてくれる拷問。

10代前半、たいてい中学生時期に人それぞれに個有の能力が開花する。早い者は小学生高学年には・・・

個有の能力とは、発火や電気を発生させる発現系能力や、鋼鉄にも勝る皮膚や岩をも砕く物理系能力や、

予知や瞬間記憶など頭脳系能力など様々でふとしたきっかけで誰しも1つだけ能力を開花する。

そうした能力を訓練し、勉学に励み、社会にでるための準備期間が本来の高校生活なのだが・・・

ここに一人、誰しも開花しているであろう能力に開花しておらず、丸2年、土日祝日以外の毎日

朝錬をおこなっているが予兆さえない青年が春の陽気と共に

通いなれた白鳳高校の校門をくぐる。
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