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しおりを挟むティアルティナは部屋に戻り、ミルフェンに手伝われて晩餐用の装いに着替える。
踵の高い靴を覆うくらいの長い丈のドレスを身に纏い、アクセサリーを付けていく。
ドレスは瞳とあわせた深い赤色で光沢のある素材を用いたものだ。胸元と背中が開いているが幾重にも重ねられた繊細な白のレースがあしらわれており、女性らしさを醸し出しつつ品のあるドレスになっている。
長い銀色の髪には香油を塗り、梳かしてから一部を編み込み結い上げる。赤色の造花と宝石で作られた髪飾りを付けて完成だ。
ミルフェンは服装と髪を整えてから化粧にとりかかる。
「姫様、鏡の前に座ってくださいな」
ミルフェンと他のメイド達がティアルティナが着ているドレスの裾を汚さないように持ち上げて移動を促す。ティアルティナは言われるがままに移動した。
ティアルティナが椅子に腰を下ろすと、ドレスも汚さぬように工夫されてそっと置かれる。
「今夜はロナルド殿下もいらっしゃるので、気合いをいれていきますね!」
鏡越しに目が合ったミルフェンが化粧道具を片手に力強く発する。
「いつも通りでいいわ」
ロナルドがいるからと気合を入れて化粧を施したら、彼に要らぬ期待を持たせるかもしれない。
「まぁ、婚約されたのですから今夜は姫様が主役ですよ?主役が存分に着飾らなないと」
「ミルフェンの言いたいこともわかるけど、あまり着飾らなくても......」
「まぁ着飾らなくともロナルド殿下はティアルティナ姫様に夢中ですものね!」
「えっ、ちが、いや違わないのかな?じゃなくて......」
ティアルティナがしどろもどろしている内にミルフェンは化粧を進めてゆく。あっという間に仕上げの段階まできてしまい、口を閉じるように指示されて喋ることも出来なくなる。
ティアルティナが口を噤むと、ミルフェンは素早く筆に取った紅を唇へ滑らせる。
ミルフェンは気合いをいれて化粧をすると言いつつも、全体的な調和を崩さない。ドレスの色合いと髪型に似合う化粧をしてくれている。ドレスの色が赤色の為、化粧は薄紅色が多く使用されており、目元はハッキリさせるラインが目尻にだけ描かれていた。
「完成でございます、姫様。時間も迫っておりますので移動しましょう」
メイドたちの感嘆する声が部屋に響いた。
ミルフェンの技術に対してと完成したティアルティナの姿と、両方に向けた称賛だ。
ティアルティナは静かに頷き、準備する。
ミルフェンが手を差し出し、ティアルティナはその手をとる。
「みんなありがとう。準備は終わったから各自、仕事に戻って」
ティアルティナの労いの言葉にメイド達は目を輝かせた後、すぐに退出した。
「では私達も参りましょうか」
「そうね」
ティアルティナ達は部屋を出て晩餐が行われる部屋と向かった。
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