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しおりを挟むロナルドからの返答にティアルティナは開いた口が塞がらない。
思考は纏まらず、飛び出すのは責めるような言葉ばかりになる。
「な、何を......言っているの!?私が望む解答?じゃあ、やっぱり、魔術は解けるの!?」
ティアルティナは椅子から立ち上がり、ロナルドを睨む。
「解ける、と言ったら?」
挑むような口調でロナルドが言う。
「解けるなら......」
解けるなら、ここにいる意味はあるのかという考えが脳裏に過ぎる。
だが、ロナルドの目的は魔術の解除ではない。本人も言っていたではないか。ここに居たいのはティアルティナと仲を深めたいから。
(つまり、目的は魔術の解呪ではない)
「解けるなら、なぜ解けないと偽ったの?」
ロナルドがティアルティナの望み通り答えてくれるかはわからないが、偽る意味を知りたい。
「解けていない方が、解き明かしたくなるかなと思って......?」
最後が疑問形なのもあって本人も正解か分からないけど、とりあえず試してみたという雰囲気が漂う。
でもロナルドの考えた通り、解き明かされていないもののほうが解きたいという欲求を駆り立てるのかもしれない。
現にティアルティナはそう思い、行動に移したのだから。
「ティアルティナ姫、でも、解ける術が僕に解っていたとして。それで何かが変わる?」
「何ですって?」
ロナルドの言い分に、ティアルティナは眉を顰める。
ティアルティナの冷ややかな声色にもロナルドは顔色さえ変えず、続ける。
「だって、ティアルティナ姫は自分で解明したいのでしょう?答えを教えてもらいたいわけじゃない」
「だから偽りを許せと?それは婚約者に対して不誠実じゃないかしら?」
あまりにもロナルドが平然としているから、少し意地悪かもしれないがティアルティナはあえて不機嫌そうに振る舞う。
すると。
「僕はティアルティナ姫に対して、とても心を砕いているつもりだよ?偽りを許せないと言うのなら、許されるまで謝り続けるよ、ティアルティナ姫の気が済むまで。でも、一つだけ留意してほしい」
「何を?」
「僕が僕のままで、君に迫らないことについて。本当は、ありまのままの自分で近付き、婚約者になりたかったんだよ?でも、それは叶わない。なら、創るしかない。そして、それを上手く使うしかなかった......!」
ロナルドは華奢な鎖骨の上で手を握り、さらけ出せない心を鷲掴むような仕草で呻くように告げる。
「ねぇ、ティアルティナ姫」
ロナルドがゆっくりと椅子に座るティアルティナの方へ歩いてくる。
「今の姿は貴女に怯えられずに、距離を置かれずに済むから、受け入れているに過ぎないんだ」
女性の姿であっても長い腕がティアルティナの両脇に置かれ、椅子と彼の間に閉じ込められる。
「ほら、ここまで近付いても平気だものね?」
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