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しおりを挟む「さぁ、どうぞ。と言っても、僕が用意したわけじゃないけど......ティアルティナ姫さえよければ、一から準備するよ?」
「......淹れてありがとう」
差し出されたカップに口をつけ、飲む。あえて最後の言葉には返事をせずに。
「じゃあ、魔術を観察させてもらうわね」
紅茶を飲み、本題へ移る。
ロナルドも頷く。
「まず、話を聞きたいのだけれど。答えられる範囲で構わないから」
「何でもどうぞ?」
女性らしい柔らかな笑みが浮かべられ、待ち構えられる。
ティアルティナはロナルドの全体をじっくり眺めた後、口を開く。
「この魔術、ロナルド殿下と魔術師の合作と言っていたわよね?」
「そうだね」
「昨日は驚いてそこまで考えが及ばなかったけれど」
ティアルティナは紅茶を飲みつつ、射るような鋭い目で、真実を精査するようにロナルドを見返し、言葉を続ける。
「ここまで特殊な魔術が紡げる貴方たちは、本当に解く術は無いの?」
改めて、ロナルドの姿を吟味しティアルティナは首を傾げる。
この世界に発達する魔術は様々な種類があり、日々新たに生まれている。だとしても。魔術は術者が施すもの。
無理矢理掛けられたのなら難しいかもしれないが、自ら創り出し、掛けたのなら解く方法もある程度は解っているはずだ。
使うだけなら、わからないというのもわかる。本や人から教えられたものであるなら、使う理由や順序、意味などが全て整えられている状態だ。
しかし、自ら創るということは誰も知り得ないことを自分自身で構築しなければならない。創る過程も、それが起こすであろう現象の検証も。そこに至るまでに、解く手段も自ずと見えてくるはず。
呪いのような、神業のような、人間の肉体の変化を齎す魔術は余程、自信が無ければ手が出せない領域だ。ロナルドは身長や体重、女性や男性としての機能や、声も違うことから至る所が反転している。
失敗すれば、命すら失いかねない。成功しても、戻す術があるとは限らない。それ程の代物だからこそ、誰も試さない。
唯一、公的に試されているのは医療関係で、治癒や治療の一助を担うようにと努力と実験が重ねられている。
殆どの人間が躊躇い、行動に移せないであろう魔術だ。
ロナルドの反応を観察するティアルティナは、ロナルドが変わらず微笑みを浮かべているのを目にして口を噤む。
ティアルティナからの尋問を予想していたのか、さして焦る様子もなく涼しい顔で紅茶を飲んでいる。
「ティアルティナ姫、どういった解答をお望みですか?」
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