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「つまり、お見合いも嘘ではないけれど、魔術の解除を求めて来られた、ということで宜しいですか!?」



「ティアルティナ姫さえよければ、このまま仲良くしてくださると嬉しいです。姫が望むなら、このままでも大丈夫ですよ?」



あっさりとロナルドは告げる。そこに嘘はなく、ティアルティナが望めばこのまま魔術を掛けたまま過ごすだろうという雰囲気が漂う。



「本気ですか?」




「もちろん。ティアルティナ姫のお気に召すまま」




ティアルティナが恐る恐る訊ねれば、即時返事が返ってきた。迷いも躊躇いもないことから本気度が伝わってくる。



ティアルティナが女性のままがよいと一言告げれば、魔術の解除は諦めるんだろうなと会話の節々からも察してティアルティナは口を噤む。




「解かなくても構いませんが、ティアルティナ姫はこの魔術を解明したいとは考えていらっしゃるのでは?」



ロナルドの発言に図星であるティアルティナは素直に頷いた。



まだ誰にも解明されていない魔術はとても興味深く、好奇心が疼く。知りたいという欲求は止められない。



「魔術を観察したいティアルティナ姫と、ティアルティナ姫のそばにいたい僕。利害が一致していますね?」



「そうですね......」



それにロナルドが婚約者になるのはティアルティナにとって都合がいい。むしろ良すぎるといっても良かった。



男性が苦手なティアルティナが何も気にすることなく共に在れて、後継者を残すことも可能な異性。異性としても苦手な部類でないロナルドなら尚更。



ロナルドの存在を拒む余地はなく、受け入れるべきだと本能は云う。これ以上ないくらい、優良物件であると。



しかし、頭の片隅にある理性はロナルドも男性だ。受け入れた途端豹変する可能性を秘めていると囁く。



「婚約して見極めてください。どうか共に過ごす時間を頂けませんか?」



ロナルドがティアルティナの瞳をじっと見据えて、懇願するように言葉を重ねる。



「......わかりました、これから婚約者としてよろしくお願いします」



誘惑と懇願と、条件に押し負けたティアルティナは、とうとうロナルドに申し出る。



ティアルティナの言葉にロナルドは目を輝かせてこちらこそ、と告げて優雅に微笑む。



(この微笑みはロナルド殿下、という感じのものだわ)



いつもティアルティナを見ていた、優しい微笑み。



嬉しそうに綻ぶ顔に、ティアルティナの胸は少しだけ温かな気持ちが宿る。



(彼が婚約者になったからといって、態度が豹変しないなら──)



ティアルティナも彼を信じる努力を重ねれるだろう。



そのことに少しだけ、嬉しさを滲ませティアルティナも微笑んだ。







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