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お見合いが終わってすぐ。



人の気配が無かったことが嘘のように、人で溢れた。



「おめでとうございます、ティアルティナ姫様!ロナルド殿下!」



「ミルフェン、今まで何処に......」



まずはティアルティナの専属侍女であるミルフェンは、話が纏まった途端に姿を現した。まるでどこからか此方の様子を一部始終見ていたかのような登場のだった為、ティアルティナの声が若干低くなるのも仕方なかった。




ティアルティナが幼い頃から仕えているミルフェンはティアルティナが不機嫌な様子でも気にすることなく、むしろ婚約者が決まったことで大喜びだった。



ミルフェンを皮切りに、ティアルティナに仕える侍女やメイドたちが揃っていく。既に飲み干した紅茶を注ぎ、お菓子を取り分ける。



そして口を揃えて皆、おめでとうございますと祝ってくれる。




「さぁ姫様、陛下にご報告に参りましょう!」



「夕食の時に報告でいいのではないかしら」



もう少しで夕食の時間だ。仕事などで間に合わないなど、理由が無い限り基本は家族揃って食べている。だからティアルティナは家族に報告するなら、その場でいいだろうと考えていた。



「あら、陛下はきっと気を揉んでいらっしゃるでしょう。少しでも早く安心させて差し上げるべきでは?」



ミルフェンは頬に手をあて眉を下げ、ここにはいないティアルティナの父親であり国王陛下の気持ちを代弁する。



ミルフェンの言葉の端々には、今まで心配させたのだからという圧がある。



ミルフェンの言い分も汲めるティアルティナは眉を寄せ、悩む。



本来なら王族であるティアルティナ相手に、ミルフェンのような発言は不敬にあたる。専属侍女であろうと、ティアルティナとミルフェンの間には身分という壁が阻む。



しかし、ティアルティナはミルフェンだからこそ許している。幼い頃からそばにいる彼女は姉のような存在だった。




それ故に、ミルフェンの言葉には弱いところがあるティアルティナだ。



ミルフェンの発言が国王陛下を配慮して出てきたものだからこそ、ティアルティナは熟考した後、頷いた。



ティアルティナがお見合いの話を受ける、と頷いただけでも喜んでいたのだ。婚約者ができたと知ったら歓喜するのは目に見えている。




「ではロナルド殿下、失礼しますね。お父様に、婚約の件を報告してきます」



「はい、また後で」



(また後で?)



「国王陛下より、夕食の席に招待されていますので。またすぐに会えますね」



嬉しそうに笑うロナルドを見上げながら、ティアルティナは罠に嵌められたような感覚が否めなかった。



(みんなで共謀しているのでは......)






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