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しおりを挟む晩餐は食堂で行われる。長い机が中央に置かれ、上座に豪奢な椅子が一脚あり、左右にも順に椅子が並ぶ。
銀の燭台や食器が準備され、食事の邪魔にならない花が飾られてる。緩やかな音楽が魔術により常時奏でられていて、場を和ませていた。
端の椅子から順番に埋まり、ティアルティナも席につく。ロナルドもすぐ隣に座る。次いで国王陛下である父が上座に案内された。
「今夜は我が娘、ティアルティナの婚約者となったファーマン王国の第二王子、ロナルド殿下もお招きしている。新たな家族の一員と共に食事を楽しもう」
父の言葉で晩餐会は始まった。
既に置かれていた葡萄酒を掲げ食事の合図とし、すぐに食事が運ばれてくる。
晩餐会と云っても、ロナルド以外は家族──血の繋がりのある者ばかりが招かれている場だ。格式張ったものではなく、むしろ反対の堅苦しくない雰囲気となっている。
給仕が料理を机に並べていく。まずはしっかりと焼かれたタルト生地のほうれん草とベーコンのキッシュ。一口で食べられる大きさが二つ載せられている。口に含めばベーコンの塩っけとほうれん草がよい塩梅でとても美味しい。
次に汁物。野菜が丸ごと裏ごしされているスープだ。今回はじゃがいも。動物からとれる乳製品の牛乳で割られているが様々な香辛料を合わせられており、まろやかさのなかにもピリッとした辛味もある。
「美味しいですね」
スープを飲み干したロナルドが感想を告げる。
「お口にあったようでよかった。まだ始まったばかりだ、是非我が城の料理人の料理を楽しんでくれ」
嬉しそうにロナルドと話すのは国王陛下である父だ。機嫌良さそうなのは果たして料理を褒められたからか、別の理由もあるのか。
(婚約を喜んでいる、というなもありそうだわ)
ティアルティナは会話には加わらずに観察する。
その間に切り身の魚料理が出される。骨は丁寧に取り除かれ、ソースが掛けられている。
ロナルドは優雅に食べ進め、あっという間にお腹におさめる。
早さに驚いているとロナルドと目が合う。彼はティアルティナと目線があうと照れ臭そうに笑う。
「とても美味しくて、つい......」
ロナルドは口元を拭きながら、呟いた。
「美味しそうに召し上がるので、料理人も喜びますわ」
「ティアルティナ姫、婚約者になったのですし、敬語は止めませんか?」
ロナルドの申し出にティアルティナは頷いた。断る理由も無いし、魔術を観察するのにいちいち敬語で畏まった話し方をするのは辟易していた。本人が望むなら、遠慮は要らないだろう。
「わかったわ、ロナルド殿下」
「名前も呼び捨てでいいんだよ?」
「......呼び捨て......」
ティアルティナの名前を呼び捨てにする異性は数える程の人間しかない。ほぼ血縁関係ばかりだ。
「......それはもう少し仲良くなってからでいいわ」
ティアルティナが断ると、ロナルドは深追いしない。
「わかった、早く仲良くなれるように頑張るよ」
あくまで前向きに、ロナルドは微笑む。
そうしている間に、また次の料理がくる。
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